電子帳簿保存法とは?

 1990年代からはコンピュータ会計が一般的となり、中小企業においてもコンピュータ(電子計算機)で帳簿を作成するようになりました。最近ではより進んで、クラウド会計サービスを使って帳簿を作成するだけでなく、書類の保存方法や税申告の手続きを電子化することで、内部統制の強化や業務効率化を図る企業も増えてきました。

 こうした動きに合わせるかのように、1998(平成10)年に電子帳簿保存法という法律が創設されました。国税関係書類のスキャナ保存の承認を受けている場合、税務調査官が承認済の国税関係書類のデータ検索を行うことで、紙の書類のみを保存している場合に比べて、経理担当者などが税務調査に対応する際の業務量は大幅に削減されます。

今回は、電子帳簿保存法について解説していきたいと思います。

電子帳簿保存法とは

企業は、法人税法や所得税法において、帳簿や書類を紙の原本で、法人税や酒税の場合原則7年間、会社法では10年間保存する義務があります。この20年の間にIT技術が進歩し、帳簿や書類をコンピュータで作成・保存できるようになったことから、磁気テープや光ディスクなどに記録した帳簿や書類の電磁的記録(電子データ)を、税法の特例として認めたのが電子帳簿保存法です。正式名称を「電子計算機を使用して作成する国税関係書類の保存方法等の特例に関する法律」といいます。

2005(平成17)年の法改正時には、スキャナで保存された電磁的記録(電子データ)も、税務署長の承認を受けることで代用可能とする、スキャナ保存制度が追加。2015(平成27)年及び2016(平成28)年の税制改正時には、スマートフォンで撮影した画像の保存も認められるなど、さらに要件が緩和されました。

国税関係書類とは

法人税法や会社法で「備付けまたは保存すること」と定義されている「国税関係書類」(電子帳簿保存法第2条第2号)には、大まかにいうと以下の帳簿書類が該当します。

  • 法人税や消費税法で備付け、保存が義務付けられているもの
  • 酒税法第46条(記帳義務)において定められているもの
  • 源泉徴収対象の従業員、利子や配当金の支払対象者のマイナンバーが記載されたもの

これだけでは、少し分かりづらいかもしれません。具体的にどういったものを指すのでしょうか。もう少し詳しく見ていきましょう。

国税関係書類には「帳簿」と「書類」の2種類に分けられます。

「帳簿」とは、会計決算書をはじめとした決算書類を作成するときに必要となる書類です。例えば仕訳伝票や総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳などが該当します。

一方の「書類」は、会社の営業活動を記した書類を指します。注文書(発注書)や納品書、請求書、棚卸表や貸借対照表、損益計算書といったいわゆる決算書なども書類に分類されます。

これらの帳簿書類をコンピュータ(電子計算機)で作成した場合、原則としてコンピュータ(電子計算機)から紙に印刷して保存しておかなければなりません。

電子帳簿保存法を受けるための要件

電子帳簿保存法の適用を受けるためには、単に帳簿や書類を作成・保存するだけではなく、会社のある地域を管轄する税務署に必ず承認申請書を提出し、事前に税務署長の承認を得ることが必要です。

適用を受けるための要件

要件概要帳簿書類
記録事項の訂正・削除を行った場合の事実内容を確認できること
通常の業務処理期間を経過した後の入力履歴を確認できること
電子化した帳簿の記録事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認できること
システム関係書類等(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等)を備え付けること
保存場所に、電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、記録事項を画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できること
取引年月日、勘定科目、取引金額その他のその帳簿の種類に応じた主要な記録項目により検索できること○※
日付または金額の範囲指定により検索できること○※
2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること

なお承認申請書には、申請に係る帳簿書類の保存場所、備付け、保存開始日、保存の要件を満たすための措置など所定の事項を記載する他、所定の書類を添付して、承認を受けようとする日の3か月前までに提出します。

電子帳簿保存法において認められている保存方法は、大きく分けて次の3つです。

(1)電磁的記録(電子データ)による保存

電磁的記録(電子データ)によって作成された国税関係書類を保存できる対象は、以下の通りです。

①帳簿書類の保存義務者(※)は、帳簿の全部または一部について、自己が最初の記録段階から一貫してコンピュータを使用して作成する場合であって、納税地等の所轄税務署長等の承認を受けたときは、記録の真実性及び可視性等の確保に必要となる所定の要件の下でその電子記録の備付け及び保存をもって、その帳簿の備付け及び保存に代えることができる。

②書類の全部または一部について自己が一貫してコンピュータを使用して作成する場合であって、税務署長等の承認を受けたときは、所定の要件の下で、その電子記録の保存をもって、その書類の保存に代えることができる。

※保存義務者:国税に関する各法律の規定または記帳義務により、国税関係書類の保存を義務付けされている者。

参考:国税庁ホームページ 電子帳簿保存法の概要

(2)スキャナ保存

国税関係書類のスキャナ保存にあたり、税法上で使用可能な装置は、文字や写真をデジタル変換できる機器です。具体的には、卓上一体の固定式、スマートフォンやデジタルカメラ、ハンドスキャナが該当します。

スキャナ保存の申請対象になる書類は、契約書や領収書など、取引にあたり特に重要とされる「重要書類」と、見積書などの書類「重要な書類以外の書類」(一般書類とも呼ばれる)とに分類され、それぞれに保存の要件を定めています。

(3)COMによる保存

「COM」とは、コンピュータを用いて電子記録を出力することにより作成するマイクロフィルムです。

税務上でCOMによる帳簿書類の保存ができる対象は以下の通りです。

①保存義務者は、帳簿の全部または一部について自己が最初の記録段階から一貫してコンピュータを使用し作成する場合であって税務署長等の承認を受けたときは、所定の要件の下でその電子記録の備付け及びCOMの保存をもってその帳簿の備付け及び保存に代えることができる。

②保存義務者は、書類の全部または一部について自己が一貫してコンピュータを使用して作成する場合であって税務署長等の承認を受けたときは、所定の要件の下でそのCOMの保存をもってその書類の保存に代えることができる。

③帳簿書類の電子記録による保存等の承認を受けている保存義務者はさらに税務署長等の承認を受けたときは、所定の要件の下でそのCOMの保存をもってその電子記録の保存に代えることができる。

参考:国税庁ホームページ 電子帳簿保存法の概要
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/02.htm

国税関係書類の保存方法別

保存方法紙の保存電子データCOM保存
(一貫した電子処理)
スキャナ保存
(紙→スキャナ)
帳簿原則特例×
書類受領
するもの
原則- 特例
発行
するもの(控)
原則特例特例

○:所得税法、法人税法等で保存が義務付けられているもの
◎:電子帳簿保存法での保存が可能なもの
×:保存が認められないもの

電磁的記録の保存媒体・保存形式

電磁的記録(電子データ)の保存媒体には、CDやDVDといった光学ドライブや磁気テープ、ハードディスク(HDD)、ファイルサーバー、Webサーバーなどが挙げられます。この他、近年クラウドサービスと連携しているさまざまなアプリケーションから、電磁的記録(電子データ)のクラウドサーバーへの保存も徐々に広がり始めています。

ただし、いずれの媒体を使用するにしても、記録事項の変更、記憶媒体の紛失・消失を防ぐため、保存義務者は社内における文書管理責任者を定めるといった対策を行い、適切に管理・保管しなければなりません。

また電子帳簿保存法では、法で定められた保存期間において、税務署で承認済みの国税関係書類のデータを閲覧できるよう、サーバーを納税地に設置するなどの対策を取ること、電磁的記録(電子データ)作成時、訂正・削除履歴が残るシステムの使用などを定めています。

2020年の法改正で変わる点

電子帳簿保存法には、オンラインで受領した請求書などに、受け取り側にてタイムスタンプ(※1)を付与する方法と、改ざん防止などのために、事務処理規定を作成して運用する方法が、電磁的記録の保存の要件として定められています。

2020(令和2)年10月1日からは、国税関係書類の保存義務者が電子取引(※2)を行った場合の電磁的記録の保存方法の範囲に、次の方法が加わることになりました。

・発行者のタイムスタンプが付された電磁的記録を受領した場合において、その電磁的記録を保存する方法
・電磁的記録について訂正または削除を行った事実及び内容を確認することができるシステム(訂正または削除を行うことができないシステムを含む。)において、その電磁的記録の授受及び保存を行う方法

オンラインで請求書などを受け取った場合、電子帳簿保存法の改正前後の保存方法は次の通りです。

いずれかの方法による保存が要件改正前改正後
タイムスタンプの付与(a)請求書等の発行者側で付与あり受領者側のタイムスタンプ付与が必要(注)受領者側のタイムスタンプは不要(上記(1))
(b)請求書等の発行者側で付与なし変更なし
事務処理規定の作成・運用変更なし
受領者がデータ改変できないシステム(クラウド会計など)の利用新設(上記(2))

(注)受領から概ね3営業日以内にタイムスタンプを付与する。

※1タイムスタンプ:ある時刻にその電子データの存在と、それ以降改ざんされていないことの証明技術。
※2電子取引:取引情報の授受を電磁的方式により行う取引。

社内作成の帳簿や書類を電子化する前に

この文書の保存は税法上で取り敢えず決められていそうだから、もしくは決められてないから廃棄しておこうといった曖昧な認識のまま文書管理を行っていては、社内の情報管理の観点や、税務署から税務調査を受ける際に問題になるでしょう。

社内作成の帳簿や書類の電子化に際して、まずそういった書類の備付けや保存について、どの法律で義務付けられているかを正確に把握しておきましょう。

Digital Workstyle College 編集部
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