社内のペーパーレス化に寄与する「電子署名」

あなたの会社では、文書のペーパーレス化はどれぐらい進んでいるでしょうか?契約書、
申請書、請求書、領収書……。オフィスで作成する書類は、大きな会社であればあるほど日
々、大量の枚数に上り、発行の際にはひとつひとつ、サインやはんこが必要なものも多く存
在しています。
2020年1月に発表されたペーパーロジック株式会社の調査によると、

 74.7%の企業が契約書や申請書類のPDF化を実施している

東京の企業の36%が2020年度予算でペーパーレス化システム導入費用を計上の運び
!2020年は法規制緩和を受けてペーパーレス化がさらに進む
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000023701.html

という結果も出ています。では、ペーパーレス化に伴う「サインの電子化」についてはど
うでしょうか?今回は、「電子署名」について詳しくお伝えします。

「電子署名」はトラストサービスの一つ

 例えば取引先と契約書を交わす際、また、行政に申請書などを提出する際、サインが必要です。しかし、単なる手書きのサインでは「本当に本人がサインしたものなのか?」ということを、文書の受け取り手側が客観的に証明することはできません。その文書をスキャンして署名部分を切り抜けば、コピー&ペーストすらできてしまい、記されたサインの真正性が失われるというリスクを孕んでいます。
そのようなセキュリティ上のリスクを避けることが出来るサービスが「電子署名」です。
「電子署名」とは、認証局(CA:Certification Authority)によって「本人確認」が正当に行われ、なりすましの防止や情報の改ざんを防止する技術「トラストサービス」の一つに位置付け
られています。

では、具体的に「電子署名」とはどのようなプロセスで付与・検証するのでしょうか?
署名者は、作成した電子署名からパスワードを生成し、自分だけが持っている「暗号鍵」を用いて「電子署名」を電子文書に添付します。

鍵にはもう一つ、一般公開する「公開鍵」があります。文書の受け取り手はこの「公開鍵」
を用いて、付与された電子署名が正当なものであるかどうか検証することができる、という仕
組みになっています。

また、「電子署名」の「本人確認」を行う「認証局」とは、一定の基準を満たしたうえで国
のバックアップを受けている民間機関が該当し、国内には複数存在しています。

認証局の役割の一つは、登記事項証明書や印鑑登録証明書を用いて申請元の企業が実在しているかを確認すること。そしてもう一つは、失効の依頼を受けた電子証明書や、秘密鍵に脆弱性の可能性が出てきた証明書を失効させることです。

出典:電子認証局会議 電子署名の仕組みを参考に作成
http://www.c-a-c.jp/about/knowledge.html

参考:電子認証局会議 電子署名の基礎知識
http://www.c-a-c.jp/about/knowledge.html

参考:IPA 認証局と電子証明書
https://jp.globalsign.com/ssl-pki-info/pki/ca.html

法的根拠を以て署名者の真正性を担保できる仕組み

根拠法となる「電子署名法」は平成13年(2001年)4月1日から施行されました。これにより、「電子署名」が手書きの署名や押印と同等に通用する法的基盤が整備されたのです。
 
1.電磁的記録の真正な成立の推定
 電磁的記録(電子文書等)は、本人による一定の電子署名が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
⇒ 手書き署名や押印と同等に通用する法的基盤を整備する。

2.認証業務に関する任意的認定制度の導入
 認証業務(電子署名が本人のものであること等を証明する業務)に関し、一定の基準(本人確認方法等)を満たすものは国の認定を受けることができることとし、認定を受けた業務についてその旨表示することができることとするほか、認定の要件、認定を受けた者の義務等を定める。
⇒ 認証業務における本人確認等の信頼性を判断する目安を提供する。

法務省 電子署名法の概要について
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji32-1.html
 

従って、企業に「電子署名」の仕組みを導入すれば、署名者の真正性を法的に担保しつつ運用できるのです。

画像:法務省 認証業務に関する任意的認定制度の導入をもとに作成
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji32-1.html
参考:法務省 電子署名法の概要と認定制度について
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji32.html

「電子署名」を活用できる8つのビジネスシーン

1.電子メール
電子メールに「電子署名」を付与している企業があります。ネットバンキングを展開する銀行業などもその一つです。
「電子署名」の付与により、自社を騙るなりすましメールでないことを証明でき、フィッシング詐欺やウイルス被害を事前に防止することができます。

2.契約書
契約書にサインする際は、「電子署名」を付与することをお勧めします。最大のメリットは、印紙税がかからないこと。電子データは非課税なのです。(電子データは、印紙税法上の文書として認識されないため、印紙税課税そのものが及びません。)
これにより、文書発行・管理に係るさまざまなコスト削減につながります。契約書締結のた
の訪問・郵送費用・印紙代が不要となり、保管場所の省スペース化も実現。
さらに、「電子署名」によって署名者の真正性が担保されているため、確実な契約管理が可
能になります。

3.請求書
従来、PCで作成した請求書をプリントアウトして顧客別に仕分け、発送作業を行っている会社も多いのではないかと思います。それを電子データ化し、電子署名とタイムスタンプを付与した上で電子配信し、そのまま電子保存すれば業務効率化・生産性向上につながります。印刷コスト、郵送コスト、紙の原本のファイリング業務など、紙さばきのための管理人件費を削減。従来の書類保管スペースは、別の目的に有効利用可能です。原本が電子データとなり、原本そのもののバックアップも可能になります。

4.稟議書
稟議書に「電子署名」を付与すれば、承認者、および承認された情報が第三者に改ざんされていないことを証明できます。
また、契約書や請求書の例と同じく、ペーパーレス化によって紙媒体、印刷、保管などに係る経費の大幅な節約が可能になります。

5.官公庁や自治体などへの届出、許可申請書類、電子入札
「電子署名」を付与して電子文書で提出すれば、窓口に出向くことなくオフィスから申請作
業ができるため、窓口の対応時間外でも申請・確認が可能になります。
移動や待ち時間という時間コストもカット。
また、手数料や税が軽減される場合もあり、費用削減も期待できます。
そして、入札作業自体を効率化できれば、従来と比較して、より多くの案件に応札する機会が拡大するかもしれません。受注機会の拡大も期待でき、生産性向上に寄与します。

6.取締役会の議事録など
取締役会の議事録などに、承認者が「電子署名」を付与して電子データ化して保存するという活用シーンも想定できます。不動産登記手続、商業・法人登記手続、不動産譲渡登記手続、債権譲渡登記手続といった登記申請に取締役会議事録などの電子データを添付すれば、オンラインで登記申請をすることができます。このような公文書についても、オフィスや自宅からオンライン申請が可能。
これは、リモートで対応している取締役・社外取締役が多い企業には特にメリットがあると言えるでしょう。役員どうしの移動時間、移動経費など大幅な節約が可能になります。

7.IR文書などコンプライアンス性の高い公開情報
IR文書などコンプライアンス性の高い情報や、ニュースリリース、新着情報など、発信元の信頼性担保が重要な情報公開の際も、電子署名を付与するメリットがあります。
公開した情報の所有者を証明し、また、その情報が第三者によって改ざんされていないことを証明できます。
さらには、その情報が二次配布された際に、作成責任の所在を明確化できます。

8.営業日報、業務記録、教育実施記録
例えば、従業員への定期的な教育実施と、その記録保管が法律により義務付けられている業種など。警備会社などがその一例として挙げられるでしょう。
教育実施記録の管理にも「電子署名」を付与するメリットがあります。
紙の文書に教育実施者の記名、押印をして保存していたものをペーパーレス化することができます。ペーパーレス化できれば、印刷、ファイリング、営業所間での送付など、紙ベースでの運用負荷を丸ごとカットできます。
電子データ化されれば複数の教育実施者の間でも共有が簡単になり、他の営業所からもアクセスできます。
教育実施記録となれば時系列で大量に発生することも想定されますが、紛失リスクも回避できます。
何よりも、電子署名とタイムスタンプを付与することで作成日時の保証、記名者の担保ができ、記録確認・管理の効率化につながります。

9.電子カルテ
最近は多くの病院で「電子カルテ」の導入・運用が進みつつあります。しかし、どうしても紙ベースの記録も残り、電子と紙の二重管理を余儀なくされている側面も実在しています。
そこで、診療過程で発生する紙ベースの諸記録をスキャンし、「電子署名」と「タイムスタンプ」を付与して電子保存。紙の記録と電子作成された記録を統合管理できれば、紙資料は廃棄することができ、管理コストを軽減できます。
加えて、「電子署名」と「タイムスタンプ」の付与により署名者・診療日の真正な記録が残ることになるため、コンプライアンスも確立することができます。

参考:登記・供託オンライン申請システム
https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/index.html
参考:電子認証局会議 電子署名活用ガイド
http://www.c-a-c.jp/pdf/download/digital_signature_guidebook_CAC.pdf

ユニバーサルなサービスになっていくことが普及のカギ

はじめに述べたように、「電子署名」とは、電子作成した文書からパスワードを生成して秘密鍵を付与し、文書の受け取り手側は、公開鍵で発行元の真正性を検証する、という仕組みになっています。この一連のプロセスは、「電子署名」専用ソフトを介して行われるため、「電子署名」を利用したい場合は取引先と相互運用可能なソフトを導入する必要があります。その導入コスト、運用コストが係る点は課題の一つだと言えるでしょう。
また、「電子署名」対応ソフトウェアには複数の種類があり、どれでも互換性があるとは限らない点も課題の一つです。
よりユニバーサルなサービスになっていくことが、普及のカギだと言えるでしょう。

参考:
法務省 第2電子取引社会における電子署名と認証の仕組み
http://www.moj.go.jp/ONLINE/CERTIFICATION/GUIDE/guide02.html 

社内で役職者のポジションに就いている人は日々の業務の中で、契約書といった社外文書や、教育記録、業務記録、営業日報といった社内文書にサインをする場面も多いかと思います。「電子署名」がもっと普及すれば、社内のペーパーレス化に寄与し、コスト削減・業務効率化・生産性向上につながることを期待できそうです。また、手書きサインよりも署名者の真正性が担保されますので、コンプライアンス面の向上につながります。もし、あなたの会社で「電子署名」が未導入であれば、この先検討してみる価値は大いにありそうです。

Digital Workstyle College 編集部
この記事を書いた人