リーガルテックとは~日本で注目される背景と、市場規模~

リーガルテックとは、法律もしくは法務(リーガル=Legal)と技術(テック、テクノロジー=Tech)を組み合わせた造語です。法務業務において発生するさまざまな課題をクリアするために、人工知能(AI)をはじめとしたさまざまな技術の力で、裁判や契約に関する事務作業などの効率化を図ることです。日本でもここ数年で、リーガルテック業界に参入する企業が増えてきました。

リーガルテックはもともと、訴訟大国と言われるアメリカで発展してきました。アメリカでは民事訴訟において、訴訟相手が証拠の提出を拒否した場合、訴訟相手に不利になるもの、メールなどの電子証拠も含めて全ての証拠開示を請求できる、いわゆる「ディスカバリー制度(証拠開示手続)」が設けられています。

訴訟相手が個人で、提出したものとは別に証拠があるかどうかを調査する手間や時間も少なく済みます。しかし訴訟相手が企業の場合、契約書に加えて、稟議書や社内文書、電子化した書類など、精査する証拠は多岐にわたるため、全ての証拠を人間が精査することは限界がありました。

そこでテクノロジーの力を使って、訴訟に関連がありそうな証拠をピックアップして、訴訟活動に活かそうという動きが起こったこと、電子証拠開示への対応から日本よりもニーズが高いことなどを理由に、2010年ごろから一気に発展していきました。

なぜ今日本でリーガルテックが注目されているのか

近年、政府は「働き方改革」を施策として推進しています。少子高齢化の進行に伴い、労働人口は年々減少傾向にあります。また法律で決められた残業時間の超過により、過労死が多発したため、残業時間の制限、副業解禁やリモートワークの推奨などを企業側に求めるものです。

こうした流れは法務業務も例外ではありません。新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、テレワークが急速に普及しました。しかし、そんな中でも「ハンコを押さないといけない書類がある」「電子契約に対応していないので、契約書を作成して郵送しなければならない」といったことで、出社する人もいました。

生産力が低下し続ける状況において企業が発展し続けるためには、労働者1人あたりの「労働生産性」、1時間あたりに生み出される成果量を上げていく必要があります。そのためには、契約の締結から契約書の作成・郵送といった人の手間が必要なところに、AI(人工知能)などの技術を導入することで人件費の削減や業務効率の向上、リソースが必要なところに人材を確保できる他、業務の棚卸をして、業務プロセスの見直しを行うことで無駄な業務や省略可能な業務の特定や、業務遂行の方法及び社内手続きの改善が図られるなど、業務の効率化や意思決定の迅速化が実現されます。

人の手が求められるビジネスは、今後今以上に維持できなくなっていくでしょう。そんなときに初めてITの力を使わざるを得なくなります。そうした背景からリーガルテックへの注目が集まっているという一面があります。

日本におけるリーガルテックの市場規模

日本では、2015年頃からリーガルテックを手掛けるベンチャー企業が次々に起業されていきました。現在リーガルテックの市場規模は約300億円、関連企業は日本に30社ほど存在しており、資金調達額も年々上昇傾向にあります。

株式会社矢野経済研究所が2019年に公表した、「リーガルテック国内市場規模推移と予測」によると、リーガルテックサービスを利用する企業は増加傾向にあり、国内市場は電子契約サービスを中心に右肩上がりに成長を続けています。このままのペースであれば、2023年には市場規模が400億円に近いところまで拡大することが予測されています。

日本においては現在、法務業務の大半を占めている電子署名や契約書の作成、締結、管理、調査・分析、紛争解決をリーガルテックサービスとして提供しています。

日本における主なリーガルテックサービス

サービス名と提供企業内容
Holmes(同)契約書作成・締結、管理をクラウド上で一括管理
LegalForce(同)契約書作成支援、契約書のレビュー
AI-CON(GVA TECH)契約書の有利・不利をAIで判定
クラウドサイン(弁護士ドットコム)様々な契約締結を全てオンラインで実施
NINJA SIGN(サイトビジット)ワンストップ契約サービス
one visa(同)オンラインの外国人ビザ申請支援サービス
会社設立freee(freee)会社登記の必要書類を一括作成
D1-Law.com現行法規(第一法規株式会社)日本の法令データベース
LEGAL LIBRARY(株式会社Legal Technology)法律専門書のデータベース
弁護士ドットコム(同)弁護士に相談できるオンラインQ&Aサービス

海外のリーガルテック企業の代表的なサービス展開例

アメリカでは、企業向けのリーガルテックサービスとしてROSS Intelligence社が開発した「ROSS」が知られています。IBM社が開発したWatsonというAI(人工知能)の機能を利用できるAPIを利用し、破産法に関する情報を検索・抽出できるようにしたものです。破産法業務を支援するためのプログラムとして、Baker & Hostetler法律事務所が導入しました。

イスラエルのスタートアップ企業の「Legalogic(リーガロジック)」は、「LawGeex」というサービスを開発しました。LawGeexは、企業法務に関する専門用語や独特の言い回しなどを、数万件に及ぶ実際の契約書をもとに学習したAI(人工知能)が、契約書のレビューや修正を行うサービスです。契約書の最終的なチェックは、司法書士や弁護士などの専門家が行う必要がありますが、LawGeexのようなサービスを活用することで、生産性を大きく高めることが可能です。

イギリスでは、一般市民向けの書類作成システムとして、Joshua Browderが開発したチャットボット「DoNotPay」が有名です。駐車禁止切符への異議申立てをする際、チャットボットが順次繰り出す質問に順次回答していくと、書類が作成されるシステムです。このときに培ったノウハウと技術を活かして、一般市民が直面する法律問題を解決するチャットボットも開発・リリースし、現在ではアメリカでも使われるようになっています。

その他、法廷での主張の応酬と裁判所による判決の導出過程をモデル化する研究、欧州人権裁判所の判決予測プログラムの開発、再犯予測プログラムなど、多様な種類のサービスが開発・展開されています。

今後の予測

サントリーホールディングスや東北大学など大手企業や大学においても、テレワークを阻む「押印」について廃止すると発表しています。出社を前提とした働き方から大きくこれから変わっていくことから、リーガルテック市場は今後急速な成長が期待されます。

Digital Workstyle College 編集部
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