どう違う?「テレワーク」「リモートワーク」「在宅勤務」

新型コロナウィルス感染拡大で「ソーシャルディスタンス」が叫ばれる今、国が「新しい生活様式」として「テレワーク」を推奨しています。特にこの数か月間で、「テレワーク」「リモートワーク」「在宅勤務」といった言葉をよく耳にするようになりました。実際に、自分自身がそのような働き方に移行した、という人も多いことでしょう。今回の記事では「テレワーク、リモートワーク、在宅勤務の違い」をテーマに、新しい働き方とその諸課題について詳しく見ていきます。

「テレワーク」=「時間と場所の制約が無い働き方」

 まず「テレワーク」は、国や行政機関が正式に採用している呼称です。定義としては「ICT(情報通信技術)を活用した、時間と場所の制約が無い働き方」。

 「(働く)場所の制約が無い」という部分については、自宅、カフェ、コワーキングスペース、地方のサテライトオフィスなどが該当し、さらには海外も含まれます。

 「ICT」とは、「Infomation Communication Technology」の略で、「Communication」という単語が含まれていることが理解のカギです。つまり、「人と人とを繋ぐための通信技術(を活用した働き方)」といった意味合いとなります。

 現在、「テレワーク」の普及でビジネスチャットツールや、ビデオ会議ツールの利用者数が急増しています。こういったビジネス上のコミュニケーションツールが「ICT」に当てはまります。

 日本国内での、ビジネスチャットツールやビデオ会議ツールの導入状況に目を向けてみましょう。平成30年の総務省の調査によると、ICTツールを活用している国内企業は20%~30%程度。比較対象としてアメリカを見ると、日本の約2倍に当たる60%程度、という数字が示されています。日本ではICTツールの導入余地・伸びしろがまだまだある、と言えるでしょう。

参考:総務省 テレワークの推進
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/telework/

参考:平成30年度情報通信白書
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd144220.html

 ちなみに、日本国内でチャットツールのシェアナンバーワンだと言われているのは「Chatwork」です。このようなビジネスチャットツールを主軸展開する企業としては国内初の上場企業となりました。(※Chatwork株式会社は、2019年9月に上場を果たしています。)

 その後、国内導入企業は24万6000社以上、登録ユーザー数は308万人超に上っています。

参考:日本のDXのカギを握る「チャットワーク」 Wedge(2020年1月7日)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/18240

 また最近、ビデオ会議ツールでは「ZOOM」というアプリケーションも利用者数が急増しています。日本での利用者数の急増度合はアジアでも最速だと発表されており、2020年の第一四半期には20万人に届く勢いになっているそうです。

参考:ビデオ会議「Zoom」が日本で本格展開、SlackやTeamsにどう対抗?
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/05490/

 さて、「テレワーク」の定義では「時間と場所の制約が無い働き方」と述べられていますが、この「時間」の部分についてクローズアップして考えてみたいと思います。

 「時間に縛られない働き方」という呼び掛けには、「家事・子育てと両立できる働き方」「介護と両立できる働き方」といった意味合いも込められているのではないでしょうか。

 2019年時点で、共働き世帯数は1,245万世帯。それに対し、専業主婦世帯は575万世帯です。現代の日本において、有職主婦(夫)の数は、専業主婦(夫)の約2倍存在するのです。

 家事・子育て・介護と、仕事を両立する世帯数が増え、より多様で柔軟な働き方が求められている、ともいえそうです。

 時間の制約が無いテレワークであれば「早朝、家族がまだ寝ている静かな時にひと仕事片する」「子供が寝静まったあとで仕事に集中する」といった柔軟な働き方も可能です。また、介護との両立という観点でも同様のことが言えるでしょう。例えば日中に要介護の家族の食事介助、通院介助といった世話をこなしながら、一人の時間が許されるときに、パソコンに向かって仕事に集中する。テレワークでは、「家事」「子育て」「介護」「仕事」を1日の中でまるでモザイクのように組み合わせて、新しい生活スタイルを確立することも可能なのです。

出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構 「専業主婦世帯と共働き世帯」
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0212.html

 また、「場所の制約が無い働き方」という点については「地方のサテライトオフィス」という事例も挙げることができます。

 総務省では、都市部から地方へのヒト・情報の流れを創出するために、地方公共団体のサテライトオフィス誘致の取り組みを支援しています。

 平成30年末時点で、地方公共団体が誘致又は関与したサテライトオフィスの開設数は444社。

都市部の企業が過疎地などにサテライトオフィスを構えることで、地元に新たな雇用を創出したり、U・Iターン者の移住動機になります。自然豊かでゆったりとした時間が流れる田舎暮らしをしながら、ICTを活用して都市部発信のビジネスプロジェクトに携わる。都市部と違って、毎日満員電車に揉まれて通勤するストレスもありませんし、地方のほうが地代家賃も安価です。プライベートな時間には、例えば庭いじりや釣り、山登りを楽しむといった時間の過ごし方も気軽にできます。また、三世代同居が可能であったり、地域コミュニティが濃厚な地方のほうが子育てに適していると判断してU・Iターンを選択する人もいるでしょう。

 こういった働き方、暮らし方ができることもまた、「テレワーク」のメリットの一つだと言えるでしょう。

参考:総務省 地方公共団体が誘致又は関与したサテライトオフィスの開設状況調査結果
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei08_02000186.html

 さまざまな側面から特徴やメリットを論じてきた「テレワーク」ですが、総務省によると2017年時点での日本での導入率は13.9%。これは、年々緩やかに増加傾向にあるそうです。ただし、東京都庁の最新調査によると、直近での都内企業のテレワーク導入率は62.7%と急増しています。(※2020年3月と、同年4月を比較しての増加率)

 長期化するコロナ禍の時勢を受けて、これからますます増えていくことも予想できます。

出典:平成30年度情報通信白書
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd144310.html

出典:東京都 テレワークの導入に関する緊急調査
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000337.000052467.html

 テレワーク導入に関する助成金支給制度も、複数あります。例えば、厚生労働省の「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」。テレワーク導入に係るパソコン導入費用をはじめ、導入のための研修、外部からのコンサルティングなどに関して費用の助成を受けることができます。自社のテレワーク移行に関して費用面でのハードルを感じているなら、こういった制度を活用するのも手です。

参考:働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/telework_10026.html

参考:民間企業に対するテレワークを推進するための補助金・助成金・支援金(30件)
https://digitalworkstylecollege.jp/news/subsidyttelework/

 なお、総務省では「テレワーク」を先駆けて導入・定着させているパイオニア企業を表彰する「テレワーク先駆者百選」を選出しています。あなたがもし企業の経営者・人事担当者などでテレワークの導入について悩んでいるのなら、こういった企業が実際にどのような働き方を導入しているか、機会があれば詳細を参考にしてみると良いかもしれません。

参考:総務省 「テレワーク先駆者百選 総務大臣賞」等の公表
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu02_02000255.html

「リモートワーク」=「場所の制約が無い働き方」

 「リモートワーク」も「テレワーク」の一種です。ただし、「テレワーク」が「時間と場所の制約が無い働き方」であることに対し、「リモートワーク」は「場所の制約が無い働き方」と定義できます。直訳すると「遠隔で働く」といったところでしょうか。もちろんテレワークとリモートワーク同じ意味で使われることもあります。

 会社の操業時間に沿って、自宅、カフェ、コワーキングスペース、はたまた海外など、とにかく「働く場所は問わないが、決まった時間に皆がコミュニケーションを取りながら稼働する」というのが「リモートワーク」です。

 最近、テレビやラジオなどでも「リモート放送」「リモート収録」のシーンによく出会います。従来のように出演者がスタジオで一堂に会するのではなく、ビデオ会議ツール等を活用して、決まった時間に自宅とつなぐ、遠隔地にある事務所とつなぐ、海外とつなぐ。これも「リモートワーク」に当てはまります。

「場所の制約が無い働き方」に関して言えば、近年、都内でコワーキングスペースの数が増えてきているそうです。その増加率は2018年上期だけで前年の2倍、一拠点当たりの床面積も増加傾向にあり、都内を中心にコワーキングスペースの需要が増えていることが伺えます。

参考:東京オフィス市場で拡大するコワーキング・スペース
https://jll-japan.com/editorials/2018ad/article/tokyo-coworking-space/

 また、大手ビジネスホテルチェーンや旅館などでも「リモートワーク応援プラン」のサービスを提供するところが急増中です。いわゆる「デイユース」で客室を執務スペースとして利用し、施設内では、通信環境として無料Wi-Fiも整っています。中には大浴場つきでリフレッシュできるホテルも。自宅ではなかなか集中できない、高速な通信環境が整っていない、といった人に求められているようです。先に述べたコワーキングスペースは、「シェア(共用)オフィス」といった趣ですから、誰かが周りに居るよりも、一人きりで集中できる執務環境を確保したい人には、ホテルや旅館で作家さながら、「カンヅメ」になるのも良いかもしれません。

 そして、「リモートワーク」で海外在住の人が日本の企業に勤める、といった働き方を認める企業も増えてきています。働く場所は問われませんが、時間に関しては皆が揃って稼働するのが「リモートワーク」の定義ですから、この場合、「日本時間の営業時間に稼働できること」を条件としているケースもあるようです。

 そんな中で、「完全リモートワーク移行宣言」と銘打ってオフィスそのもの、営業拠点そのものを廃止する企業も出てきました。

 例えば、製薬会社・ノバルティスファーマは全国に70以上あった営業拠点を一斉に廃止。MR職(医薬情報担当者)の営業所出社をなくし、顧客へ直行直帰、業務効率化で顧客対応により集中してもらう、そして、家族との時間を増やしワークライフバランスの実現を後押しする、といった狙いが込められているそうです。

 このノバルティスファーマ社の例に限らず、都内のベンチャー企業を中心に「オフィス解約」や「面積縮小」の動きは広がりつつあるようです。

参考:ノバルティス 営業所を廃止 全国6事業所に集約 「新しい働き方の実現」へ
https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=69171

参考:テレワーク導入で都心部のオフィス賃貸解約や面積縮小の動き
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200511/k10012425101000.html

 経営者側からすると「リモートワーク」だと「さぼり」あるいは逆に「働きすぎ」が可視化できず、導入を躊躇している企業もあるかもしれません。

 このような課題に応えるべく、「リモートワーク」の増加の中でチャットツール、ビデオ会議ツールだけではなく「勤怠管理ツール」「労務管理ツール」にも注目が集まっています。

 例えば、リモートワーカーが業務中にどのようなPC画面を見ていたかキャプチャを取り、あとで上司に見せるツール。また、着席時間と、退席時間を打刻して、私用で途中、離席する際にはそのことを可視化できるようなツールなどもあります。

 ただし、企業全体でリモートワークでも生産性を上げるためには、こういった勤怠管理ツールに頼るだけではなく、例えば「1日のアウトプット」「半期のアウトプット」で働き手のパフォーマンスを評価するといった「成果主義」を人事評価に取り入れることも必要になってくるでしょう。皆が遠隔勤務となり、従来のように、オフィスに集まって働いているときと同じようには、一人一人の働きぶりを可視化できない。そうなってくると「成果物」「アウトプット」で評価することが合理的だと言えそうです。

参考:厚生労働省 テレワークポータルサイト
https://telework.mhlw.go.jp/intro/tool/

「在宅勤務」=「自宅で働く」

 「在宅勤務」も「テレワーク」の一種です。これは名前の通り「自宅で働く」スタイルを指します。

 昨今のコロナ禍で、ある日を境に突然、「在宅勤務」を命じられた人も多いことでしょう。

 「在宅勤務」をスムーズにできるかどうかは、「家に安定したインターネット回線があるか」「執務スペースを確保できるか」にかかっています。

 会社に高速回線があるのは当然のことですが、自宅ではモバイル通信のみで、光回線などを引いていない、長時間安定して使えるWi-Fi環境がない、といった人も中にはいるかと思います。

 しかも、昨今の「在宅勤務」の急増で、各通信事業者では日中にアクセスが集中。通信障害なども起きやすくなっています。これには、官民一体となったインフラ改善の動きが必要でしょう。

 PCやタブレット端末の需要も急増していますが、コロナウィルスの影響で生産・供給が追いつかず、世界の主要パソコンメーカーの出荷台数は前年比でダウンしているそうです。

 また、会社に行かず一日中、在宅しているわけですから「執務中の水道光熱費は個人が負担するのか?それとも会社が負担するのか?」といった議論も生まれています。こういった議論に対して、大阪市、名古屋市といった一部自治体では外出自粛そして「在宅勤務」が長期化することを見据えて水道代の減免施策を打ち出しているところもあります。

 このように、「在宅勤務移行」とひと口に言っても、「執務環境」の面で数々の課題が立ちふさがっていることが分かります。

 「執務環境」についてはハード面だけでなく、家庭環境の側面からも検討する必要があります。

 「家事や子育て、介護と仕事を両立させる必要がある。生活の中で仕事と私用をシームレスに組み合わせて柔軟に働きたい」という人には、在宅勤務は適していると言えそうです。

 逆に、「仕事とプライベートはシームレスではなく、境目をキッパリ切り分けたい」という人には、在宅勤務だと公私の境目が曖昧になるという弊害もあり得るかもしれません。

参考:新型コロナウイルスのフレッツトラフィックへの影響
https://eng-blog.iij.ad.jp/archives/5536

参考:水道料金や給食費を減免 自治体が家計支援(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58914850Z00C20A5EA1000/

参考:Global PC Market Q1 2020
https://www.canalys.com/newsroom/global-pc-market-Q12020-COVID19

まとめ

昨今よく耳にする「テレワーク」「リモートワーク」「在宅勤務」の違いについてそれぞれ詳しく述べてきました。「新しい生活様式」「働き方改革」といった言葉で国が推奨し、日本の社会にも急速に広がりつつあることが分かりますが、その一方で、これまでにない新たなワークスタイルということで課題も多々あることが見えてきます。

 それぞれのメリット、デメリットを客観的に理解したうえで、自分に合った働き方とは、自社に合った働き方とは、といった点をよく検討して導入することが肝要です。

Digital Workstyle College 編集部
この記事を書いた人