週に1回のはんこ出社を無くしたい〜オールアバウト法務・高橋さんに訊いたクラウドサービスとの付き合い方〜

株式会社コンカーの「緊急事態宣言中のテレワークに関する調査」によると、テレワークができなかった企業の理由として挙げられたものとして、経費精算・請求書・契約処理等のペーパーワーク(33%)」が全体の1/3を占め、紙を使った業務がテレワークを阻害する大きな原因の一つに。さらに、2番目に多かったのが「押印による承認業務(22%)」でした。

「週に1回の出社は捺印のために出社していた」と語るのは総合情報サイト「All About」を運営する株式会社オールアバウト法務の高橋さん。

法務のテレワークの壁ともいえる「紙」と「ハンコ」を解決するためのクラウドサービス導入や活用のメリットなどお伺いしました。 

話し手:
高橋実穂氏
株式会社オールアバウト 経営管理部 法務グループ マネジャー
2008年9月、弁護士事務所からオールアバウトへ転職。法務を主軸に、労務、情報セキュリティ、内部監査、リスクマネジメント等、守備範囲を拡げている。現在は法務グループのマネジャーとして、オールアバウトグループ全体の法務事案を担う。

企業法務の役割と存在価値

―――高橋さんの経歴を教えてください。

以前は弁護士事務所で働いていました。より事業当事者として変化に富んだ環境で自身のスキル・力を試したいと考え、2008年にオールアバウトに転職しました。今後は、社内における法務のプレゼンスを向上させ、あるべきリーガルリスク・マネジメントの実践をしていくとともに、自身としては、いずれは、日本ではあまり定着していないポジションですが、CLOとして法務職のキャリアを極めたいと考え、日々業務に励んでいます。

―――現在の仕事内容について教えてください。

法務をはじめ、労務、情報セキュリティ、内部監査、リスクマネジメントが主な業務です。新規サービス立ち上げの際の相談から、契約書のチェック、各種手続きなどを行っています。

―――法務担当として、意識して行っていることはありますか?

事業現場の人が事業を推進していくに際し、リーガルリスクの観点が抜けている場合があるので、手遅れにならないよう、なるべく早いタイミングで相談してもらうようにしています。当社の法務は私含め2名で担当しているので、相談しやすさと、機動性の良さがメリットです。以前はバックオフィス機能が集約された経営管理部の島の中に席を置いていましたが、今は事業現場に隣接した場所に席を置いています。事業現場と物理的な距離が近くなったことで、気軽に相談もしやすくなったといってもらえましたし、些細な相談も声をかけてもらいやすくなったと感じています。早い段階で情報収集・ヒアリングすることで、リーガルリスク・事業リスクに関し的確に分析してアドバイスすることができるので、プロジェクトをよりスムーズに進められるようになりました。

―――法務の保守的なイメージが覆されました

事業現場の会議にも参加して、新しい取り組みについての話題が出たときにはその場でリーガルリスクの指摘などができるように、こちらからもプロジェクトをスムーズに進める環境を作るように心がけています。情報は自分から取りに行かないと、自動的に入ってくるものではないですからね。

―――企業法務の存在価値はどんなところだと思いますか?

法務部門の業務は、やろうとおもえば、顧問弁護士事務所に全て外注することもできますし、必ずしも社内になくてはならない部門ではないと思っています。中小企業では費用対効果等総合的な事情を鑑み、経営としてそのように判断している会社も多くあります。
しかし、社内の法務部門にしかできないことがあります。それは、プロジェクトの背景や事業現場の思いなどをすべて理解した上での業務推進ができること。
事業現場の思いとプロジェクトの詳細背景や経営判断も含めた会社としての意図、それらと、専門家のプロフェッショナルな見解を結び付けられる通訳的な存在として、間を取り持ちコントロール・的確なリスク分析をすることが、弊社における法務部門の存在意義だと思っています。
そのためには、社内における事業理解だけではなく、外部の専門家ときちんと向き合って会話し、的確なリスク分析をするための専門知識も必須になります。

サービス導入前後の変化

―――クラウドサービス導入前、契約書管理などはどのようにされていましたか?

契約のひな型をエクセルで管理し、半期に一度分析して見直しを行っていました。「こういった問い合わせが多いが、ひな形をこう変えれば問い合わせが減るのではないか」など改善を重ね、なるべく同じような対応に時間を取られることがないようにしていました。

また、過去のやりとりをナレッジで蓄積し、同様のことが起きた際にスムーズに対応できるようにマニュアル化していました。

―――新型コロナウイルス感染拡大以前から、リモートワークは実施されていたんですか?

リモートワークは、会社の制度として既に運用されており、私自身は、週1回のペースで特定の曜日に取り入れていました。そのおかげで、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務になったときにも、とくにストレスはありませんでした。ただ、捺印業務だけは出社しなければできなかったので、そのために出社することはありましたね。

―――在宅勤務中の不便から、捺印をなくすためのクラウドサービス導入に踏み切ったのですね。

これまでにも電子契約サービスの導入は検討したことがあったのですが、当時は、費用対効果にそれほどメリットを感じなかったため、導入を見送っていました。ただ、コロナ禍で捺印のためだけに出社するという状況になり、事業を滞りなく推進させるために、どのような状況下においても、安定した法務サービスを提供できる環境を整備しなくてはならないと考え、導入を決めました。

―――具体的にどういったサービスを導入されたのですか?

電子契約サービス導入前から使っていたのは法務管理ツール「RICOH Contract Workflow Service」です。リコー社が自社法務部門用に開発したものを商品化した、法務に特化したクラウトサービスなので、法務の痒いところに手が届いており、非常に使いやすく重宝しています。
捺印のためだけに出社するというのは辞めたいと思い、案件相談と契約締結後のエビデンス管理は「RICOH Contract Workflow Service」で行い、捺印承認などのハンコまわりには「NINJA SIGN」を導入しました。

―――いくつか比較検討されたと思いますが、決め手は何だったのでしょうか?

法務管理ツールは3社ほど検討した中で、実現したい内容と予算のバランスが最も良かったのがリコー社のものでした。電子契約サービスは4社ほど検討しましたが、捺印承認のワークフローをワンストップでシステム化したいという要望を叶えられるのが「NINJA SIGN」だけだったんです。

―――これまでの捺印承認はどのようなワークフローで行っていたんですか?

これまでは、申請者から上長、そして法務へとメールで承認を回し、承認が揃ったものをメールボックスで検索して捺印する。さらに捺印したものをスキャンしてPDFでも保管するという手間のかかるやり方でした。

捺印業務はすべて法務が管理しているので膨大な量でしたし、ルーチンワークとして1日30分ほどは割いていたので、電子契約導入の際にはワークフローをシステム化できることが必須条件でした。
捺印やワークフローそれぞれに特化したものも多くありましたが、複数のシステムを導入して事業現場での運用に逆に負荷になってしまっては本末転倒なので、その観点からも、NINJA SIGNに決めました。  

―――NINJA SIGNの検討から導入まで期間はどのぐらいだったんでしょうか?

4月下旬に無料トライアルを申し込んで、トライアル期間終わってすぐ本契約に切り替えたので2週間ぐらいでしたね。

―――NINJA SIGN導入後の、社員の反応などはいかがですか?

もともと現場からも上がっていた要望でしたので反対は特にありませんでした。
システム化したことにより、承認者は都合のいい時間にNINJA SIGNにログインしてチェックすれば自身の承認タスクが一目瞭然なので、承認者側にも好評です。
メールの中に承認案件が埋もれることもなくなり、承認者が案件を寝かせることが格段に減りましたね。法務から承認者に対する催促コストも削減されました。

―――コスト面ではいかがですか?

もちろん月額コストはかかりますが、これまでかかっていた印紙代、捺印申請やスキャンにかかっていた作業コスト、郵送費用、事業現場でのクライアントに対する調整コストなどが削減されたので、実質的なコストはさほど増えてはいないと見積もっています。
それ以上に、働く場所にとらわれなくなったり、いかなる状況下でも安定した法務サービスを提供できる環境を実現できたメリットの方が大きいと実感しています。

―――セキュリティ上の不安要素などはありましたか?

当社はPマークを取得していて、先方のセキュリティ環境に関しては事前調査を行ったのでとくに問題視する声もありませんでした。

―――今後導入したいサービスなどはありますか?

契約書のAIチェックサービスが気になっています。しかし、業務効率化の一方で、ビギナースキルのメンバーの場合、チェックツールに頼りすぎると自分で考え抜くスキルの伸長を阻害するリスクもあると考えているので、社員の育成を考えると必ずしもメリットばかりではないと思っています。
デジタルツールの導入に関しては、効率やコスト面だけでなく、全体のバランスを見ながら検討していきたいと思っています。

Digital Workstyle College 編集部
この記事を書いた人