デジタル化の加速は成長戦略の一つ 閣議決定された「骨太の方針」とは? 

2021年6月18日、政府はいわゆる「骨太の方針」を閣議決定しました。これは、国の経済財政運営の指針となり、次年度の動きの参考になるものです。

この記事では「骨太の方針」の中で注目すべきポイントをまとめてお伝えします。

1.骨太の方針とは?

「骨太の方針」という言葉を、最近のニュースで見聞きした覚えがある人もいるのではないでしょうか。

これは、次年度の国の予算編成、税制改正、法改正などの指針となるものです。

「骨太の方針」とは通称であり、正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針 2021(※2021年。年によって異なる場合もある。)」と言います。

これは、自民党政権下では毎年6〜7月頃に発表されています。その背景には、各省庁からの概算要求前に次年度に向けた方針をまとめることで、各省庁や与党関連議員の野放図な予算要求に歯止めをかけるという狙いもあります。

「骨太の方針」でどのような施策を柱に据えているのか要点を確認することで、次年度の国の動きについて現政権がどのような方針を立てているのか、現時点において大筋で把握できるというわけです。

よくニュースで新年度などの節目に「明日から税制がこう変わる」「もうすぐこんな法改正が行われる」といった話題を見かけて、「急な発表だな」「国民の生活にとって大事な変更なのに、事前に何も知らされていなかった」といった感想を抱いたことはないでしょうか?

しかし、この「骨太の方針」の内容を公表することで、政府は「来年以降はこのように動いていくつもりです」と方向性・メッセージを国民に対して発信しているのです。

「骨太の方針」で柱に据えている施策とは、私たちの生活や企業活動にも影響を及ぼすものだと理解して、日ごろからニュースを追いかけておくことが大切です。

2.次年度の重点分野は?

それではここからは、今回閣議決定された「骨太の方針」のポイントを見ていきましょう。

その柱として据えられているのは、以下の4点です。

(1)グリーン社会の実現

我が国は「2050 年カーボンニュートラル」を宣言し、世界の脱炭素を主導、経済成長

の喚起と温暖化防止・生物多様性保全との両立を図る、という目標を掲げています。

その実現に向けて、「脱炭素推進」「再生可能エネルギー推進」「カーボンプライシングの活用」が具体的な施策として盛り込まれています。

具体的には、以下のような取り組みに重きを置く、ということです。

・洋上風力、水素、蓄電池(EV含む)など重点分野20の研究開発、設備投資を進める。

・自治体や国民の取り組みを推進、2030 年までに脱炭素先行地域を少なくとも 100 か所創

出。全国で重点対策を実施し、脱炭素ドミノを起こす。

・プラスチック資源循環を始め、循環経済への移行を推進

・カーボンプライシング(CO2を排出した企業や家庭に金銭的負担を求める)への取り組み

最近、民間企業などで「SDGs」関連の取り組みについて積極的な情報発信が見られます。国の方針を見ても、「環境」「持続可能な社会」「循環型社会」というテーマは重要視されていることが伺えます。

(2)デジタル化の加速

2021年9月1日の「デジタル庁」発足に向けて、現在着々と準備が進められています。その後5年で一気にデジタル時代の官民インフラを作り上げ、デジタル庁を核としたデジタル・ガバメントの確立、民間のDXを促す基盤整備を加速し、全ての国民にデジタル化の恩恵が行き渡る社会を構築する、という目標を掲げています。

具体的な施策として以下3点が挙げられていますが、

・デジタルガバメントの確立

・民間におけるDXの加速

・デジタル人材の育成、デジタルデバイドの解消、サイバーセキュリティ対策

これらの要点は詳しくは後述します。

(3)新たな地方創生の展開と分散型の国づくり

新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、地方への関心が高まっています。そのような社会の流れを受け、テレワーク拡大、デジタル化といった変化を後押しして地方への人の流れを生み出し、新たな地方創生を展開、東京一極集中を是正する、という考えが示されています。活力ある地方を創り、地方の所得を引き上げる、という部分にも言及されています。

具体的に挙げられている施策は以下のような点です。

・地銀などの人材仲介機能を強化、地域活性化起業人制度などと連携

・地域おこし協力隊等を推進、地方自治体の移住支援体制を強化

・地方でのテレワーク活用による「転職なき移住」を実現するため、サテライトオフィスの整備・利用促進、立地円滑化を推進

・関係人口の拡大に向けて、ふるさと納税等の地域の取り組みを後押し

・二地域居住・多拠点居住を促進 空き家・空き地バンクの拡大・活用等を推進

・中堅・中小企業・小規模事業者の生産性向上(デジタル投資など)

・観光・インバウンドの再生(IR整備含む)

・輸出を始めとした農林水産業の成長産業化、スマート農林水産業の実装加速化

・スマートシティを2025 年度までに100地域構築

・賃上げ、非正規雇用の処遇改善・正規化

(4)少子化の克服、子供を産み育てやすい社会の実現

長年の課題である少子化対策を前進させ、安心して結婚、妊娠・出産、子育てができる環境整備に取り組む旨も柱の一つに据えられています。

・結婚・出産の希望を叶え、子育てしやすい社会の実現

・子供の安心の確保のための環境づくり・児童虐待対策

3.「デジタル化の加速」に関する詳細

前項で触れた「デジタル化の加速」について、詳細は以下の通りです。

(1)デジタル・ガバメントの確立

・行政のデジタル化を強力に推進

・2022 年度末にほぼ全国民にマイナンバーカードが行き渡ることを目指す

 (健康保険証、運転免許証との一体化、スマホへの搭載)

・データの利活用 

 (医療・介護、教育、インフラ、防災に係るデータプラットフォームを早期に整備)

(2)民間におけるDXの加速

・5G整備計画を税制支援も通じて加速、地域カバー率を2023年度末に98%まで高め、ローカル5Gの開発実証等を進める

・先端半導体の製造基盤強化やサプライチェーン強靱化

・ポスト5Gの情報通信システム開発

・デジタル広告市場の透明化

・地方における中小企業も含め、非対面型ビジネスモデルへの変革や新産業モデルを創出

・企業のデジタル投資を税制で支援

・物流DXの推進

・無人自動運転等の先進MaaSをはじめとするConnected Industriesを構築

(3)デジタル人材の育成、デジタルデバイドの解消、サイバーセキュリティ対策

・デジタル人材プラットフォームを構築、地方におけるデジタル人材育成の取り組みとの連携

・全国の大学・高専・専門学校などにおいて数理・データサイエンス・AI教育の充実や、デジタル関連学部や修士・博士課程プログラムの拡充・再編を図る

・育成したデジタル人材を積極的に活用し、デジタル活用に不安のある高齢者等にオンラ

インサービスの利用方法等に関して講習会・出前講座44等の助言・相談を行うとともに、行政窓口等でのサポートに努めるなど、支援の仕組みの充実を図る

・政府の次期サイバーセキュリティ戦略を2021 年中に策定

・サイバー攻撃に対応する技術開発、人材育成、産学官連携拠点の形成を図る

4.デジタル社会の基盤がどこまで整備されるかがカギ

この記事では「骨太の方針」の中でも特に「デジタル化の加速」について詳しく述べました。

まずはこれからの5年で、データを活用したデジタル社会を形成するための基盤整備がどこまで進むかが肝となりそうです。また、高齢世代を取り残さないためにはデジタルデバイドの解消も課題になると言えるでしょう。

政府のDX推進に向けた日々の動きに関しては、当メディア内の「DX・デジタル化関連 大臣発言まとめ」という記事でも毎月定期的に発信していますので、そちらもぜひ参考にしてください。

▼DX・デジタル化関連 大臣発言まとめ
https://digitalworkstylecollege.jp/news/202105dxhatsugenmatome/

参考:骨太の方針、閣議決定 コロナ禍克服と収束後の構造改革同時進行|Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/e878e4b91a24ac0666ea9561650eac90c02d8f66

参考:骨太の方針|コトバンク
https://kotobank.jp/word/%E9%AA%A8%E5%A4%AA%E3%81%AE%E6%96%B9%E9%87%9D-631151

参考:経済財政運営と改革の基本方針 2021(仮称)(原案)  P12~
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2021/0609/shiryo_01.pdf

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