年末調整電子化に向けた、会社側従業員側の手順をそれぞれ解説

令和2年分の年末調整から、電子化(ペーパーレス化)対応となることをご存知でしょうか。
従来は、従業員ひとりひとりが控除証明書などを取り寄せて、すべて手書きで対応するしか方法がなかった年末調整の手続き。
そのペーパーレス化によって、従業員も、そして申請書類を取りまとめて検算を行う会社側も、大きな業務効率化を実現することが可能になります。

参考:年末調整手続きが電子化に対応。手続きはどう変わる
https://digitalworkstylecollege.jp/news/nenmatsutyoseitetsuduki/

そこで今回は、年末調整電子化について詳しく知りたい総務・経理担当者をはじめとするビジネスパーソンに向けて、自社内でペーパーレス化に踏み切るための手順について細かな点まで理解できるようにお伝えします。

1.年末調整電子化対応までのスケジュール

次に掲げる[図1]は、自社内で年末調整電子化に対応するためのToDoを「勤務先側の準備」「従業員側の準備」にそれぞれ分けて、スケジュール感が分かるように示したものです。

[図1]電子化までのスケジュール

参考:令和2年分からの年末調整電子化について〜スケジュール編〜
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nenmatsu/pdf/0020005-071_01.pdf

(1)勤務先側の準備

令和2年分の年末調整から電子化に対応するためには、まずはその実施方法の検討を急ぎましょう。

実施方法の検討とは、具体的には「どうやって従業員全員に控除証明書などをデータ形式で提出させればよいか?」「従業員全員が申告書をデータで作成するためにはどんなソフトを選定すればよいか?」「従業員全員から集めたデータを自社で利用している給与システムに取り込んで連携させるためにはどうしたらよいか?」といったことです。

詳しくは「2.会社側で取り組むべき準備(1)実施方法の検討・周知」の部分で後述します。

実施方法の検討の結果、結論が出たら次は税務署への届け出を急ぎましょう。
従業員から年末調整申告書をデータによって提供を受けるためには、あらかじめ所轄税務署長にその旨の承認を受けておく必要があります。

自社内で年末調整電子化に踏み切ることが具体的に決定したら、従業員側も電子化に対応すべく事前準備が必要になりますから、社内周知も早めに進めましょう。この時、従業員にはマイナンバーカードの取得を依頼しておくことが必要になります。
控除証明書データの取得の際にはマイナンバーカードを利用して、「マイナポータル」からダウンロードすると利便性が高まるためです。

従業員への周知と同時進行で、給与システムの改修も10月中までには進めておきましょう。給与システムの改修のポイントについては、「2.会社側で取り組むべき準備(2)給与システム改修の検討」の部分で後述します。

(2)従業員側の準備

従業員側で早めに対応すべきことは、マイナンバーカードの申請・取得です。紙製の個人番号カードは持っているけれど、プラスチック製でICチップの付いたマイナンバーカードはまだ申請していない、手元にない、という方もいると思います。しかし、年末調整が電子化に対応した際、保険会社などからの控除証明書データを取得する際にマイナンバーカードが必要になります。マイナンバーカードを活用して「マイナポータル」を利用することにより、一括で簡単に複数社から控除証明書データを取り寄せることが可能になります。

令和2年10月にはこの「マイナポータル連携」機能がリリースされ、同時に、国税庁ホームページで「年調ソフト」も配布が始まります。この「年調ソフト」とは、年末調整申告書の電子データを作成するためのソフトウェアで、パソコンでもスマートフォンでもどちらでも利用できます。

ただし、申告書作成ソフトウェアには民間の製品もあり、会社によってどれを使うかは異なるケースも想定されるため、詳しくは勤務先に確認をしましょう。

2.会社側で取り組むべき準備

(1)実施方法の検討・周知

次に掲げる[図2]は、年末調整電子化の際に想定されるいくつかのパターンを例示したものです。

[図2]実施方法のいくつかのパターン

参考:令和2年分からの年末調整電子化について〜実施方法検討・周知編〜
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nenmatsu/pdf/0020005-071_02.pdf

①導入方法とそれぞれのメリット

[案①]従業員に控除証明書をデータ取得させ、申告書データもソフトウェアを活用して総務・経理に電子データで提供してもらう場合

つまり、すべてのプロセスをペーパーレス化できる場合です。この場合、提出後の検算が不要になり、膨大な書類を取り扱う手間もすべて省かれます。電子化の恩恵を最大限に受けられ、利便性向上ナンバーワンとなり、理想的なケースです。

[案②]従業員に控除証明書は書面で提出させ、申告書データはソフトウェアを活用して総務・経理に電子データで提供してもらう場合

この場合、勤務先で大量の書類を保管しなければならない負担が以前と変わらず発生する点がデメリットです。

従業員側は、以前と変わらず、控除証明書を郵送で取り寄せる手間が発生します。

また、申告書データ作成の際に、控除証明書と自動でデータ連携できないため、各項目転記の負担があります。

勤務先から遠くに住んでいる場合、勤務先に控除証明書原本を郵送しなければならない手間も発生します。

ただ、従業員一人ひとりがソフトウェアを活用して申告書データを作成し、そのデータを勤務先に連携することで、総務・経理部署での検算の負担は大きく削減されます。

[案③]従業員に控除証明書データをデータで提出させ、申告書は紙に印刷して提出させる場合

勤務先側は

・検算を終えた控除額について、一人分ずつ給与システ ムに入力しなければならない。
・提出された控除申告書は7年間保存する必要があり、 保管コストが発生する。

という手間が以前通り生じます。

従業員側は

・遠隔地に勤務する従業員は、作成した書類を郵送しなければならず、時間と手間がかかる。記載誤りがあれ ば再提出が必要な場合も生じる。

という手間があります。

ただし、たとえ申告書の印刷提出であっても、その作成に専用ソフトウェアを活用することで控除額の自動計算機能などがあるため、従業員側は以前より楽になります。

また、総務・経理側で提出を取りまとめた後の検算も不要になります。

[案④]従業員に控除証明書を書面で提出させ、申告書は紙に印刷して提出させる場合

勤務先側は

・保険料控除証明書などの添付書類について、正しく転記されているか確認しなければならない。
・検算を終えた控除額について、一人分ずつ給与システ ムに入力しなければならない。
・提出された控除申告書は7年間保存する必要があり、 保管コストが発生する。

と手書きの頃と同じような負担が一部残ります。

従業側にも

・申告書データ作成の際に、控除証明書と自動でデータ連携できないため、各項目転記しなければならない。
・遠隔地に勤務する従業員は、作成した書類を郵送しな ければならず、時間と手間がかかる。記載誤りがあれば再提出が必要な場合も生じる。

といった負担が残ります。

②一部だけの電子化でもメリットはあるのか?

前述のように、「すべてのプロセスを電子化できる場合」「一部は電子化、一部は紙のまま」というパターンについてそれぞれメリット・デメリットを見てきました。

結論としては、「すべてのプロセスを電子化」が利便性向上No.1ということは言うまでもありません。

しかし、一部だけを電子化した場合でも、取りまとめ後の総務・経理の検算の負担が大きく削減されることをはじめ、メリットはあると言えます。

(2)給与システム改修の検討

次に掲げる[図3]は、年末調整電子化に向けての給与システム改修に関する確認フローチャートです。昨年まで年末調整を自社内でどのように運用していたかに応じて、A〜Dの4つのパターンに分類されます。

[図3]給与システム等改修項目確認フロー

参考:令和2年分からの年末調整電子化について〜システム改修・届出編〜
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nenmatsu/pdf/0020005-071_03.pdf

改修が必要な機能は、それぞれ以下のとおりです。

パターンA:「マイナポータル連携機能」に接続するための改修が必要

・従業員が「マイナポータル連携機能」に接続し、保険会社から控除証明書データをAPI連携で取得するための機能
・ 従業員が、取得した控除証明書データを利用して保険料控除額および住宅借入金等特別控除額を自動計算する機能
※ 現在利用しているシステムに団体(扱)保険支払情報の取込機能がない場合は、併せて開発するとより利便性が向上します。

パターンB:従業員が利用できるシステム準備が必要

・従業員が年末調整に必要な情報を入力するためのシステムなど
・ 従業員が入力する画面に、団体(扱)保険料データを表示する機能
・ 従業員が「マイナポータル連携機能」に接続し、保険会社等から控除証明書等データをAPI連携により取得するための機能
・ 従業員が、取得した控除証明書データを利用して保険料控除額および住宅借入金等特別控除額を自動計算する機能およびその他の控除申告書の作成機能
・ 従業員が提供した控除申告書データを利用して、システム上でチェックする機能

パターンC:年調ソフト等で作成したデータの取込・団体(扱)保険料をチェックするための機能

・従業員が「年調ソフト」などで作成した控除申告書等のデータを取り込み、総務・経理側で自動チェック、年税額の計算を行う機能
・ 給与システム内に、保険会社から通知された団体(扱)保険料と従業員が入力した団体(扱)保険料の額が一致しているかのチェック機能があると、勤務先における利便性がさらに向上します。
※パターンCの場合の制限事項
・ これまで事前に保険料控除申告書に印字していた団体(扱)保険の支払情報については、別途従業員に通知し、手入力させる必要があります。

パターンD:年調ソフト等で作成したデータの取込機能

従業員が、「年調ソフト」などで作成した控除申告書等のデータを取り込み、自動チェック、年税額の計算を行う機能

ここまでで述べてきた[パターンC][パターンD]については、年末調整手続電子化について最小限の開発で対応できるような構成となっています。

ただし、団体(扱)保険の支払情報について電子化できないままとなるので、より利便性が高い[パターンB]の開発・改修を行うことも検討すると良いでしょう。

(3)導入時セキュリティ面の確認

次に掲げる[図4]は、年末調整電子化対応に向けて事前に確認しておくべき、セキュリティ面でのフローチャートです。

[図4]導入時セキュリティ確認フロー

[参考]令和2年分からの年末調整電子化について〜導入時セキュリティ編〜
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nenmatsu/pdf/0020005-071_04.pdf

社内で一定のセキュリティ規定を設けている場合は、パターンA〜Gを参考に確認・整備・周知が必要です。

パターンA:年調ソフト利用・マイナポータル連携により取得

①従業員にインターネット上のアプリケーションのダウンロードを禁止している場合 

 給与担当者等が管理者権限により「年調ソフト」「マイナポータルAP(※マイナンバーカードを利用してマイナポータルへのログインや、電子申請書類への署名をする 機能を提供するためのアプリケーション)」などをダウンロードし、従業員に配付することを検討してください。「年調ソフト」は、給与の支払者の「名称」「法人番号」「所在地」をあらかじめ登録してから従業員に配付することもできます。 

② 従業員のPCがインターネットに接続していない場合

 国税庁が提供する「マイナポータル等連携機能」に接続できるよう、インターネットの設定変更を検討してください。

パターンB:年調ソフト利用・保険会社等のウェブサイトからダウンロード

①従業員にインターネット上のアプリケーションのダウンロードを禁止している場合 

給与担当者等が管理者権限により「年調ソフト」をダウンロードし、従業員に配付することを検討してください。

②従業員のPCがインターネットに接続していない・閲覧できるウェブサイトを制限している 場合

 保険会社、金融機関など、従業員が利用する控除証明書等発行主体のサイトについて閲覧可能にするよう、インターネットの設定変更を検討してください。

パターンC:年調ソフト利用・自宅等でダウンロードした控除証明書等を取込

①従業員にインターネット上のアプリケーションのダウンロードを禁止している場合 

給与担当者等が管理者権限により「年調ソフト」をダウンロードし、従業員に資源配付することを検討してください。

②私物のUSBメモリ等の使用を禁止している場合 

従業員が取得した控除証明書データをメール送信させるなど検討してください。

パターンD:自社システム利用・マイナポータル連携により取得

①従業員のPCに「マイナポータルAP」が導入されていない場合 

 給与担当者等が管理者権限を利用して「マイナポータルAP」を配付するか、従業員各自に同アプリケーションをダウンロードするよう周知しましょう。

②従業員のPCがインターネットに接続していない場合

国税庁の提供する「マイナポータル等連携機能」に接続できるよう、インターネットの設定変更が必要です。

パターンE:自社システム利用・保険会社等のウェブサイトからダウンロード

①従業員のPCがインターネットに接続していない・閲覧できるウェブサイトを制限している場合

 保険会社、金融機関など、従業員が利用する控除証明書等発行主体のサイトについて閲覧可能にするよう、インターネットの設定変更を検討してください。

パターンF:自社システム利用・自宅等でダウンロードした控除証明書等を取込

①私物のUSBメモリ等の使用を禁止している場合 

従業員が取得した控除証明書等のデータをメール送信させるなど検討してください。

パターンG:従業員が自己のパソコン・スマートフォン等で作成

セキュリティ上の問題点は特段ありませんが、総務・経理宛にメールなどで提出の際に、控除申告書データに ついては電子署名を付与するか、パスワードをかける必要があります。

3.従業員側で取り組むべき準備

(1)マイナポータル連携準備

年末調整の書類をデータで作成するなら「マイナポータル連携」が便利です。

「マイナポータル連携」とは、保険会社などからの控除証明書データを、「マイナポータル」経由で一括取得、年調ソフト等に自動入力することができる機能です。

法令上、マイナポータルから取得できる情報は、 

◯保険料控除証明書 
◯年末残高証明書 
◯住宅ローン控除証明書 

です(令和2年5月現在)。 

自身が契約している保険会社、銀行等がマイナポータル連携に対応している必要がありますので利用を検討する前に確認しましょう。

事前に準備しておくべきものは

◯マイナンバーカード
◯ICカードリーダライタ または マイナンバーカードの読み取りに対応したスマートフォン
◯控除を受けようとする生命保険の証券番号や、住宅ローンの契約番号など

です。

まず、「マイナポータル」にアクセスして利用者登録し、「民間送達サービス」の開設をします。

生計を一にする親族が契約者となっている保険料控除証明書等についてマイナポータル連携で取得するためには、当該親族についても利用者登録を行い、マイナポータル 上で代理権を設定してください。

「マイナポータル」利用者登録後、「もっとつながる」メニューから民間送達サービスを開設します。 令和2年5月現在、マイナポータルと連携している民間送達サービスには、「MyPost」と「e-私書箱」があります。

この「e-私書箱」を利用している保険会社等の場合には、インターネットの検索サイト等で「○○生命(契約している保険会社等) マイナ手続き」などと検索します。

それから、保険会社等の「マイナ手続きサイト」にアク セスし、画面の案内に従いメールアドレスの登録などを行います。

そして、マイナンバーカードをセットし、マイナンバーカードの4桁の暗証番号を入力します。 ここではマイナンバーカードに格納された電子証明書を登録するだけで、保険会社等にマイナンバーを提供するわけではありません。

次に、画面の案内に従い、証券番号等を入力します。

その後、案内に従い、「e-私書箱」と連携を行います。

以上で「マイナポータル連携」の準備は完了です。

なお、控除証明書等データが民間送達サービスに届き、マイナポータル経由で取得できるようになるには、これらの手順を実施してから数日要する場合があります(保険会社等により異なります)。

電子化の初年度だけは、少し事前準備に手間がかかりますが、一度作業を行った保険会社等については、翌年以降は作業が不要になります。

参考:令和2年分からの年末調整手続の電子化について ~マイナポータル連携準備編〜
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nenmatsu/pdf/0020005-071_07.pdf

(2)年調ソフト準備

勤務先の給与担当者から、「年末調整の書類はデータで提出してほしいので、国税庁の『年調ソフト』を 使ってください」と言われたら、国税庁ホームページから「年調ソフト」を各自、手元にダウンロードする必要があります。

このソフトウェアは、Windows、Mac、iOS、Androidに対応しており、パソコンでもスマホでもどちらでも利用可能です。

「マイナポータル連携」を利用して控除証明書等データを取得・自動入力することができます。

◯ 扶養控除等(異動)申告書(当年分)
◯ 扶養控除等(異動)申告書(翌年分)
◯ 基礎控除申告書 
◯ 配偶者控除等申告書 
◯ 所得金額調整控除申告書 
◯ 保険料控除申告書 
◯ 住宅借入金等特別控除申告書

を作成することができ、一度提出したデータを保存しておけば、来年はそのデータを取り込むことにより基本項目等が自動入力され、毎年同じ項目を手入力する手間も省けます。

参考:令和2年分からの年末調整手続の電子化について ~年調ソフト編〜
https://www.nta.go.jp/users/gensen/nenmatsu/pdf/0020005-071_06.pdf

4.完全ペーパーレス化できれば、長期的には大幅な業務効率化につながる

令和2年分年末調整の電子化対応に向けての事前準備について詳しく見てきました。

給与システムの改修、セキュリティ面の確認など、主に勤務先の総務・経理部署が中心となって早めに検討すべき事項が多いといえるでしょう。

電子化に踏み切る初年度だけは検討・確認・フロー変更・開発の手間がかかりますが、完全ペーパーレス化できたら毎年の作業コストや書類保管コストが大幅に削減されます。

ぜひ、自社でも今すぐ検討を始めてみてはいかがでしょうか。

Digital Workstyle College 編集部
この記事を書いた人