ペーパーレス化のメリット・デメリットや導入手順、成功事例について解説

働き方改革が叫ばれて久しいですが、その一歩目ともいえる施策が「ペーパーレス化」です。これまで紙で行っていた業務をペーパーレスにすることで、オフィスでしかできなかった業務がテレワーク可能になるなど多様な働き方が可能になります。しかしながら、業務が大きく変わることに抵抗があるのもまた事実。本記事では、ペーパーレス化に伴うメリットやデメリットも比較しつつ、具体的な書類や成功事例を持つ企業を紹介し、ペーパーレスについて幅広い視点から解説します。

ペーパーレスの歴史と現状

これまで、PCが初めて登場した1970年代、そしてWindows 95が発売されてインターネット普及した1990年代後半に「これからはペーパーレスの時代が来る」と言われてきました。

しかし、より多くの新たな情報に触れることで、それらを保存するための紙情報が逆に増えるという矛盾が起こっていたのです。1991年のバブル崩壊~2008年のリーマン・ショックを経て、コスト意識が企業や組織に浸透し「紙の節約」が取り上げられるようになります。PCの普及によって、紙の消費量は確かに20%弱ほど減少しました。しかし、依然として紙を使う業務は主流であり続けたのです。

しかし、ここ数年急激にペーパーレスの動きは強まってきています。それは、コストカットだけではなく、スマートフォンやタブレット端末などの登場が大きく関わっています。端末で情報を見たり、書籍を読んだりすることに抵抗がなくなってきたのです。

オフィスの面積の多くを占めながらも、紙の文書は存在してきました。紙をなくすことで最も恐れられていたのは、業務が非効率になることです。実は、オフィス用紙の生産量は、紙全体の生産量の約5%(※)にすぎず、エコ意識だけでは推進を進めることには無理がありました。どちらかというと、紙の文書を収納しているオフィスや倉庫の面積分の家賃の方が、企業にとっては大きなコスト負担であったのです。まずは、膨大な紙の文書を電子化することで、そのコストを減らすことができます。

さらに、PCの高性能化とデバイスの誕生による業務の効率化により、紙が一番効率的だった時代はもう過ぎ去りました。これからは、紙をなくした業務形態により早く順応したものが生き残る時代が来ています。ペーパーレスはオフィスのスペース削減だけでなく、働く場所を自由に選択することを可能にしました。新型コロナは、図らずもそれを実証したといえるでしょう。オフィス以外で業務を行うためには、オフィスにのみ存在する紙を主流とした業務形態を転換する必要があります。先んじてペーパーレスを導入していた企業は、出社せずに働くテレワークへの移行も容易に進み、感染リスクをより抑えた安全な働き方が可能となったのです。

行政も手続きの電子化を進め、脱ハンコを打ち出すなど、時代は変わってきています。完全に紙をなくすことは不可能かもしれませんが、できる限りはペーパーレスにするのが、今後の主流となるでしょう。

参考:柴田博仁,ペーパーレスオフィスはなぜ来ないのか?紙はどこで使われるのか? 日本画像学会誌 第56巻 第5号 (2017)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/isj/56/5/56_537/_pdf

ペーパーレスに取り組む目的とメリットデメリット

少子高齢化に伴い、すでに人手不足に悩まされている企業も出ている昨今。これまでのように、フルタイムでオフィスに常駐できる人をメインとした労働の仕方では、早晩立ちゆかなくなってしまいます。その解決方法として打ち出されたのは「働き方改革」。生産性を高めるだけでなく、それぞれの人に合った多様な働き方を取り入れることは、企業・組織にとっても喫緊の課題であるといえます。ペーパーレスは、そのための手段として注目されているのです。

(1)ペーパーレスに取り組む目的

ペーパーレスに取り組むと、それ自体が目的のようになるケースもありますが、本来であればペーパーレスは、働き方改革を実現するための手段の一つです。

その目的には以下のようなものがあります。

① 生産力を高め長時間労働を削減するため

ペーパーレスは業務効率化のために行われます。例えば稟議書や決裁書の回覧や押印など、これまで紙と人の手で処理していた作業を電子化することで、業務時間・工数の削減をはかるものです。

人的リソースにも時間にも限りがあります。これまでは長時間労働でカバーしていた無駄な作業は、結果的に従業員の疲弊につながっていました。

ペーパーレスによって業務効率化を行うことで、生産性を向上させ、多すぎた労働時間を減らすことは大きな目的の1つです。

②   多様な働き方を実現するため

コロナ禍で、オフィスへの出勤がリスクとなりテレワークを導入する企業も増えました。今後もパンデミックや自然災害などにおける事業継続への対応、オフィスにかけるコスト削減のため、在宅勤務をはじめとしたテレワークやフリーアドレスの導入は続くとみられています。

育児や介護、配偶者の転勤などによって、フルタイム出社ができなくなり退職を余儀なくされていた人材は多いです。こうした方たちをテレワークで登用する道が開けることで、多様な働き方を実現できます。それだけではありません。いち早くテレワークを実現した企業は、ダイバーシティ経営を推進する先進的な企業として優秀な人材を確保することにもつながります。

(2)ペーパーレスのメリット

① コスト削減

ペーパーレスのメリットとして第一に掲げられるのが「コスト削減」です。紙の書類を電子化することにより、以下の効果が見込めます。

・印刷する紙が減る→印刷にかかる電気代、プリンタのトナー代、紙代の削減

・保管スペースや場所がなくなる→オフィスや倉庫にかかる費用の削減、ファイルやバインダー、保管用のキャビネ費用の削減、ファイリングにかかる人件費の削減

ペーパーレスというと「紙」のコストに目が行きがちですが、むしろ家賃や人件費の削減の効果が非常に大きいのです。

② 業務効率化

①のコスト削減にも通じますが、ペーパーレスにすることにより、紙の書類を整理してファイリングするという業務がなくなります。つまりその分の業務が効率化できるのです。

さらに、紙の書類の場合は、会議やミーティングで内容を共有する場合、コピーして配布しなくてはなりません。電子データなら配布も一瞬で、複数人で閲覧・場合によっては編集も可能です。

そもそもなぜ書類をファイリングして保管するかというと、後から参照するため。いくら決まりを作って整理整頓してファイリングしていたとしても、確認したい書類をその中から手作業で探し出す手間は大変なもの。電子化していれば、一瞬で検索できます。

また、大抵の書類は法律での保管年限が過ぎたら廃棄します。この廃棄対応についても、廃棄対象の書類をピックアップし、バインダーから外して捨てる。機密情報の場合は処分費用もかかります。ペーパーレスであれば一瞬で検索して廃棄もPCと同じように行えばいいのです。

つまり、書類を整理整頓する手間、配布する手間、検索する手間、廃棄する手間の4つの段階で大幅な業務効率化、人件費の削減が見込めます。

③ テレワーク移行が容易

コロナ禍で、一気にテレワークの利用が広がったように見えますが、実際のところ書類の確認などで出社している人は多いです。

出社しなければ処理できない業務があるのは、そこに紙が介在しているから。

ペーパーレスにしておけば、いざという時のテレワークへの移行はカンタンです。2020年11月には、政府がこれまで押印が必要だった約15,000件の行政手続きのうち、不動産登記や法人登記など「実印」が必要な83件の手続きを除く、ほぼすべての手続きでハンコ(認印)を不要にする「脱ハンコ」への動きを進めています。

④ 紛失・漏洩リスクの軽減

紙の書類の場合は量が多くなりすぎると、1枚くらいなくなっていてもわかりません。

紛失や漏洩していても気がつくまでに時間がかかる場合があります。

もちろん、ペーパーレス化しただけでも同じように紛失や漏洩のリスクはあります。ただし、データを消したりコピーしたりすればログが残りますし、サーバーでバックアップを取っていれば、復元も可能です。紙の書類よりは、紛失・漏洩のリスクを軽減することができます。

⑤ SDGsの推進

いま、企業が今後も持続していくために求められているのは「どれだけ環境に配慮できるか」です。ペーパーレスは電気を使うという意見もあります。しかし、紙を消費することは、それ以上に森林破壊につながっているのです。

社会活動において、全く環境を傷つけないということはあり得ません。しかしどちらがより環境にやさしいかを見極めて、コストだけではない選択が求められています。

(3)ペーパーレスのデメリット

もちろん、ペーパーレスはメリットだけではありません。以下のようなデメリットも指摘されています。

①導入コストがかかる

ペーパーレスの導入は、長期的に見るとコスト削減になるメリットがあります。しかし、導入初期は必要なシステムをそろえたり、PCやモニタ、タブレットなどの電子機器を社員に配布するなど、準備が必要です。こうした機器があらかじめ導入されていない場合、初期コストが用意できないとペーパーレス化を見送る企業は少なくありません。

また、これまで紙だった資料を、文書スキャンしてドキュメント名を付け、適切なフォルダに保管するなどの手間もかかります。新しいシステムを社員のみならず経営層も使えるように、担当者からの研修も必要になることもあるでしょう。保管文書が膨大なところほどペーパーレス化のメリットも大きいのですが、導入コストや工数を考えると「現状維持」になりがちな要因です。

②作業効率の低下

テレワークでペーパーレスを推進する場合、社員に配布するノートPCで書類を閲覧しつつ作業は、画面スペースが狭くてやりづらく、結果的に効率を低下させてしまうことがあります。別にモニターやタブレットを用意したりしても、例えば大きなサイズの資料の場合は全体像を見渡せなかったり、量の多い資料の場合は元のページと照らし合わせて確認することができなかったりします。

Kindleのように目に優しい画面などの開発は進んでいますが、例えば校正・校閲作業などは紙に出力して行う方が、結果的には効率的だという場合も。紙の資料であれば、自分の理解のためにメモ・書き込みを行うことで、その場でも、後から資料を見直した時でも理解を助けることにつながります。

しかし、ペーパーレスでメモ書きは難しいのが現状です。

そのため、デザインや出版などのクリエイティブ業務では、ペーパーレスはなじまないという声もあります。

全ての作業において「ペーパーレスの方が楽だ」という状況になるためには、まだまだ技術開発が必要です。

そのため、ペーパーレスを一気に進めるのではなく、必要な部分から導入している企業も多いです。

③ペーパーレスの可否の見極めが難しい

まだ全ての文書において電子保存が認められていません。契約書など原本保管が必要なものも残っています。

電子帳簿保存法の対象文書のように、電子データの保存可否がはっきりわかる基準がない文書もあります。

そうなると、自社で紙の文書を廃棄して良いかどうかの判断が必要です。

結果的には「不安なので紙で保管する」となりがちな要因でもあり、どこかで管理者が線引きする必要があるでしょう。

④セキュリティリスクの心配

ペーパーレス化する企業では、クラウドサービスの利用が活発に行われています。クラウドは、自前でサーバーを用意する必要がなく、料金もサブスクリプション方式なので、初期コストを削減できるメリットが魅力です。
情報を他社に預けることになるので、サービス提供事業者のセキュリティ対策などを確認するようにしましょう。

ペーパーレスの導入手順

ペーパーレスを導入しよう!と考えたときに「まず、何から手をつければ良いのか……」と悩んでしまうのではないでしょうか。

最近では、クラウドシステムなどペーパーレス化を後押しするツールが多く出ているため、何が自社に適しているのか、どこから行うかを判断する必要があります。

導入手順についての例をあげてみますので、ぜひ参考にしてみてください。

(1)ペーパーレスを導入する部門・業務を決める

組織の人数規模にもよりますが、いきなり全ての部門や業務においてペーパーレスの実施を行うことは、かえって「紙の方が楽だった」と社員の反発を招きかねません。

まずは社内で成功事例を作るために、システムに親和性が高く、ペーパーレスに取り組みやすい部門・業務を選定しましょう。

例えば、会議資料や議事録のペーパーレス化は、真っ先に思いつく内容かも知れませんが「やはり紙じゃないと」とトップ層が思っているようでは、いくらペーパーレスを掲げても推進は難しいといえます。導入時は、管理職レベルで意識が高い部門や業務を選定することが成功のポイントです。

社内や組織内で「小さな成功」を積み重ねて、最終的に全社展開するまでに、ペーパーレスのノウハウを貯めていきます。

この次の項目で、部門や業務におけるペーパーレス対象の書類の例を挙げていますので、参考にしてみてください。

(2)ペーパーレス導入の計画、必要な環境構築

オフィスのテレワーク需要が高まっていることもあり、ペーパーレスを推進するためのシステムやスキャナなどの機器の種類も増えてきています。実際の導入にあたり、どのシステムを導入するかでその後の業務効率も変わってくるでしょう。

どのシステム・機器が自社に適しているかについて、予算も勘案して比較検討が必要です。クラウドサービスなどでは、1か月程度の無料トライアル期間を設けている場合も多いので、まずは試してみましょう。

また、一度システムを導入したからといって、ずっと使い続けなければいけないわけではありません。導入してみてより良いシステムがあれば乗り換える企業も多いです。

(3)担当者・管理者への説明・研修

ペーパーレス化によって、これまでの業務フローが変わる場合があります。具体的なツールなどの操作方法と、どのように変わるのかを担当者のみならず管理職への説明・研修を行いましょう。

また、導入当初は、これまで紙で保存してた書類をスキャンするなどの、通常フローとは異なる導入のための工数がかかります。

一過性の業務ではありますが、現場の負担なども考慮したうえで、適切な導入計画の見直しも行いましょう。

(4)ペーパーレス化の実施・検証

これまでと異なる業務は、そんなにすんなりと移行できることは少ないです。最初は思うように進まなかったり、突発的な繁忙期があったりなど、予定通りに進まないこともあるでしょう。

ある程度テスト期間を設け、アンケートやヒアリング、インタビューで問題点などを洗い出して解消した上で、他部門・業務への展開に向けて検証を行うことが望ましいです。

(5)他部門・業種への波及

(1)~(4)の段階で得られた成果とノウハウを元に、業務におけるペーパーレスの他部門・業種への展開を行います。社内での文書保存年限規定についても、ペーパーレス化の推進に伴い、改訂を適宜行いましょう。

業務ごとのペーパーレス対象書類と保管が必要な書類

ペーパーレス推進のためには「紙を使わない」仕組みを作り上げる必要があります。そこでボトルネックとなるのが、各部門で「これは紙じゃなきゃ」とされている書類です。紙の書類があると入力やファイリングなどの手作業が必ず発生します。それぞれの部門において紙で処理されている書類を改めて見直し、デジタル化できないかを考えてみましょう。

(1)総務部門におけるペーパーレス対象書類

社内の環境整備を主に行っている総務部は、社内全部門と社外対応が多く、書類が多い部門です。

まずは部門内での紙のやりとりを減らすことからはじめる必要があります。

<主な書類>
・来客の受付管理
・リース契約書
・ファシリティ管理・固定資産管理
・オフィス備品の購入管理

(2)法務部門におけるペーパーレス対象書類

法務部門では、過去の判例調査や各種契約書の管理を行っているため、どうしても全面的にペーパーレスになりにくい環境があります。

しかし、リーガルリサーチサービスも本格化してきており、必ずしも紙の書面での確認をしなくてはならないものも増えてきています。会議資料などの社内文書からのペーパーレス化に取り組むことが必要でしょう。

<主な書類>
・各種契約書管理
・社内コンプライアンスマニュアルなどの資料
・特許や商標出願などにまつわる知的財産資料・法律書関係

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(3)人事部門におけるペーパーレス対象書類

人事部門は、社会保険や源泉徴収など社外への申請は、厚労省や税務署などにより電子化が進められていることと、勤怠管理・給与計算などについても、広くシステムが導入されるようになってきていることから、実はペーパーレスに取り組みやすい部門です。

労働者派遣契約においても電子化が解禁されており、ますますペーパーレスの流れが加速する分野であるといえます。

<主な書類>
・人事規定
・入社
・退職時の手続き書類
・社会保険手続書類
・雇用や就業にまつわる規定
・社内申請、承認、有給休暇など勤怠における申請や管理

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(4)経理部門におけるペーパーレス対象書類

経理業務は、電子帳簿保存法などの整備により、従来よりぐっとペーパーレスの実現に近づきました。まずは社内規定や、経費精算などにまつわる書類のペーパーレス化(請求書や証憑をデータ化するなど)から取り組み、全社展開時には、各部門でのスキャニングを取り入れるようにすることで、より業務効率化に繋げることができるでしょう。

<主な書類>
・経理規定
・見積書
・請求書
・社内監査関連書類
・予算管理書類
・経費精算

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経理業務のペーパーレス化を進めるポイント
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(5)営業部門におけるペーパーレス対象書類

営業部門では、その営業形態や取引先の業種によって、ペーパーレスの難易度が変わってくるでしょう。取引先の方がむしろ先進的でペーパーレス化が進んでいるようであればそれに合わせていけば良いのですが、どちらかというと逆のパターンの方がまだ多いのではないでしょうか。

コロナ禍で、対面営業中心の営業手法は大きな見直しを迫られています。営業先とのビデオ会議システムでの面談などのテレワーク推進を進めたり、オンラインでの展示会システム(【2020年版】オンライン展示会プラットフォーム6つを比較 )など、ペーパーレス以外でも、業務効率化・営業推進を図ることができる施策を取り入れることも喫緊の課題です。

<主な書類>
・各種契約書類
・受発注業務
・契約条件通知
・発注関係書類

(6)製造部門におけるペーパーレス対象書類

製造部門は、これまでなかなかペーパーレスが進みづらかった状況にありました。

しかし、工場や倉庫のタイムカードや入退室管理などは、勤怠管理システムの導入に伴い、名前と時間を記述するような紙の台帳は廃止する企業が増えています。

まずは、工場内で行われている管理事項からペーパーレス化を行う方がスムーズでしょう。

また、機械操作などのオペレーションについても、マニュアルを電子化することで、ペーパーレスを図ることが可能です。

<主な書類>
・システムなどの資産管理
・担当者の入退室管理
・タイムカード
・在庫管理
・オペレーションマニュアル

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主なペーパーレスに関連する法律

企業や組織で作成・管理する文書には、法律によって紙での作成・保管が義務づけられているものがあります。データ保存に関しても、一律にスキャンして保存すれば良いというわけではありません。つまり、ペーパーレスだからといって全ての文書を電子化してしまうと、文書の作成保管義務違反となってしまうリスクがあるのです。

主なペーパーレスに関連する法律を確認し、それぞれの要件に沿った手続きをとって電子化を進めていきましょう。Digital Workstyle College内の関連記事もご参照ください。

(1)電子帳簿保存法

電子帳簿保存法とは、その名の通り、帳簿を電子化するための法律。国税関係の帳簿類や証憑類の全部、または一部を電子データで保存することを認めています。

電子データの保存法は、具体的に以下の3種類です。

・電磁的記録による保存
各種書類をPCで作成し、サーバーやDVD、CDなどに保存

・COMによる保存
各種書類をPCで作成し、COM(電子計算機出力マイクロフィルム)によって保存

・スキャナによる保存
紙の書類をスキャンしてデータに変換して保存

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・令和2年10月1日「電子帳簿保存法」改正!正しく知ってバックオフィスを効率化しよう
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(2)e-文書法

e-文書法とは、2005年4月に施行された
「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」
「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」という2つの法律の通称です。

従来は法律によって紙での保存が義務付けられていた文書を、電子データで保存することを認めています。医療関係のカルテや、人事関連の書類などが含まれ、適用要件には、管轄の各府庁が定めています。

【関連記事】
・請求書の電子化、法的根拠や注意点も解説
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(3)電子署名法

「本人による電子署名が行われている」電子署名が、これまでの手書きの署名や押印と同等に通用することを定めた法律です。「そうはいっても書類はやはり署名+印鑑」という見方が大勢でしたが、コロナ禍により出社リスクとともに、不特定多数の人が書類を手にすることに寄る感染リスクを防止するため、行政手続きにおける「認印全廃」で脱ハンコの流れが加速しました。

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・電子サインとは?~電子署名との違いを比較しながら解説~
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・電子署名と電子サインとeシールの違い
https://digitalworkstylecollege.jp/news/explain-the-difference/

(4)個人情報保護法

正式名称は「個人情報の保護に関する法律」

電子化を行うことで、人事データなどの個人情報が第三者に提供・開示されたりすることがないよう、その取り扱いなどについて定めた法律です。

【関連記事】
・10分で分かる個人情報保護法の基礎
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ペーパーレス成功事例

実際に「ペーパーレス」を推進することで、業務効率化や顧客満足度向上などにつながった成功事例を見ていきましょう。

(1)自治体におけるペーパーレス成功事例・福岡市

自治体におけるペーパーレス成功事例としては「ノンストップ行政の実現」を掲げる福岡市があげられます。

福岡市は移住先として人気を集める都市。人口減とは無縁のように見えますが、2035年をピークに人口減に転じると予想されています。将来的な高齢化に備え、DXによるスマート行政を推進しているところです。

なかでもペーパーレスへの取り組みとしては、令和2年9月末までに行政手続きにまつわる約3800種類の書面を「ハンコレス」にしたことがあげられます。また、LINEで粗大ゴミ受付と処理手数料の支払ができる仕組みを取り入れました。福岡市では従来から夜間のゴミ収集サービスが「非常に便利」として住民に好評を得ていますが、それをさらに進化させた形です。

DX推進課を設置し、広く民間からも人材を募る福岡市。今後もその取り組みには注目です。

詳しい事例内容はこちらの記事もご確認ください。

「目指すはノンストップ行政の実現」福岡市におけるデジタル化の事例
https://digitalworkstylecollege.jp/report/fukuokacitydx/

(2)中小企業におけるペーパーレス成功事例

中小企業は、トップダウンで業務を刷新しやすいことから、実はペーパーレスなどの導入がしやすい組織体です。

J「全国中小企業クラウド実践大賞2020」より、クラウド環境の構築に先立ってペーパーレスを導入した企業の成功事例をご紹介しましょう。

①税理士法人マッチポイント

高齢化が進む税理士業界において、クラウドシステムの積極的な導入による働き方改革を行いました。事務所の一角に「ここにしか紙の資料は置かない」というスペースを作り、事務所に到着した書類は、すぐにPDFに変換し、お客様に返却というフローですべての書類をPDF化しています。社員はコロナ禍でもスムーズに在宅勤務へ移行し、営業活動もZoomなどのビデオ会議システムで全国から集客。ペーパーレスに伴う新しい働き方のヒントが詰まっています。

参考:税理士法人マッチポイントの働き方改革
https://cloudinitiative.jp/sapporo/matchpoints

② 東北コピー販売株式会社

ペーパーレスとは相反するともいえそうなコピー機販売会社が「ドキュメントカンパニー」から脱すし、紙文化を変えた事例。脱ハンコへのルール化も整備し、社内決済でもほぼハンコを使わない環境を実現しています。コストの見える化から社内の問題や課題を洗い出し、「コピー機というハードありきの業務改善が、失敗の原因じゃないか」と仮説を立て、紙文化からの脱却を図りました。

参考:東北コピー株式会社「クラウドで進化し続ける私たちの仕事」
https://cloudinitiative.jp/koriyama/tohokucopysale

③ 株式会社 WORK SMILE LABO

パート社員の退職で業務が回らなくなると危惧した経営者が、テレワークの導入を決断。テレワークの業務整備のために行った各種施策でペーパーレスも実現。現在は企業におけるICTコンサルティングを行っています。最新のツールについては社内で試用した上で使いやすいものを顧客に勧めており、情報漏洩などのセキュリティについてもしっかりと考察。

2016年「テレワーク先駆者100選」、第21回 テレワーク推進賞受賞など、中小企業におけるテレワークの先駆者として多くの受賞を果たしています。

参考:株式会社 WORK SMILE LABO「中小企業は今こそクラウド活用で働き方改革!」
https://cloudinitiative.jp/okayama/wakusuma

(3)大手企業におけるペーパーレス成功事例

総務省の「10のワークプレイス改革の取組」より、株式会社野村総合研究所の「ノンペーパーに関する取組事例」を見てみましょう。

業務上作成する紙の資料等が机上に山積みとなり、キャビネットは書類で溢れるような状態。社員の多くは非常に多くの紙を使用することが日常化し、紙の使用量に無頓着となっていた状況から「紙にとらわれない働き方」を構築した事例です。

まずは身の回りの紙の整理整頓と書類の破棄からはじめ、社員へのノートPC配布を行っています。さらにコピー機をICカード認証として個人ごとの印刷枚数・失敗管理など、大企業ならではの管理方法も取り入れました。

会議資料の電子化とともに、ノートPCによる議事録のその場での作成と共有、電子データのフォルダ体系の整備による管理方法の統一も行っています。

特筆すべきは、組織ならではの問題、つまり現場で力を持った人が共感しないと取組を実行することが困難であることを最初から看過しているところです。

・社長や本部長からの激励
・取組を行っていない社員に他の会社やモデル本部を見せることで、現場同士を比較
・各現場で一目置かれているベテランの社員を推進委員に選出する

など、実効性のある工夫が見られます。

人数の多い大企業は、まずはオフィス内での紙の配布をやめることだけでも、机の引き出しやキャビネットのスペースを減らすことが可能です。省スペースもでき、在宅勤務やフリーアドレスへの移行など、オフィスの大幅なコストカットにつながるでしょう。

参考: (巻末)「10のワークプレイス改革の取組」(詳細版)
https://www.google.com/url?q=https://www.soumu.go.jp/main_content/000152619.pdf

ペーパーレスに関する助成金や補助金は?

ペーパーレス導入に踏み切りたい企業に向けて、資金面で後押ししてくれるのが助成金・補助金です。コロナ禍においては、IT導入補助金、デジタル化応援隊事業、働き方改革推進支援助成金など様々な補助金や助成金が設けられました。ペーパーレスに必要な機器の購入費やリース費用、ソフトウェアなどの経費に活用できる場合があります。

経済産業省は、2020年からは補助金の電子申請システム「jGrants(ジェイグランツ)」を整備。「GビズIDプライムアカウント」を取得して電子申請することで、これまで必要だった大量の書類もペーパレスとなりました。

補助金や助成金については、経済産業省が支援するものは以下から検索できます。

・jGrants 補助金一覧 https://jgrants.go.jp/index.php/subsidy 

・ミラサポplus https://mirasapo-plus.go.jp/

ただし検索は「補助金名」のみなので、「IT」や「テレワーク」「働き方」など、ペーパーレスが絡むであろう補助金名で検索してください。補助金・助成金については、中小企業診断士や行政書士の方のサイトを見てみるのも一つの手です。

また、地方自治体でも独自に支援を行っている場合もあります。事業所の所属する都道府県・市区町村のサイトもまめにチェックしておくようにしましょう。

Digital Workstyle College 編集部
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