発明を保護し、独占的に実施できる「特許出願」の手続きとは?

産業の発展に寄与するような技術を何らか新規に発明した場合、日本国内では「特許法」で保護される場合があります。

「特許」を取得することで、後発でその発明を模倣する他者に対して差し止めや、損害賠償を請求でき、自分が生み出した発明を独占的に実施することができます。

つまり、何らか独自の技術を保有している人・会社は「特許出願」をすることでビジネス上の大きなメリットを受けられる場合があります。

しかし特許出願から登録までには、さまざまな要件が存在します。

そこでこの記事では我が国における「特許」について、どんなものが保護対象なのかなど、そのあらましを理解できるよう解説します。

1.特許とは、発明を保護するもの

特許とは、「発明」を保護する制度のことです。

特許法の条文を見ると、次のように述べられています。

発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与する
(特許法第一条)

特許法|e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000121

ここで言う「発明」とは、具体的にどのようなものを指すのでしょうか?当てはまるもの、当てはまらないもの、その考え方について具体例も挙げながら見ていきましょう。

(1)「発明」に当てはまる要件とは?

  

①自然法則を利用した発明であること

特許法上の「発明」に当てはまるかどうかのポイントは、課題に対する解決手段が自然法則を利用しているかどうかです。

「エネルギー保存の法則」や「万有引力の法則」といった自然法則それ自体、数学上の公式、ゲームのルールなど自然法則を利用していないもの(人為的取り決め)、エネルギーの供給を受けずに仕事をし続ける機械など自然法則に反するものは、特許法上の「発明」には該当しません。

②技術的思想であること

一定の目的を達成するための具体的手段であり、他人に伝達できる客観性が必要です。

フォークボールの投球方法など個人の技能によるものや、絵画や彫刻などの美的創作物、

機械の操作方法についてのマニュアルなど、単なる情報の提示は技術的思想に該当せず、特許法上の「発明」には該当しません。

③創作であること

「発明」は、創作されたものでなければなりません。

天然物の単なる発見などは、特許法上の「発明」になりません。

しかし天然物から人為的に分離・精製した化学物質は「発明」に該当します。

④高度のものであること

わが国では、「特許」のほかに「実用新案」というものがあります。

日用品や玩具のような分野では、ちょっとした工夫を加えただけでヒット商品になるようなものがあります。このような必ずしも技術的に高度ではない小発明ともいうべき「考案」を保護するために設けられているのが実用新案制度です。

そのため、主に「実用新案法」の考案と区別するため、「特許」に関しては「技術的に高度のもの」という要件も存在します。

(2)特許を受けられる「発明」とは?

また、前述の①〜④を満たす「発明」が生まれたからと言って、必ずしも「特許」を受けることができるとは限りません。さらに、特許法で定める「特許を受けることができる発明」の要件を満たす必要があります。

①産業上利用することができるかどうか

第一に、産業として利用することができなければなりません。

ただ単に学術的・実験的にしか利用することができない発明は「産業の発達」を図るという特許法の目的からして、保護することが適当ではないからです。

なお、ここで言う「産業」とは、工業、鉱業、農業などの生産業だけでなく、サービス業や運輸業など生産を伴わないものも含めて考えます。

②新しいものであるかどうか(新規性)

特許を受けることができる「発明」は、今までにない「新しいもの」でなければなりませ

ん。これを「新規性」と言います。

特許法では、「新規性」を認めない範囲を定めており、次に該当する場合は特許を受けることができません。

① 特許出願前に日本国内または外国において公然と知られた発明

  例:テレビで放映、発表

② 特許出願前に日本国内または外国において公然と実施をされた発明

  例:店で販売、製造工程における不特定者見学

③ 特許出願前に日本国内または外国において、頒布された刊行物に記載された発明や電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明

  例:日本国内又は外国において公表された特許公報、研究論文、書籍、CD-ROMなどに掲載、インターネット上で公開

「新規性」があるかどうかは、出願の時点で判断されます。

これは出願した日だけでなく、時・分も問題となります。ある発明を午後に出願しても、その日の午前中に行われた学会で他の研究者によって同じ発明が発表されていた場合には「新規性」は失われてしまいます。

そして、「新規性」の判断基準は日本国内のみならず、外国にも及びます。

既に知られている発明だとして拒絶される特許出願が少なくありませんので、出願をするときには、「新規性」を十分に確認しましょう。

既に存在する特許は、「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」というサイトから無料で確認できます。

▼特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)
https://www.jpo.go.jp/support/startup/tokkyo_search.html

③容易に思いつくものでないかどうか(進歩性)

例えば、既に知られている発明を少し改良しただけの発明のように、誰でも容易にできる発明については特許を受けることができません。

(例)「椅子の移動をスムーズにする」キャスターの技術を

   「机の移動をスムーズにする」キャスターの技術に応用して特許出願

→実在する発明(技術)の一部の置き換えとして「進歩性」がないと判断される可能性あり

「既にある発明の一部を置き換えたに過ぎないもの」「既に知られている発明を寄せ集めたに過ぎないもの」などは審査に通らない可能性がある、ということです。

④公序良俗等を害しないか

公序良俗等を害するような発明は、たとえ産業として利用することができたり、新しいものであったり、容易に考え出すことができないものであっても、特許を受けることができません。

(例)遺伝子操作により得られたヒト自体など

[参考]発明・工夫と特許の国|経済産業省北海道経済産業局
https://www.hkd.meti.go.jp/hokig/student/h06/index.html

2020年度知的財産権制度入門テキスト|経済産業省 特許庁
https://www.jpo.go.jp/news/shinchaku/event/seminer/text/document/2020_nyumon/1_2_1.pdf

発明の要件|奈良教育大学
https://www.nara-edu.ac.jp/ADMIN/LAI/hatumei.htm

2.特許取得するメリットと、権利の帰属

特許権を取得することで、発明の実施(生産、使用、販売など)を独占でき、権利侵害者(後発で模倣するなど)に対して差し止めや、損害賠償請求などの権利を行使できるようになります。

この権利は、発明者に帰属します。

発明者が未成年である場合、本人に権利はありますが、行為能力はありませんので親権者や法定代理人が出願の手続きなどを行うことになります。

また、会社に属している人が職務の中で発明を行うことを「職務発明」と言います。この場合、特許権の主張・行使は従業員と会社側のどちらに属するのか、予め社内で取り決めを整備しておく必要があります。特に取り決めがない場合には、特許権は従業員(発明者)に属することになります。

3.特許取得までの手続き

以下に掲げるフロー図は、特許取得までの流れを示したものです。

[出典]初めてだったらここを読む~特許出願のいろは~ | 経済産業省 特許庁
https://www.jpo.go.jp/system/basic/patent/index.html#01

出願後、様式のチェック(方式審査)と、特許審査官による審査(実体審査)が行われ、登録できない理由がなかったものだけが特許査定を受けることができます。

出願や登録等する際に、所定の料金の納付が必要になります。

また、原則として出願日から1年6ヶ月経過後、出願内容が一般に公開されます(出願公開)。

このようなプロセスを経て、「設定登録」に至ると特許権の発生に至ります。

また、出願方式には「書面で提出」「オンライン」のいずれかを選べます。

(1)書面で提出する場合

①所定の様式をWebサイトからダウンロードして、登録願書類を作成

②郵便局などで「特許印紙」を買って貼り付け

 ※「収入印紙」とは別物です。

③特許庁窓口へ提出するか、郵送する

④手数料を納付

書面提出の場合、「電子化手数料」がかかります。1,200円+(700円×書面のページ数)かかりますので、出願書類のページ数が多い場合にはオンライン申請がおすすめです。

(2)オンライン申請する場合

特許庁の「電子出願ソフトサポートサイト」にアクセスし、マイナンバーカードとICカードリーダーを活用することでオンライン申請ができます。

また、民間のオンラインサービスで特許庁へのオンライン申請に対応しているものもいくつかあります。

例えば、届出~出願~権利消滅までの工程を、年金の支払まで含めて一元管理してくれるソフトウェアなどが見られ、煩雑な特許申請・管理の工程を効率的にひとまとめにしてくれます。

民間のオンライン商標登録サービス比較については、当メディアの過去記事でもご紹介していますので、こちらもご参考ください。

▼【2020年】特許・知的財産管理システム5選を比較|Digital Workstyle College
https://digitalworkstylecollege.jp/service/patentmanagement/

4.特許取得の費用と期間

特許の権利期間は、出願から20年です。

また、出願しただけでは審査は始まりません。出願してから3年以内に「出願審査請求書」を特許庁に送付して審査請求を行うと、出願は審査の順番待ちに入ります。審査請求をしてから、審査官からの何らかの通知が行われるまでの平均期間は、9.5か月(※2019年時点での参考値)です。

また、「出願料」「出願審査請求料」「特許料」がそれぞれ掛かります。

<一例 国内通常出願 1件あたり分>

・出願料:14,000円

・出願審査請求料:142,000円

・特許料:6,900円(初期3年分)

詳しくは特許庁Webサイト内の「手続料金計算システム 国内出願に関する料金」というシミュレーターで計算できます。

▼手続料金計算システム 国内出願に関する料金
https://www.jpo.go.jp/system/process/tesuryo/jidou-keisan/kokunai.html

[参考]初めてだったらここを読む~特許出願のいろは~ | 経済産業省 特許庁
https://www.jpo.go.jp/system/basic/patent/index.html#01

5.発明を独占的に実施できることが最大のメリット

この記事では、日本国内における「特許制度」のあらましについて述べてきました。

出願・審査など一連の手続きがやや煩雑で、手数料や特許料も少なからず掛かるものですが、一度権利を取得すればその後、自身の発明を独占的に行使できることは大きなメリットであり、発明者の信頼を担保したり、大きなビジネス上の利益を獲得することにつながります。

また、個人的な発明ではなく、会社の従業員が発明を行うケースでは、その権利とは従業員と会社側のどちらに帰属するのか、取り決めをしっかりと整備しておくことも重要です。

煩雑な特許出願〜その後の管理をアシストしてくれるソフトウェアなどもありますので、これから特許出願を考える人はそのような製品もうまく活用してみましょう。

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