契約書は「信書」に該当 契約書送付の際に留意すべきポイントとは?電子化の場合も解説

日頃の業務の中で、契約書の取り扱いが多いビジネスパーソンもいることでしょう。

パソコンで文書を作成し、相手方に郵送する、メール添付で送付する、あるいは電子契約システムを使うなど、何気なくやり取りしている人も多いかもしれません。

そもそも契約書とは「信書」に該当することをご存じでしょうか。

この記事では、「信書」とは何か、送付の際に注意すべき点、電子契約の場合はどう考えたら良いのか、といった切り口で解説していきます。

1.契約書の送り方

(1)契約書は「信書」である

契約書とは、そもそも「信書」に該当するものです。「信書」と「文書」は違います。

どう違うのでしょうか?

①信書とは

「信書」とは、郵便法で以下のように定義されています。

特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書

郵便法 第四条 第二項 | e-Gov法令検索
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000165

「特定の受取人」とは?:

差出人がその意思の表示または事実の通知を受ける者として、特に定めた者のこと。

法人や団体・組合なども該当。

(例:○○様、△△会員の皆様、□□購読者の皆様、○○大学卒業生の皆様など)

「意思を表示し、または事実を通知する」とは?:

差出人の考えや思いを表し、または現実に起こり、もしくは存在する事柄などの事実を伝えること。

(例:契約満了の通知に併せた契約継続の案内、車検満了の通知に併せた車検割引の案内、

案内、診療報酬明細書等の送付など)

つまり契約書など、特定の受取人に宛てて差し出し、何らかの意思を伝えるための文書は「信書」に該当します。

②文書とは

文字、記号、符号など、人の知覚によって認識できる情報が記載された紙、その他、物理的に形あるもの。

③「電磁的記録物」は「文書」でも「信書」でもない

DVD、USBメモリなどに電子データとして記録されたものは、人の知覚によって認識することができないので「文書」には該当せず、「信書」にも該当しません。

(2)「信書」「文書」の定義が存在する理由とは

なぜこのように「信書」「文書」の定義が法律で分けられているのでしょうか。それには、2つの目的があります。

①基本的通信手段の確保

「信書」の送達は、国民の基本的通信手段です。

その役務を全国にわたり、なるべく安い料金で公平に提供し、公共の福祉を増進する観点から、法律で定義し、その提供の確保を図っているのです。

②憲法上保障された、通信の秘密の確保

日本国憲法では、表現の自由の確保、およびプライバシー保護の観点から、基本的人権として「検閲の禁止」と「通信の秘密」の保護を明記しています。

憲法の定めに合わせる形で、郵便法および信書便法においても、「検閲の禁止」と「信書の秘密」の保護を規定しています。

(3)つまり「信書」のポイントとは?

つまり「信書」のポイントとは、差出人の考えや思い、事実を相手方に正しく伝達することにあります。

そのためには内容の改ざん・漏洩があってはなりません。さらに、差出人も受取手も本人であることを証明できなければなりません。

参考:相談事例からみた 信書のガイドライン |総務省
https://www.soumu.go.jp/main_content/000256700.pdf

2.契約書を郵送する場合

(1)信書を送れるサービスとは?

現在、信書を送ることができるのは、「日本郵便株式会社」と「特定信書便事業者」だけです。

原則、総務大臣の許可を得ていない民間事業者は、信書の送達ができません。

日本郵便のサービスのうち、

・手紙

・はがき

・レターパック

で「信書」の送達が可能です。

郵便局から出す手紙・はがき・レターパックに収まらないような大型のもの、厚みのある信書など、特殊な形状・重量のものを出したい場合には「特定信書便事業者」を利用することになります。

「特定信書便事業者」については、令和3年4月1日現在で日本全国で567社の事業者が許可を受けて営業しています。

▼信書便事業者一覧(令和3年4月1日現在)|総務省
https://www.soumu.go.jp/yusei/tokutei_g.html

出典:信書の定義と事業の概要|総務省
https://www.soumu.go.jp/main_content/000515148.pdf

(2)宅配便やメール便で送ってはいけない

「宅配便」「メール便」は「荷物」に該当し、「信書」ではありません。

よって、契約書を宅配便やメール便で送ってはいけません。

参考:信書の定義と信書便事業の概要|総務省
https://www.soumu.go.jp/main_content/000515148.pdf

(3)郵送する際の留意点

以下、契約書を郵送する場合の留意点を解説します。

①封筒に必ず「親展」と書く必要はある?

封筒に必ず「親展」と書く必要はありません。信書に該当するか否かは、文書の内容次第(特定の相手方に意思・事実を伝達すること)で決まるからです。

②一度受け付けた契約書を、会社内の他拠点・他部署へ移送する場合も信書扱いになる?

顧客・取引先の意思・事実が会社に到達すれば信書の送達は完了です。例えば最初に受け取った支店などで受付処理を済ませていれば、その時点で信書の送達は完了しています。よって、当該契約書やその写しを社内の他拠点に送付する場合は、信書の送達には該当しません。

ただし、受け付けた契約書について、「本社で審査・承認をしてほしい」「取引先に代金を支払ってほしい」といった、支店などの意思が表示されたものを社内拠点間で移送する場合は、信書の送達に該当します。

参考:「信書に該当する文書に関する指針」Q&A集|総務省
https://www.soumu.go.jp/yusei/111117_01.html

3.電子契約システムなどを使って送る場合

契約書は信書であるという観点から、内容の改ざん・漏洩があってはならないし、差出人・受取人ともに本人であることを公的に証明できなければなりません。

その観点から、昨今の「メール送付」「クラウド型電子契約システム」利用に関する金融庁の研究会・審議会での公式見解をお伝えします。

(1)電子メールで契約書を送付する場合

“[引用]

メールで契約書を送付するという形式も想定されうる。

事業者がメールを送る際にS/MIMEを使うことで、メールを開けると誰からのメールか分かるようにすることも可能であり、なりすましも減るのではないか

第2回「書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」議事|金融庁
https://www.fsa.go.jp/singi/shomen_oin/gijigaiyou/20200622.html

ここで言及されている「S/MIME(エスマイム)」とは、電子メールに電子署名を付し、同時に暗号化する技術です。送信者と受信者側との両方が「S/MIME」に対応する電子メールソフトを使用している必要があります。OutlookやiPhone・iPadのメールソフトなど多くのメールソフトが対応しています。送信者の身元を証明し、なりすましの防止、そしてメールの暗号化で、第三者による盗み見を防止しメールの改ざんを検知します。主にフィッシング詐欺対策として利用されている技術です。

参考:S/MIMEとは?メールへの電子署名と暗号化の仕組み|GlobalSign by GMO
https://jp.globalsign.com/service/clientcert/about_smime.html

(2)クラウド型電子契約システム利用の場合

電子契約の基本的な仕組みとしては、契約の一方当事者が締結したい契約書の電子ファイルをアップロードし、契約相手方のメールアドレスを指定、すると不正アクセス困難な一意のURLを生成して指定のメールアドレスに送り、相手方がそのURLから契約書等にアクセスして内容を確認し同意することにより、プラットフォームが契約当事者の指図に基づいて電子ファイルに電子署名を付与し、改ざんされないよう証拠化するというもの。特に契約相手方の本人性を慎重に確認したい契約については、別途アクセスコードを設定することも可能。
(中略)
金融機関等向けの内部統制機能を強化したプランも別途存在する。
(中略) 
法的な論点としては、民法の契約方式自由の原則によって、口頭でもFAXでも契約は成立し得るので、クラウド型電子契約でも当然有効。民訴法との関係でも電子データは準文書として裁判での提出が認められている。
 (中略)
クラウド型電子契約の最大の特徴は、プラットフォーム事業者の電子証明書を用い、事業者が契約当事者双方の指図に基づいて電子署名を付与するので、電子契約の導入企業だけでなく、その契約相手方も事前に電子証明書の確保の必要がない、という点にある。この点が、従来のローカル署名型やリモート署名型と呼ばれる方式との違いである。従来は、仮に取引先が1万社あれば、電子契約を導入するためにその1万社に電子証明書の準備負担を依頼しなければならなかった。この点、クラウド型電子契約は、プラットフォーム事業者の電子証明書を用い、事業者が契約当事者双方の指図に基づいて電子署名を付与するので、こうした事前準備・負担が両契約当事者に発生しないのがメリットである
(中略)
送信側としては、権限者が同意したものでなければ先方に送信できないようにする等の設定が可能。受信側としては決裁者のメールアドレスを事前にヒアリングしておき確実に決裁者のもとに送ることや、まず担当者に送られた場合でも、担当者から決裁者への転送の履歴を追えるように設定可能。
(中略)
相手方のメールアドレスが本当に本人なのかという点に関しては、銀行側(※注1)で本人確認をしていただくものとの認識。例えば、今までのように印鑑を用いて電子契約に用いるメールアドレスを確認する、運転免許証等を添付して本人確認するといった方法が考えられる”

第2回「書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」議事|金融庁
https://www.fsa.go.jp/singi/shomen_oin/gijigaiyou/20200622.html

(※注1):この研究会・審議会は「金融業界における書面・押印・対面手続の見直しに向けた検討会」であるため、「差出人=銀行」と言及されている。

上記発言の要旨として、

・クラウド型電子署名は法的に有効

・電子署名を付すことで、送信者側・受信者側の本人確認ができる

・不正アクセス・改ざんは困難な仕組みになっている

・受信者側のメールアドレスの真正性については、(例えば金融機関でのクラウド型電子契約導入であれば)窓口で本人確認のプロセスを挟むなどすると良い

と言及されており、クラウド型電子契約システムは法的に有効、つまり契約書を送受信する手段として郵送以外にも有効な手段であるという見解が伺えます。

4.国の方針転換で「押印・書面の廃止」が急速に進んでいる

令和2年6月、内閣府、経産省、法務省が「押印廃止に向けてのQ&A」という文書を公表しました。これは、民間における押印慣行がテレワークの阻害要因となっていることを課題とし、その見直しに向けた自律的な取り組みが進むために発出されたものです。

この文書の中には「押印文書は押印のみによって真正性が担保されるものではない」「押印の効果は限定的である」「押印の代替としてはメールアドレスの履歴を追うこと等も可能」といったことが書かれています。

また別途、現行法のうち「電子署名法」の解釈を拡大することも、内閣府規制改革推進室で検討されているようです。

その後、河野規制改革相は定例記者会見において地方自治体のクラウド型電子契約サービス利用解禁、という点にも言及しました。

昨今の国の方針転換によって、「脱・はんこ」「脱・紙文化」推奨が、かなり進んできたと言えます。

しかし実際のところ、日々の業務の現場ではまだまだ押印・書面廃止が進んでいない会社も少なくないでしょう。

日頃からはんこ・紙の使用量が多い会社ほど、ペーパーレス化・電子化することで大幅な業務効率化やメリットを実感できるはずです。

今や、国や地方自治体も押印・書面廃止に向けてかつてないスピードで取り組みを進めています。

最新の法解釈や省庁の公式見解も理解しながら、ぜひ自社でも業務効率化につなげていきましょう。

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