人材派遣業ペーパーレス化事例を紹介-成功事例から導入のヒントを読み解く-

労働者の派遣を行っている人材派遣業は、各種契約書をはじめとする書類の取り交わしや、それに関連する人数が多く、書面・押印のフローが煩雑だという課題を抱えている会社も多いものです。

そこへ「電子契約システム」を活用することで、ワークフロー改善・業務効率化・時短など大きなメリットを受けられる業種だと言えます。

この記事では、人材派遣業務のペーパーレス化・電子化の成功事例を紹介し、これから電子化に踏み切りたい企業に向けてヒントを読み解きます。

1.労働者派遣契約の電子化が解禁

企業に対して労働者派遣を行っている人材派遣会社では、契約書をはじめ、日々、書類のやりとりが数多く発生するものです。派遣人数が多ければ多いほど、その書類の量は膨大になります。

そんな中、2021年1月1日に法改正が施行され、労働者派遣契約の「電子化」が解禁されました。

これにより、派遣元会社と、派遣先企業の2社間で締結する「労働者派遣契約書」をペーパーレス化(電子化)しても良いことになったのです。

その背景には、労働者派遣契約については、書面保存に係る事業者負担が大きいため、電磁的方法による保存を認めることが適当であるという、社会情勢に鑑みた考え方の変化が見られます。

参考:労働者派遣契約の電子化が解禁!電子契約に踏み切るにはどうしたらいい?|Digital Workstyle College 
https://digitalworkstylecollege.jp/news/rodohakenkeiyakudenshika/

2.人材派遣業で作成が必要な書類とは?

それでは、人材派遣業において作成が必要な書類とは、具体的にどれほどの種類に上るのでしょうか?

以下は、その一覧を示したものです。

■派遣元→派遣先

①労働者派遣基本契約書

継続的に労働者派遣をするための「基本契約」

②労働者派遣個別契約書

派遣する労働者ごとに、個別の労働条件などを定める場合の「個別契約」

※①②は、電子化が解禁されています。

③派遣先への通知書

労働者を派遣するにあたり、以下の事項を派遣先に通知しなければなりません。

⑴労働者の氏名・性別

⑵「無期雇用派遣労働者」か「有期雇用派遣労働者」であるかの種別

⑶60歳以上かどうか

⑷健康保険・厚生年金保険・雇用保険の資格取得届の提出の有無

⑸ 労働者派遣契約の就業条件の内容と異なる場合には、個別の就業条件の内容

■派遣先→派遣元

④事業所抵触日の通知書

有期雇用派遣の場合、派遣可能期間の制限に抵触する最初の日(抵触日)を通知しなければなりません。

※派遣先から抵触日の通知がなければ、派遣元は労働者派遣契約を結んではなりません。

⑤比較対象労働者の待遇等に関する情報提供

「同一労働同一賃金」による法改正に伴い、2020年から新たに必要になった情報提供で、待遇、福利厚生、労働者教育などに関する情報開示です。

※派遣先から情報提供がない場合、派遣元は、労働者派遣契約を結んではなりません。

■派遣元→派遣労働者

⑥就業条件明示書

派遣法26条に定める「労働条件」などを明示するものです。

⑦労働条件通知書

労基法で定められた「労働条件」を通知するものです。

※電子化が解禁されています。

■派遣元で保管

⑧派遣元管理台帳の作成

派遣労働者の雇用主として適正な雇用管理を行うため、派遣労働者ごとに所定の記載事項を満たした「派遣元管理台帳」を作成しなければなりません。

■派遣先で保管

⑨派遣先管理台帳の作成

派遣労働者ごとに、所定の記載事項を満たした「派遣先管理台帳」を作成しなければなりません。これは、派遣法42条で定められている決まりです。

参考:労働者派遣事業で整備すべき書類をまとめてみました|大川社労士事務所
https://www.okawa-lssa.jp/15039141464220

このように、たとえ労働者を1人派遣するだけでも、当該労働者、派遣先企業との間で9種類もの書類を作成しなければなりません。数千人、数万人規模を派遣していれば、そのトータル枚数は数千枚、数万枚単位に上ることになります。

そこで、業務効率化に有効なのが「電子化」「ペーパーレス化」です。作成時間、契約締結時間、保管コストのカットなど、さまざまな側面から業務時間の短縮・コストカットを期待できます。

3.人材派遣業における「電子化」の成功事例

(1)事例1:派遣スタッフの在宅勤務覚書に「電子サイン」を導入

人材派遣業大手の「パーソルテンプスタッフ」では、全国の派遣スタッフの在宅勤務覚書締結に「電子サイン」を導入しています。

コロナ禍におけるテレワーク推進によって、派遣スタッフも在宅勤務への切り替えを求められる場面が増えました。その際、派遣先企業の担当者との間で「在宅勤務覚書」の締結をする必要がありました。

そこで電子サインサービス「GMOサイン」を導入し、覚書書面作成・押印を、ペーパーレス・電子サインに切り替えたのです。

これにより、派遣先企業の担当者の出社が不要になりました。さらに、紙の覚書の発送・返送にかかっていた時間を削減することで締結までのリードタイムを短縮し、派遣スタッフの在宅勤務への迅速な移行が可能になりました。

参考:パーソルテンプスタッフ、全国の派遣スタッフの在宅勤務覚書締結に電子サインを導入|JIJI.com
https://www.jiji.com/jc/article?k=000000477.000016451&g=prt

(2)事例2:人材派遣の基幹システムと電子契約サービスを連携 入力の二度手間を回避

リゾート施設に向けた人材派遣事業を展開する「株式会社ダイブ」では、1ヶ月あたり数千通規模の契約書を作成する業務が発生します。

以前は「紙とハンコ」でしたが、まずは自社の基幹システムをサイボウズの「kintone」に切り替えました。「kintone」はクラウド型サービスのため、どこからでもアクセスが可能なうえ、さまざまな外部サービスとも連携ができます。

そして、基幹システム「Kintone」と、電子契約サービス「Adobe Sign」を連携させました。「kintone」で派遣先と派遣スタッフをマッチングし、その流れの中で契約書を作成できるようになったのです。基幹システムと電子契約サービスを異なるシステムにしてしまうと、同じ情報を重複して入力する手間が発生してしまいます。その手間をなくし、スムーズな運用を実現させています。

結果として、契約書に関するワークフローは劇的に改善されました。書面を印刷して郵送すると1件当たり15分ほどかかっていたところ、「kintone」と「Adobe Sign」を組み合わせることで、5分もかからなくなったといいます。1件だけなら10分程度の時短ですが、月間で数千件の契約書を取り扱っていると考えると、約1000時間の作業時間を削減できることにつながったそうです。

参考:繁忙期には月6000件も! 膨大な契約業務を抱える企業は「Adobe Sign」をどう活用したのか|IT media
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2009/07/news002.html

4.「電子化」の成功事例を参考に、新システム導入の着眼点を学び取ろう

当メディアが人材派遣会社に向けてヒアリングを行ったところ、派遣社員との「雇用契約」「同意書」「確約書」のやり取りで電子契約システムや電子署名サービスを利用している人材会社も増え始めているようです。

一度契約を取り交わしたとしても、その更新作業もまた、月単位、年単位で発生するものですから、毎月一定量の書類業務が継続的に発生することは避けられません。

それを営業担当者、あるいは営業事務担当者がワードやエクセルで書類作成を行い、派遣社員から本人確認のための免許証のコピーなど諸々の書類を添付させて回収するとなると、非常に煩雑かつ、物理的な紙の枚数自体も多くなり、時間も労力もかかります。

これを電子化できれば、人材派遣業の現場に居る人の作業時間を大幅に短縮することに繋がります。

また、本文中で事例として挙げた「株式会社ダイブ」の事例のように、人材派遣業のコアを司る基幹システムと、電子契約サービスを連携させるという手法は、「労働者データをシステムへ入力する二度手間を回避する」など、業務効率化の上で、大変重要な視点だと言えそうです。

電子化に踏み切るためには、「新たなシステムを活用することで、従来の書面作成のフローをどこまでペーパーレス化できるか?」という観点が重要です。

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