契約の基礎知識

ビジネスでよく使う契約書9種類を解説 | 作成時の注意点とは?

監修 山本 健太 弁護士(第二東京弁護士会)

ビジネスでよく使う契約書9種類を解説 | 作成時の注意点とは?

企業間取引において、契約書を取り交わす場面は多く発生します。中でも、新たな取引先と業務を始める際は契約書の締結が必須になることがほとんどです。近年では、契約書は紙に限らず、電子で取り交わされる契約書も増えてきました。

本記事では、ビジネスシーンで使用頻度の高い9種類の契約書の用途や作成時の注意点について解説します。

目次

契約書の役割

そもそも契約自体は口約束でも成立します。しかし、口約束だと言った言わないの問題が生じるなど、のちにトラブルに発展してしまう可能性があります。未然にトラブルを回避するために、契約の内容を書面化し明確にした「契約書」を取り交わすことが一般的とされています。

契約は「典型契約」と「非典型契約」の2つに分けられます。

典型契約とは、民法で規定されている以下の13種類の契約を指します。

  • 1. 贈与
  • 2. 売買
  • 3. 交換
  • 4. 消費貸借
  • 5. 使用賃借
  • 6. 賃貸借
  • 7. 雇用
  • 8. 請負
  • 9. 委任
  • 10. 寄託
  • 11. 組合
  • 12. 終身定期金
  • 13. 和解
上記の典型契約以外が「非典型契約」となります。

企業間取引における主な契約書の種類

契約書の記載内容は契約の内容ごとに異なります。ここでは、ビジネスシーンでよく利用される9種類の契約書について解説します。

<ビジネスシーンでよく使われる契約書>

  1. 売買契約書
  2. 賃貸借契約書
  3. 請負契約書
  4. 委任契約書
  5. 秘密保持契約書(NDA)
  6. 雇用契約書
  7. 派遣契約書
  8. 保証契約書
  9. ライセンス契約書

1. 売買契約書

売買契約とは、売主と買主がモノやサービスを売買する際に取り交わす契約です。

売買契約の内容は目的によって分かれています。例えば、1回の取引のために交わされる契約書の場合は、「売買個別契約書」と呼ぶことができます。

売買契約が締結されると、売主には財産権を移転する義務、買主には代金を支払う義務が発生します。売買契約書に商品が不良品だった場合の対応や買主が支払を怠った場合の対応などを記載しておくことで、未然にトラブルを防ぐことができます。

2. 賃貸借契約書

賃貸借契約とは、一方が特定の物の使用および収益を相手方にさせる契約のことです。この契約により、借主と貸主にはさまざまな権利義務が発生します。

たとえば、借主には「賃料を支払う義務」が発生し、貸主には「使用させる義務」や「使用及び収益に必要な修繕を行う義務」が発生します。

賃貸借契約は一般的な売買契約と異なり、一定期間の契約が継続されることが特徴です。身近な事例でいえば、不動産物件があります。マンション・店舗など賃貸物件を借りる際に、賃貸借契約書を取り交わした経験をもつ人も多いでしょう。

3. 請負契約書

請負契約とは、仕事の発注者と請負者の間で取り交わす契約です。請負者はある特定の仕事の完成を約束し、発注者がその仕事の結果に対して報酬を支払います。

この契約は仕事の完成を目的としており、請負者は仕事の結果に対して責任を問われます。そのため成果物にミスが見つかれば、請負者はミスの修正や損害賠償などを求められる場合があります。これを担保責任といいます。

請負契約を結ぶことで、発注者は担保責任を問う効力をもつことができます。また、仕事の結果を問う契約なので、契約書内でも完成させる仕事の内容を必ず明らかにしておきましょう。

4. 委任契約書

(準)委任契約も請負契約と同様に仕事を依頼する側と受ける側で取り交わす契約ですが、請負契約とは似て非なるものであるため注意が必要です。

上述したように、請負は依頼した業務の成果に対して報酬が発生するもので、その成果物にミスがあった場合には、請負側に履行の追完・賠償請求などを求めることができます。

対して委任契約は、業務の処理が目的となるため、受任した側には業務のプロセスから責任が問われます。

5. 秘密保持契約書(NDA)

秘密保持契約(NDA)とは、自社がもつ秘密情報を他社に開示する際、その情報を予定している用途以外で使うことや、他人に開示することを禁止したい場合に締結する契約です。

秘密情報を開示する前に締結するのが一般的で、対象となる情報の内容や使用範囲を明確にすることが秘密保持契約を締結する上でポイントです。

<秘密保持契約書に記載すべき内容>

  • 秘密情報の内容
  • 開示範囲
  • 使用目的
  • 期間
  • 情報の返還方法
企業秘密が漏洩し不正利用されることを防ぎ、不正競争の予防や特許権の保護などを行うことを目的とした重要な契約書の一つです。

6. 雇用契約書

雇用契約とは、一方(労働者)が労働に従事し、相手方(使用者)がこれに対してその報酬を与えることを約束する契約をいいます。

雇用契約書の作成は法律上、義務付けられておらず、雇用契約や労働契約は雇用主と当事者の口頭での約束でも成立します。しかし、トラブルを未然に回避するためにも、雇用契約書は作成した方がよいでしょう。

7. 労働者派遣契約書

労働者派遣契約とは、契約の当事者の一方が、相手方に対し労働者を派遣することを約束する契約です。基本的にこの契約は人材派遣会社と派遣先の企業間で結ばれる契約です。

派遣する人数や業務内容といった契約内容を事前に定め、万が一、派遣労働者がトラブルを起こした、あるいは巻き込まれた場合に、企業間の紛争を事前に回避する意味もあります。

2021年1月の法改正により、労働者派遣契約の電子化が解禁されました。電子化することで作成の手間や管理コストを削減することができます。

8. 保証契約書

保証契約とは、例えば金銭の支払債務者が支払いを行わない場合、保証人が代わりに支払いを行うことを約束する契約です。

保証人の多くは連帯保証契約で、保証契約よりも債権者に有利な契約となっています。なお、2020年の民法改正で関連規定が改正されているため、その改正内容を確認しておきましょう。

9. ライセンス契約書

ライセンス契約は、特定の知財を利用するために締結する契約です。知財の保有者(ライセンサー)が相手方(ライセンシー)に対し、対象の権利の利用を許諾します。

知財には特許権や著作権、商標権などが当てはまります。この契約書には、対象となる知財、権利の利用範囲、ライセンス料、ライセンシーの義務などを記載します。

契約書にまつわる注意すべきポイント

作成するときの注意点

契約書を作成する際は、曖昧な表現をなくすことが重要です。曖昧な表現は解釈のズレに繋がりトラブルに発展しかねません。

雛形を利用する場合もそのまま流用するのではなく、実態に合った内容を具体的かつ明確に記載するようにしましょう。抜け漏れがないかも注意が必要です。また作成後は、当事者間で内容を必ず確認しましょう。

サインをするときの注意点

契約書にサインする際はしっかりと内容を確認することが大前提です。契約内容をきちんと確認せず不利な契約書にサインをしてしまっても、覆すことは難しいことが多いです。

確認の際は、次の点に気をつけることでトラブルを防ぐことができます。

  • 自社にとって一方的に不利になりうる記載がないか
  • 取引の実態が正しく反映されているか
  • トラブルが起きる場合を想定して作成されているか
万が一、訴訟に発展すると莫大なコストがかかることがあります。これらのリスクを念頭に、契約書を確認した上でサインしましょう。

法改正した場合の注意点

法律は、時代に即する形へ定期的に改正されます。契約書を作成する際には最新の法律に準じた内容になっているかを事前に確認することが重要です。

2020年4月1日から、売買や 消費貸借、 定型約款などの契約に関する民法のルールが変更されました。ここでは、企業間取引でも使用頻度の高い売買契約の民法改正について解説します。

参考:法務省「売買・消費賃借・定形約款などの契約に関するルールの見直し

売買契約に関する法改正

今回の法改正では、買主が受け取ったものが契約内容とは異なる場合、売主が負う責任についてのルールが見直されました。

以前の民法でも「買主が、損害賠償請求や契約解除をする権利」は争いがありませんでしたが、どのような場合に代替物の引渡しや修補等の履行の追完を請求できるかについては争いがありました。さらに、「代金の減額請求」ができるのは、より限定的なケースでした。

改正後、買主は、帰責事由に応じて、売主に対し修補、代替物の引渡しなど完全な履行を請求ができるようになりました。ただし、買主がこれらの請求をするためには、原則、引き渡された目的物が契約に適合していないことを知ってから一年以内に、売主にその旨を通知する必要があります。

買主の救済方法買主に帰責事由あり双方とも帰責事由なし売主に帰責事由あり
損害賠償できないできないできる
解除できないできるできる
追完請求できないできるできる
代金減額できないできるできる

引用:法務省「売買・消費賃借・定形約款などの契約に関するルールの見直し

なお、ビジネスシーンでよくある契約の例として、先に「賃貸借契約」や「請負契約」など、「売買契約」以外の有償契約についても述べています。それらについても、基本的に「売買契約」と同じルールが適用されます。

このように、法律の内容に変更があれば、契約書に記載すべき内容も変える必要があります。最新の法改正を知らないまま契約書を作成してしまうとトラブルにつながる恐れもあるので、作成前に必ず確認しましょう。

まとめ

未然にトラブルを防ぐためにも必ず契約書は作成しましょう。また、契約書は法改正に伴い、内容が変わる場合もあるので、契約書を作成することが多い方は定期的に内容を見直しておくことをおすすめします。

現在、契約書の電子化の解禁が進んでいます。電子契約を利用することで、自社の契約書の雛形を活用したり、作成や締結までの期間を短縮できます。

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監修 山本 健太 弁護士(第二東京弁護士会)

レイ法律事務所スポーツ部門、企業法務(ネット炎上対応・不祥事対応なども含む)担当弁護士。小中高と野球漬けの生活を送り、スポーツ選手の代理人になる夢を持ち、弁護士を志す。eスポーツ(e-Sports)も含む幅広いスポーツ分野において、選手・スポーツマネジメント会社・チーム・団体などの契約問題を扱う。日本プロ野球選手会公認選手代理人。2020年度より一般社団法人全日本シニア体操クラブ連盟常務理事。

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