契約書が必要な理由とは?契約書の種類や事例も紹介

企業活動において、契約書を締結する場面が発生します。特に、新たな取引先と業務を始める際などが多いのではないでしょうか。

そもそも、なぜ契約書は必要なのでしょうか?

今回の記事では、主に企業の法務担当者が、契約書の役割・意義について、実際に起きたトラブル事例や最新の法改正の要点も交えつつ、改めて理解できるようにお伝えします。

契約書の役割・意義とは?

そもそも、企業間取引においてどうして契約書が必要なのでしょうか。

例えば、A社がB社に対して「A社は2020年5月からサービス(商品)を提供します。その代わりB社はサービス(商品)に対する対価を支払ってください」と約束したとします。これがいわゆる「口約束」だったとしたら、どうでしょうか。

もし、後にB社が対価を支払わなくなってしまったとしたら、A社は泣き寝入りするしかなくなってしまいます。「約束」には法的拘束力がなく、損害賠償請求をすることはできないからです。

一方、A社とB社の間で契約書を取り交わしていた場合はどうでしょうか。この場合には「法的拘束力」が発生します。根拠法は「民法」です。もし、途中でB社が対価を支払わなくなってしまった場合、「債務不履行」として強制力が発生し、A社は損害賠償を求めることができるのです。

これは「売買契約書」の事例ですが、他にも「賃貸借契約書」「請負契約書」「委任契約書」といったさまざまな種類の契約書が存在します。

企業間での物品・サービスの売買や、長期的に賃貸借や業務請負、委任を行う関係においては、先々のトラブル回避のために契約書を取り交わすことが有効なのです。

参考:民法で定められている契約の種類とは?2020年4月施行の改正内容もわかります!
https://best-legal.jp/civil-law-contract-17190

ビジネスシーンで締結される、4つの主な契約書

1.売買契約書

「売買契約書」とは、売主と買主が売買契約を締結する際に取り交わすものです。

双方で合意した事項について書面にまとめておくことで、その後の紛争の予防になります。また、万が一訴訟に発展した場合には、証拠書類として提出することができます。

参考:「売買契約書」とは何か?雛形付きで書き方を解説します!
https://www.shares.ai/lab/houmu/2980668

2.賃貸借契約書

「賃貸借契約」とは、一方が特定の物の使用・収益を相手方にさせる契約の際に結ぶものです。身近な分かりやすい事例で言えば、不動産物件があります。マンション・店舗など賃貸物件を借りる際に「賃貸借契約書」を取り交わした経験を持つ人も多いことでしょう。
相手方が賃料を支払うことを約束することによって効力が生じます。
売買契約と異なり、一定の期間、契約が継続されることが特徴です。

参考:賃貸借契約書の書き方・記入例|無料テンプレート、雛形、フォーマット、サンプルのダウンロードは【書式の王様】
https://www.bizocean.jp/doc/howto/135/

3.請負契約書

「請負契約書」とは、仕事の発注者と請負者の間で取り交わすものです。請負者は、「ある特定の仕事の完成」を約束し、発注者がその仕事の結果に対して報酬を支払う契約のことです。

この契約は「仕事の完成」を目的としており、請負者は「仕事の結果」に対して責任を問われます。万一、成果物にミスがあった場合、請負者はミスの修正や損害賠償を求められます。

このように請負契約は、「瑕疵担保責任」を問う効力を持っています。

また、「ある特定の仕事の結果」を問うものですから、仕事の責任範囲を明らかにしておく必要もあります。

参考:請負契約と請負契約書の書き方|無料テンプレート、雛形、フォーマット、サンプルのダウンロードは【書式の王様】
https://www.bizocean.jp/doc/howto/408/

4.委任契約書

「委任契約」は、「請負契約」と似て非なるものであるため、注意が必要です。

自社でできない業務がある場合、外部に仕事を外注するケースがあります。その時に締結する契約が「請負」「委任」のどちらにするのかは、実は大変重要なことで、問うことができる責任は異なります。

簡単に言えば、外注した業務の「成果」を問い、その瑕疵・賠償請求まで問うことができるのが「請負」。

一方、「委任」は、外注した業務の「プロセス」に対して責任を問われ、仕事を「する」ことに対して報酬を支払う契約です。よって、仕事の結果がたとえ依頼主の予期しないものになったとしても、依頼主は報酬支払いの義務があります。

参考:
請負契約と請負契約書の書き方|無料テンプレート、雛形、フォーマット、サンプルのダウンロードは【書式の王様】
https://www.bizocean.jp/doc/howto/408/

実際に起きたトラブル事例!契約書がないとこうなる

それでは、契約書を取り交わさなかったためにトラブルになった事例とは、実際にどのようなものがあるのでしょうか。
弁護士法人名古屋総合法律事務所で公開されている契約書の失敗事例から事例を2つ紹介します。

【事例1】

契約書を作成せず、「発注書」と「請書」だけで売買取引を進めていた事案で、途中、売主が税金の滞納により差し押さえを受けたことから、買主側が取引を解除しようとしましたが、売主は「差し押さえ自体は契約の解除事由とならない」ことを理由にこれを拒否しました。取引が進まなかった結果、数千万円の損害が生じてしまいました。

ケーススタディ ~契約書にまつわる失敗事例~ 弁護士法人名古屋総合法律事務所(https://www.nagoyasogo-kigyo.com/case-study-2/)

【事例2】

“契約書を作成せず、「見積書」と「請書」だけで業務委託取引を行っていた事案で、「どこまでの業務が委託の対象に含まれるのか」という委託業務の対象範囲の点で、当事者に齟齬が生じてしまい、結局取引が停止してしまいました

ケーススタディ ~契約書にまつわる失敗事例~ 弁護士法人名古屋総合法律事務所(https://www.nagoyasogo-kigyo.com/case-study-2/)

契約書を取り交わさなかったために、数千万円の損害が生じる、取引停止になるなど、企業活動に関する紛争事例は多々存在しており、訴訟へと発展するケースも後を絶ちません。

契約書を取り交わさない「口約束」は企業活動に損害をもたらす原因となり、企業イメージの低下にもつながります。

一般消費者向けには不適切な商取引の撤回・解除を求める「クーリングオフ制度」があります。ところが、企業間取引においてはこの「クーリングオフ制度」は適用されません。

このような観点から、契約の基本的な部分を理解し、適切な企業間取引を進めていく必要があります。

参考:中小企業庁 事業者間トラブル事例
https://www.chusho.meti.go.jp/faq/jirei/jirei001.html

2020年4月1日改正民法施行売買契約に関するルールを見直し

2020年4月1日から、売買、 消費貸借、 定型約款などの契約に関する民法のルールが変わりました。契約の中でも、特に「債権」に関わる部分について見直しが行われています。

ここでは、先にビジネスシーンでよくある契約書として一例に挙げた「売買契約」を取り上げ、どのように変わったかを、説明していきたいと思います。

「売主が負う責任」が広範囲に問われるように

今回の改正のポイントは、「売主が負う責任」についてのルール見直しです。

例えば、売主が買主に引き渡した目的物が契約内容を守っていない場合(例:不良品や、数量が足りないなど)。売主と買主のどちらに責任があるか考慮したうえで、買主は、売主側に責任を問うことも認めらるようになりました。

損害賠償請求や契約解除に加えて、修補や代替物の引渡しなど完全な履行を請求することや、代金の減額を請求することができるようになったのです。

また、売主に責任がない場合(例:自然災害で商品の納入ができない場合など)にも、買主は売買契約を解除することができることになりました。売買契約の履行を受けることができない場合には、たとえ売主に責任がない場合であっても、契約解除をして、新たな取引先と別の売買契約を自由に締結できるようになったのです。

改正前と、決定的に違う点はどのような部分でしょうか?

以前の民法でも「買主が、損害賠償請求や契約解除をする権利」は存在していました。

しかし、「どんな場合に修補や代替物の引渡しなどの完全な履行を請求することができるか」についてはケースバイケース。中には、紛争に発展する事例もありました。また、「代金の減額請求」ができるのは、限定的なケースのみでした。

尚、ビジネスシーンでよくある契約の例として先に「賃貸借契約」や「請負契約」など、「売買契約」以外の有償契約についても述べています。今回の改正ではそれらについても、「売買契約」と同じルールが適用されるようになっています。

つまり、新たなルールに沿って考えると、有償契約を履行できない場合、

・売主は、より厳しく、広範囲に賠償責任を問われる
・買主は、たとえ不可抗力(例:自然災害など)であっても、売主に対して契約解除できる

というルールになった、というわけです。

今後、契約書を作成する際には上記の点にも留意して進めることが必要です。

参考:法務省冊子 「売買, 消費貸借, 定型約款などの契約に関する民法のルールが変わります」
http://www.moj.go.jp/content/001289629.pdf

まとめ

企業間取引において、各種契約書が必要な理由についてお分かりいただけでしょうか。

契約書を結ばず「口約束」や「発注書」「見積書」「請書」だけで済ませてしまっている場合、例えば後々、納入物や成果物に瑕疵があっても法的拘束力が無く、損害賠償請求をすることができません。

「業務請負」や「委任」についても、業務責任を問うことが出来る範囲や、報酬の発生範囲について注意が必要です。

加えて、2020年4月1日からの法改正についても理解しておくことが必要です。

もしあなたが会社で法務担当者を務めているなら、改めて自社の契約書の種類・内容について見直してみてはいかがでしょうか。

Digital Workstyle College 編集部
この記事を書いた人