電子契約がもたらす企業法務リスクの取り方とグローバルビジネスでの電子契約活用事例

資格スクエア、リーガルエンジンなどを手掛ける、株式会社サイトビジット主催のオンラインカンファレンス『NINJA SIGN 1st Anniversary Conference』。電子契約サービス「NINJA SIGN」の正式リリースから1周年を記念して、2020年12月22日に開催されました。

新型コロナウイルスの感染流行拡大により、企業ではテレワーク・リモートワーク、業務のデジタル化が急激に進みました。一方で、決済書類にハンコを押すためだけに出社する、いわゆる「ハンコ出社」が話題になり、テレワーク、リモートワークを推進する企業の動きを妨げる要因ともなっています。

ハンコ出社をなくそうと、電子契約サービスを導入する企業は増加傾向にありますが、押印文化は今後どのように変わっていくのか、企業法務、弁護士などを招いて議論。

 『NINJA SIGN 1st Anniversary Conference』で最初に登壇されたのが、太陽誘電株式会社の法務部長をされている、佐々木毅尚さんです。佐々木さんは、2017年ごろから企業法務におけるリーガルテックを積極的に推進しています。これまでの経験を踏まえて、電子契約のリスクのとり方と海外での電子契約の事例をお話いただきました。

電子署名の法的リスクとは~企業法務の立場から~

1.無権代理のリスク

電子署名システムには、かなり多くの人が自由にアクセスできます。紙の書類に押す社長印は、総務部などが管理しているので、社内でも限られた人しか触れないし、捺印も限られた人しかできません。しかし電子署名システムを導入する上で、決済者の代わりに勝手にサインする(無権代理)リスクの発生は避けられないので、以下の対策を講じると安心です。

  • 社内のフローをしっかり整備していくこと
  • 相手に署名を求める際に、相手がちゃんと決済権限があるか確認をとること
  • 完了や締結済みの証明書を発行するサービスを選ぶこと

また、ほとんどの書類に社長印を押している会社がもしあれば、リスク管理の観点からあまりよろしくないので、電子契約を入れるタイミングで会社の捺印規定を見直すことが大事です。

2.法律により、電子契約・電子署名を利用できないリスク

電子契約を利用したいと思っても、法律により電子契約を使えないケースまたは契約類型が存在します。

下請事業者に電子契約サービスを使うときは、依頼側事業者が費用を負担しなければなりません。また、下請事業者が電子契約の利用を拒否すれば、依頼側事業者は受けなきゃいけない。こうしたことは下請法(3条2項)によって定められているので、注意が必要です。

ただし工事請負契約の場合、行政のグレーゾーン解消手続きを申請して、監督官庁から許可を得たベンダーについては、電子契約で締結できます。ちなみに大手のベンダーさんの多くは、利用可能という回答を行政から受けていますが、工事請負契約で電子契約サービスを利用する前に、予め確認したほうがよいでしょう。 

3.書類管理の不徹底により、指摘を受けるリスク~電子契約データの保存~

電子契約書の保存に関しては、電子帳簿保存法の要件をしっかり守らなければいけません。明瞭な状態でデータを画面に表示して、プリントアウトできる状態にしておくこと(見読性の確保)。また、取引の年月日や金額、相手方の名称でデータを検索可能な状態にすること(検索性の確保)。電子契約を使用して何らかの書類を取り交わした後、担当者のパソコンの中や自社サーバーの中にデータを置きっぱなしにすると、電子帳簿保存法の要件を満たさないので、注意が必要です。

自分の会社が使っているサービスで電子契約を締結した場合は、自社ベンダーのデータベースを使えます。多くのベンダーさんのデータベースは電子帳簿保存法の要件を満たしているので、ここにデータを保存しておけば問題ありません。

しかし、使っているサービスがお客様と自社とで違っているときは、可能であれば自社ベンダーのデータベースに取り込んでしまいましょう。どうしても難しい場合は、電子契約書をプリントアウトしてファイルに綴じておけば、法律違反を回避できます。データ保存できない、不徹底の場合は法令違反なうえ、定期的に入る税務調査の時に指摘される可能性もあります。

事務フローを整備・徹底し、記録事項の変更や記憶媒体が紛失、消失しないように保存されたデータの管理責任者を決めておきましょう。

4.実務で発生するさまざまなリスク 

印影をスキャニングできるベンダーさんもありますが、印影は転用されるリスクがあります。なので基本的にこういうサービスは使わない。はっきり言って、印影の有無なんて、実は法定効果に全く影響がありません。電子契約サービスには、印影がデフォルトで用意されてますので、そういうものを使えばよいでしょう。

署名の名義人と実際作業をする承認者が違うケース、契約の名義人は執行役員だけど、承認する人は秘書というケースが考えられます。署名の名義人は会社の代理人。秘書はこの代理人の使者という構成になるので、役員の秘書がクリックして承認するっていうのは法律的には全く問題ありません。お客さんが嫌がるものについては、承認者専用のメールアドレスを関係者全員で共有して、電子承認をしていくという方法で解決できます。

電子契約サービスを導入したけども結局利用者が増えない会社が、実は意外に多いです。説明するのは面倒臭いとか新しいものを覚えるのが面倒臭いという、現場の抵抗感ってありますよね。お客様のもとへ出向く営業の部署だと、事務処理をアシスタントさんが担当している場合、営業マンだけでなく事務を担当するアシスタントさんにも周知しないと全く意味がありません。

なので、周知の際は社内の事務フローをしっかり確認しましょう。利用が伸びないときは、どういう方法で、誰に周知をしたのかを改めて見直す必要があります。そもそも電子契約は、押印権限のある人が電子承認するだけなので、社内規定を変えるとか特別なことをせず、既存の押印ルート、決裁権限をそのまま使うとよいでしょう。

であと取引先がなかなか使ってくれない、社内のシステムセキュリティー、そもそも取引先が電子契約の仕組みを理解していない場合、相手専用の案内のデータやマニュアルみたいなのもしっかり整備する必要があります。

世界の電子契約の状況

海外の電子契約には、だいたい以下の4つに分けられます。

事業者署名型で問題ない国(アメリカ・韓国・インド)

アメリカは他の国と違って、どういう形の実務が動いているかを、証明や原本でやり取りしません。自分たちで署名欄に記載して相手にPDFを送る。であとはファクスで交換して終了っていう世界です。ただ署名の手続きが一番楽なのがアメリカです。

韓国とインドは事業者署名型を使えます。韓国も、事業者署名をサービスを提供するベンダーは非常に増えてます。だいたい日本円で4,000円ぐらいでサービスを利用できます。

事業者署名型が使えない、当事者署名型でなければいけない国

中国では、必ず中国国内のベンダーを使いましょう。海外のベンダーを使うと、裁判所が効力を否定する可能性があるとされています。

事業者署名型が使えるが、使い方を考えなければいけない国

シンガポールは2種類、EUとフィリピンは今電子署名が3種類に分かれていて、それぞれ証拠力にランクがあります。

シンガポールでは2種類あるうち、事業者署名型が高い方のセキュリティーランクに該当するので、シンガポールでは事業者署名型が使用可能です。

EUでは、欧州委員会が作成したeIDAS規則と各国の法令を適用します。電子署名で一番高いセキュリティーランクを取りたいとき、欧州委員会から認定を受けた業者を使う決まりがあります。ただ、事業者署名型の効力が否定されることはおそらくないと思うので、本当に重要な契約ではなく、秘密保持契約など重要性がないものであれば、電子署名でもよいでしょう。

そもそも電子契約システム自体を使うのは危ない国

タイ・インドネシア・マレーシアには電子契約に関する法律はあるんですけれども、インドネシア・マレーシアには全然普及していません。そもそも法律の要件っていうのがよく分からないので、電子契約システムを使うのは難しいなと思っています。

タイについても一応電子契約に関する法律はあるんですけども、裁判所が有効性を認めるかどうか不明なので、ここも使うのはかなり難しいと思っています。

まとめ

電子契約の導入は、いきなり全社で全部の契約書類を電子契約でというよりも、まずは事業部門の中だけとか、範囲を限定して始めていき、少しずつ社内に広げていくのが一番やりやすいと思います。また全社でいきなりやろうとして導入がどんどん遅れるのは、できれば避けたいので、まずは小さくても始めることが大事です。

で今後なんですけども長期的に見て、電子契約の件数は1回どっかで止まると思うんですけども、右肩上がりで増えていくと思います。で件数が伸びるほど、社会に認知されて普通の仕組みになる。普通の仕組みになれば法律が変わることも当然考えられますので、これから年を追うごとに電子契約のリスクは下がっていくでしょう。それに合わせて、電子契約を対象とする契約類型や部門を広げていけばいいと考えます。

海外の企業と電子契約で契約書を締結する時は、国によって法律や商習慣が違うので、必ず現地ベンダーを探して、彼らの提供しているサービス内容や証拠力、社会への普及度を確認することが大事です。また、日本のベンダーが使えるかどうか。当事者署名なのか事業者署名なのかを見極めて、日本の使ってるベンダーと同じようなサービスであれば問題ありません。

今日本で電子契約導入を考えている方も多いかもしれませんが、外国にある企業と電子契約を可能性が出てくるでしょう。まずは日本で導入してみて、鉄が熱いうちに海外もちゃんと調べておくのが、いいんではないかと思います。

Digital Workstyle College 編集部
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