契約書に記された内容を精査する法務部門が自社にない場合、重要な契約書のチェックは顧問弁護士などにお願いする一方で、他の一般的な契約書は総務部や管理部、社長がチェックしている場合、法務部門があってもチェックする契約書が多すぎて残業が常態化している場合など、業務効率化や作業の属人化の面で頭を抱えている企業も多いでしょう。
AI(人工知能)の技術を搭載した契約書レビューサービスを活用することで、契約書の文言に含まれたリスクの見落としへの不安など、契約書チェックにかかるさまざまな負荷を軽減します。また、契約書レビューを自動化することで、法務知識がない人でも契約業務を正確に行えます。
今回は、契約書レビューサービスの基本的な解説から、Digital Workstyle Collegeが厳選する4つの代表的な契約書レビューサービスをご紹介したいと思います。
契約書レビューサービスは、契約の相手先からドラフト(草案)が提示された場合、契約書に何らかの不備があるか、契約書内容が自社に有利な内容であるか、契約書の内容に即した条文検索などをAI(人工知能)が精査(=レビュー)してサポートするシステムです。
各社が提供するAI契約書レビューサービスの基本的な機能は、概ね以下の4項目に集約されます。
レビューさせたい契約書をWord またはPDF形式でクラウド上にアップロードすると、注意が必要な箇所と根拠を解説してくれる機能です。サービスによっては、「自社に有利」「自社に不利」などのリスクの度合いを示したり、度合いを自社仕様にカスタマイズできたりするサービスも存在します。
作成した契約書をチェックし、修正したほうがよい箇所と文言を提案してくれる機能です。これには、提案文言をワンクリックで挿入または入れ替えできたり、細かい修正や一般的ではない論点などをまとめて非表示にしたり、項目ごとに重要度を設定してカスタマイズできたりする機能も含まれています。
他にも表記統一や誤字脱字の修正、条項表記の統一、条項の増減に伴う参照条項の自動変更などの機能を搭載しているサービスもあるようです。
ある程度契約書がクラウド上に蓄積されてきたら、似たような内容の契約書が新規にアップロードされたときに、文言の抜け漏れを指摘してくれる機能です。膨大な量の契約書を読み込んだシステムは、例えていうなら膨大な量のチェックリストであり、人間の目ではどうしても拾いきれない文言の細かい抜け漏れを、システム側でもチェックすることでより確実かつ正確な契約書を作成できます。
契約書作成の際に、挿入したい条項をキーワード検索できる機能です。ドラフト(草案)を作成する担当者が1人しかいない場合、ノウハウを共有しづらいという課題がありますが、この機能を利用することで、瞬時に提案例文を提示してくれます。
上記に挙げた4項目の他に、操作方法が不明な場合、ベンダーに問い合わせできるチャット機能があります。
今回は、契約書レビューサービスの中から、Digital Workstyle Collegeが厳選する、人気の高い4つのサービスをご紹介します。
●AI-CON(アイコン)
https://ai-con.lawyer/
●AI-CON Pro(アイコンプロ)
https://ai-con-pro.com/
●LegalForce(リーガルフォース)
https://legalforce-cloud.com/
●LawFlow(ローフロー)
https://www.lawflow.jp/
契約書レビューサービスは法務部門の有無や契約書の発行頻度など、自社の業務内容に照らし合わせて最適なサービスを選ぶことが大切です。そこで、上記の4つのサービスについて比較表を作成しましたので、ご参照ください。
AI-CON (アイコン) | AI-CON Pro (アイコンプロ) | LegalForce (リーガルフォース) | LawFlow (ローフロー) | |
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正式版リリース | 2018年4月 | 2020年2月 | 2019年4月 | 2020年3月 |
導入企業、またはユーザー数 | 400社以上 | 約70社 (2020年7月) | 500社以上 (2020年9月) | 300名以上 (2020年9月) |
対応可能な契約書の種類 | 500 | 11類型48種類超 (2020年10月現在) | 約300類型、400点以上 | 18類型36種類 (2020年8月時点) |
セキュリティ | ・SSLサーバ証明書 ・通信の暗号化 ・クラウド型(SaaS型)Webアプリケーションファイアウォール(WAF)を導入 | ・WAF(ウェブアプリケーションファイヤーウォール) ・IDS(不正侵入検知システム) ・IPS(不正侵入防止システム) ・通信経路の暗号化 ・MFA(多要素認証) ・接続元IPアドレス制限 ・第三者機関によるアプリケーションの脆弱性診断 ・OAuth 2.0に準拠 ・ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証(ISO27001) | ・第三者機関(株式会社イエラエセキュリティ)による脆弱性診断 ・ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)規格を取得済み ・ciso(情報セキュリティ専任者)を設置 | SSL通信 |
Word・PDF | ○ | ○ (ほかにjpg、pngにも対応可能) | ○ | ○ (ほかにjpg、pngにも対応可能) |
料金 | 即時チェック機能をワンコイン(税別500円)または月額の定額料金(税別980円)で使用可能(※秘密保持契約書(NDA)のみ)。 その他全条文に対して、トラブルが起きやすいポイントとその対処法、不足条文を指摘する詳細チェックプラン(税別10,000円)がある | 個別に見積もり | 法務組織の規模に応じた人数ベースの課金制度を採用 | 無料プランとエンタープライズ版(※有料プラン、50,000円~)がある。 エンタープライズ版には別途トライアル版も |
API連携 | クラウドサイン | hubble | GMO電子印鑑Agree |
画像:AI-CONサービスサイトより(https://ai-con.lawyer/)
GVA TECH株式会社が手掛けるAI-CON(アイコン)は、機密保持契約書(NDA)のレビューをワンコインで利用できるプランと月額利用プラン、さまざまな契約書をチェックしたい法人向けの3つの料金プランがあります。ユーザー企業が安心して相手先企業と契約を結べるよう、作成した契約書をGVA TECHが設定した法務基準に照らし合わせて、リスクを可視化するだけでなく、不足項目の指摘、修正例および修正意図の提示などを指摘する機能を揃えています。
運営会社 | GVA TECH株式会社 |
設立 | 2017年1月 |
住所 | 〒101-0054 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-15-6 GVAフレンズ |
従業員数 | 40名 |
画像:AI-CON PROサービスサイトより(https://ai-con.lawyer/)
「AI-CON Pro(アイコンプロ)」は、自社の法務基準に沿って、ユーザー企業が使用している契約書のひな形や法務知識をGVA TECHのAI(人工知能)に取り入れることで使用できる、契約書レビューサービスです。これまでレビューしたことがないタイプの契約書でも、または経験の浅い社員が担当することになっても、AI-CON Proが提供する契約類型により、ユーザー企業の法務基準に沿った契約書作成をサポートします。
詳しくは、こちらの記事もご参照ください。
「エンタープライズ向け契約書レビューサービス「AI-CON Pro」の強みとは GVA TECH神藏氏」
https://digitalworkstylecollege.jp/service/ai-conpro/
運営会社 | GVA TECH株式会社 |
設立 | 2017年1月 |
住所 | 〒101-0054 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-15-6 GVAフレンズ |
従業員数 | 40名 |
画像:
「LegalForce(リーガルフォース)」はAI(人工知能)をはじめとしたテクノロジーを活用し、短い時間で契約書レビューを行うソフトウェアです。2019年4月に正式版リリース後、約1年5ヶ月で500社を超える企業・法律事務所が導入しています。
LegalForceはGMO電子印鑑Agreeと2020年8月にサービス連携を開始。両方のサービスを併用することで、契約書のレビューから契約の締結までをクラウド上で完結できます。
運営会社 | 株式会社LegalForce |
設立 | 2017年4月 |
住所 | 〒100-0011 東京都千代田区内幸町1丁目1-6 NTT日比谷ビル8階 |
従業員数 | 66名 |
2020年3月に正式版がリリースされたLawFlow(ローフロー)。無料から契約書チェックを利用できるリーガルテックサービスとして、ユーザー数は発売から半年で300名を突破しました。
無料プランでは秘密保持契約、一般的業務委託契約のみ契約書チェックできる他、10通までクラウド上に保存可能です。一方有料プラン(エンタープライズ版)では、ひな形の設定と契約書の投稿を制限なしで利用できます。この他、取引先フィルター機能や弁護士カスタムサポートなどがセットアップされています。
運営会社 | LawFlow株式会社 |
設立 | 2019年11月 |
住所 | 〒160-0023 東京都新宿区西新宿1-14-15 タウンウエストビル9階 |
契約書レビューサービスは、契約書をシステムにアップロードするだけで文言の抜け漏れや修正提案など、多様なフィードバックをもらえるサービスです。契約書レビューサービスを利用することで、法務知識のあまりない部署の契約書チェックをサポートできます。また、レビュアーにかかっていた心理的負荷や業務負荷を軽減できる他、法務担当者の知識をAI(人工知能)に取り入れることで、自社の他部門への共有や契約書レビューの標準化を実現できるなど、得られるメリットが豊富です。
利用の際は自社の契約書の作成・レビュー状況を整理し、適切な契約書レビューサービスを利用しましょう。
参考文献:リーガルテック・AIの実務――デジタル・トランスフォーメーション(DX)時代の企業法務改革~高林淳編・著(2020年3月、商事法務)