経費精算とは、物品の購入から営業活動にかかる交通費、接待や出張の費用など、業務に必要とされるお金を支払うことです。個人事業主から大企業まで、その事業の規模を問わず、必ず必要となる業務ですが、領収証や請求書などをそろえたり、交通費の計算などの細々とした作業があるため、面倒で後回しになりがちな傾向にあります。
そんな煩わしい経費精算業務を助けてくれるのが、経費精算システムです。
今回は、経費精算システムの中でも人気で、他のツールとの連携にも優れた、5つのシステムについて解説します。
経費精算システムを導入することによって、経費精算を効率化することができるといいますが、経費精算システムには具体的にはどのような機能があるのでしょうか。
以下、経費精算システムに搭載されている基本的な機能を見ていきましょう。
経費精算のデータを、申請者→承認者→経理部門と飛ばすことで、紙でのやりとりをなくすことができます。
それまでは経費精算の申請を、Excelなどに入力し、紙で出力し、承認印をもらっておこなっていたものを、システム化した機能です。
経費精算に必要な、領収証などの証憑チェックもあわせておこなうことで、添付書類漏れを防ぐことが可能です。
システムによっては、承認ルートの変更や、代理承認に加え、テレワークや外出の多い職種に合わせて、スマートフォンなど多様な端末での承認を可能にしているものもあります。
さらに、運用に合わせてワークフロー(承認フロー)を自由に設定できる機能を搭載しているものも。
外出・出張時に、それぞれの交通機関の運賃を正しく確認できる機能です。
経費精算を経路案内システムと連動することで、選択したルートに伴って正しく運賃が計算されるほか、運賃や時間の面から最適ルートを選択しているかどうかを判定することもできます。
システムによっては、従業員に配布したSuicaなどの交通系ICカードと連携させることで、自動的に交通経路と費用を精算してくれたり、従業員ごとに定期区間を登録し、その区間を含む経路の交通費精算については、定期区間分を自動で控除する機能を搭載しているものも。
交通費精算については、確認が煩雑なためミスが起きやすいことと、領収証発行が難しいことから不正に過大請求されやすい特徴がありますが、それらを防ぐ仕組みともなっています。
経費精算用のクレジットカード(法人カード・コーポレートカード)を使っている場合、カード利用データをそのまま取り込むことができる機能です。明細をそのまま取り込むので、精算し忘れや、入力に関するエラー・不正を防ぐことができます。
各種帳簿や関係資料を紙ではなく、電子データで保管できる「電子帳簿保存法」に対応した帳簿作成をおこなうことができる機能です。
電子帳簿保存法に対応することで、原本の管理コストや紛失リスクを削減することができるなど、多くのメリットがあります。
OCRや写真に撮影した領収証を読み取る機能です。経費精算システムがクレジットカードやICカードに連携していても、現金や従業員個人のクレジットカードなどで精算したものはシステムへの手入力の必要がありますが、領収証の読み取り機能のあるシステムの場合は、入力の手間やミスの防止に役立ちます。
もともとの予算から経費を使った消化状況を確認したり、データからの分析を行う機能です。経費の使用状況を確認して適正な予算配分をおこなうことができるほか、不正経理の未然防止にも役立ちます、
経費精算を会計システムに連動させたり、勤怠管理や給与支払などの労務管理システムに連動させることで、より包括的に業務をシステム化することが可能です。
今回の記事では、経費精算システムの中でも人気の高い、以下の5つのツールを紹介いたします。
・楽楽精算
・マネーフォワード クラウド経費
・ジョブカン 経費精算
・RECEIPT POST(旧:Dr.経費精算)
・Concur Expense(コンカーエクスペンス)
経費精算システムの必要機能について、比較表を作成しました。以下ご確認ください。
楽楽精算 | マネーフォワード クラウド経費 | ジョブカン経費精算 | Dr.経費精算 | Concur Expense | |
---|---|---|---|---|---|
経費精算・承認 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
経路案内システム連携 | ◯ ジョルダン乗換案内 | ◯ | ◯ ジョルダン乗換案内 | - | ◯ 駅すぱあと |
交通系ICカード連携 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
法人カード連携 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
電子帳簿保存法対応 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
領収証読み取り | ◯ | ◯ | - | ◯ ・目視チェック ・領収証原本保管代行もあり | ◯ |
予算管理 | ◯ | ◯ | - | - | ◯ |
ワークフロー | ◯ | - | ◯ ジョブカンワークフローにて | - | ◯ 拡張はProfessionalのみ |
スマホアプリ対応 | ◯ | ◯ | ◯ | - | ◯ |
他システムとの連携 | ◯ 各種会計ソフトやAmazonビジネスなど | ◯ 会計ソフト連動 | ◯ ・ジョブカンシステム以外も連携可能 ・会計ソフトへの仕訳データも自動作成 | ◯ ・ほとんどの会計ソフト連動 ・CSVデータで一括取込み可能 | ◯ タクシー手配やカーシェアリングなど外部サービスとアプリで連携 |
導入企業 | ・株式会社毎日新聞 ・ファーストキッチン株式会社など | ・株式会社JTB沖縄 ・日本ケロッグ合同会社など | ・ピクシブ株式会社 ・株式会社インゲージなど | ・エキサイト株式会社 ・株式会社ミキ・ツーリストなど | ・KDDI株式会社 ・花王株式会社など |
ここに示した機能はあくまで概要であり、それぞれのシステムのプランによって機能が異なる場合があります。
いずれも人気のシステムなだけあって、経費精算に必要と思われる機能を網羅できるように設計されているのがポイントです。
それぞれのシステムの契約内容によって、使える機能が異なります。詳しくは各社のWEBサイトをご確認ください。
画像:楽楽精算サイトより (https://www.rakurakuseisan.jp/)
楽楽精算は、創業20年の上場企業ラクスが開発した、導入実績6000社を誇るクラウド型経費精算システム。経費精算にまつわるフローを、インターネット環境があればどこでも利用可能です。
申請者は交通系ICカードをかざすだけで申請が完了、領収証もスマホで撮影してデータ送付をおこなうことができます。
規定違反時には自動でエラーとなり、申請できないような設定も可能など、申請者や経理担当者の負担を軽減する機能が盛り込まれ、使い勝手が良いのも特徴。
また、国内屈指のデータセンターでの24h/365日の監視、および災害時に備えたバックアップ体制を完備というセキュリティーの安全性や、企業ごとの専任担当者によるサポートも魅力です。
トライアル | あり 以下フォームより申し込み https://www.rakurakuseisan.jp/form/trial.php |
無料プラン | なし |
有料プラン | 基本プラン:初期費用100,000円、月額費用30,000円~ 月額料金は利用者数によって変動料金シミュレーション https://www.rakurakuseisan.jp/price/ |
参考:楽楽精算公式サイト 料金プラン (https://www.rakurakuseisan.jp/price/)
楽楽精算は企業各々のルールに合わせた画面や設定のカスタマイズをおこなうため、初期費用が必要となっています。月々の月額費用は、利用の従業員数によって料金が変動するプランです。
運営会社 | 株式会社ラクス |
設立 | 2000年11月1日 |
住所 | 〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷5-27-11 アグリスクエア新宿 |
従業員数 | 連結:1,140名 単体:586名(2020年4月1日現在) |
画像:マネーフォワード クラウド経費サイトより (https://biz.moneyforward.com/expense)
会計や勤怠管理など、バックオフィス系のCloudソフトを展開するMoneyForwardシリーズの経費精算システム。
それぞれのシステムとの連携をおこなうことで、より業務の効率化を図ることができます。
ECサイト、航空会社サイト、タクシー配車アプリ、路線検索等との連携のほか、ガソリン代を自動計算したり、OCRによるレシート読み取りができるほか、手書きの領収書はオペレーターが代行入力するなど、申請者の手間を削減する機能を盛り込んでいます。
トライアル | なし |
無料プラン | なし(プランによって1ヶ月割引などの対応あり) |
有料プラン | 従業員数に応じて料金が異なります。 利用料金は、各プランの基本料金+各サービスの従量課金+各種オプション料金の合算 ■1~30名までの法人基本料金 ・スモールプラン 3,980円/月 ・ビジネスプラン 4,980円/月など ■6名以上でご利用の場合の従量料金・経費:1名あたり500円 ■オプション:オペレーターによる撮影された領収証の代理入力など ・コーポレートプラン +200円/月(オプション料金が最低月額1,000円発生) ・エンタープライズプラン +400円/月(従量課金が最低2,500円発生し、オプション料金が最低月額4,000円発生) ※31名以上は要問い合わせ https://biz.moneyforward.com/expense/pricing |
参考:マネーフォワード クラウド経費公式サイト 料金プラン (https://biz.moneyforward.com/price)
マネーフォワード クラウド経費は、プラン別の基本料金に、人数ごとの従量課金+オプション料金を追加して料金が変わります。
年払いでの割引や、給与・マイナンバーとの連携など、必要なオプション機能を洗濯した上での見積もりを取り寄せると良いでしょう。
運営会社 | 株式会社マネーフォワード |
設立 | 2012年5月 |
住所 | 〒108-0023 東京都港区芝浦3-1-21 msb Tamachi 田町ステーションタワーS 21F |
従業員数 | 691 名(連結) / 504 名(単独)(2020年2月現在) |
画像:ジョブカン経費精算サイトより (https://ex.jobcan.ne.jp/)
人事・労務・経理に関するシステムを組み合わせて利用できる「ジョブカン」シリーズの経費精算版。
経費精算にかかる機能に特化した「経費精算」に、稟議等のあらゆる社内申請に対応したクラウドワークフローシステム「ワークフロー」を組み合わせることで、さらに使い勝手がアップします。
シンプルで使いやすいインターフェースで、設定も簡単です。無料トライアルも用意しており、他のシステムと比べて使用料が安価なのもポイントといえます。
トライアル | 30日間無料体験あり |
無料プラン | あり 機能制限あり |
有料プラン | ジョブカン経費精算 400円/1ユーザージョブカンワークフロー 300円/1ユーザー 両方の申し込みで600円/1ユーザー ※月額最低利用料金は5,000円 ※オプションで初期設定プラン 18万円~(要問い合わせ) |
参考:ジョブカン経費精算公式サイト 料金プラン (https://ex.jobcan.ne.jp/price/)
ジョブカン経費精算は、従業員人数によって金額が決まる従量制です。初期費用・サポート費用・月額固定費は一切かからないという、導入しやすい料金となっています。
有料プランの月額最低利用料金は5,000円と決まっていますので、人数が少ない場合は、最低料金を上回るように機能を組み合わせて使いましょう。
勤怠管理などのジョブカン他サービスご利用の場合、1ユーザあたり月額50円以上割引もあり、ジョブカンシリーズでそろえることで、お得に利用できます。
30日無料トライアルのほか、機能制限がありつつも無料プランも提供していますので、まずはこちらから試してみても良いのではないでしょうか。
運営会社 | 株式会社Donuts(英文名 Donuts Co. Ltd.) |
設立 | 2007年2月5日 |
住所 | 〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-2-1 小田急サザンタワー8F |
従業員数 | 300名(正・契約社員) |
画像:RECEIPT POSTサイトより (https://www.keihi.com/)
RECEIPT POSTは、経費精算担当者の業務負荷削減に特化したクラウド経費精算ソフトです。
クライアント企業のニーズをヒアリングし、環境設定をおこなってから納品をおこなうため、導入まで1~2ヶ月かかりますが、システムが自社の状況や規定にカスタマイズされているため、使いやすいのが特徴。
また、経理担当者だけでなく、従業員それぞれからの問い合わせも受け付けていますので、サポートにかかる手間も軽減できます。
特筆すべきは、電子帳簿保存法対応において、データ化された領収書を、オペレーターにて目視チェックしてくれることと、原本と突き合わせをおこなった後に保管まで代行してくれることです。保存年限の管理までしてくれるので、ファイリングにかかる手間も削減できます。
トライアル | あり(見積もり含めて要問い合わせ) |
無料プラン | なし |
有料プラン | 月額費用:6万~初期費用:10万~ユーザー数無制限 詳しくは要問い合わせ https://contact.keihi.com/dk.inquiry_test |
参考:RECEIPT POST公式サイト (https://www.keihi.com/)
RECEIPT POSTは、ユーザー人数ごとの料金はありませんが、月額最低料金が6万円からとなっています。ある程度の人数がいる企業向けのソフトウェアといえるでしょう。
無料トライアルがありますので、まずは問い合わせをしてみてはいかがでしょうか。
運営会社 | 株式会社BEARTAIL(英字:BearTail Inc.) |
設立 | 2012年6月26日 |
住所 | 〒101‒0062 東京都千代田区神田駿河台2‒2 御茶ノ水杏雲ビル5F |
従業員数 | 47名(2020年4月までの入社予定含めると60名規模) |
画像:Concur Expense(コンカー エクスペンス)サイトより (https://www.concur.co.jp/)
Concur(コンカー)は全世界に出張・経費管理のCloudシステムを提供しているアメリカの企業。
Concur Expense(コンカー エクスペンス)はそのうちの経費精算システムで、中小企業向けのStandardと大企業向けのProfessionalの2つのプランを用意しています。
Concur(コンカー)では、他にも 出張の予約管理のTravel(トラベル)、請求書の支払管理のInvoice(インボイス)など、用途に応じたシステムを用意しており、組み合わせることで、より効率的な経費管理システムとして活用が可能。
特徴的なのは、タクシー配車アプリやカーシェア、宿泊予約サイトといった、外部サービスとの連携。様々な経費を自動で取り込むことで、申請や入力の手間を大幅に削減するほか、費用の削減や不正防止にも役立てることができます。
トライアル | なし(デモンストレーションあり) https://www.concur.co.jp/self-guided-demo-expense-ja-jp#/ |
無料プラン | なし |
有料プラン | Expense Standard:29,000円~ エントリーパッケージ・レギュラーパッケージについては要見積もり https://www.concur.co.jp/get-quote-form |
参考:Concur Expense(コンカー エクスペンス)公式サイト Concur Expense(コンカー エクスペンス)とは (https://www.byebye-timecard.net/)
StandardとProfessionalプランで料金が異なり、中小企業向けのパッケージであるStandardでは、初期費用0円とハードルが低くなっています。
大企業向けのProfessionalでは、クライアント企業にあわせて高度な分析機能を備えた経費管理をおこなうため、費用は非公開です。
運営会社 | 株式会社コンカー |
設立 | 2010年10月 |
住所 | 〒104-0061 東京都中央区銀座6丁目10-1 GINZA SIX 8F |
従業員数 | 205名(2019年7月末現在) |
今回は、クラウドタイプの経費精算システムの中でも人気の5つのツールをご紹介しました。
いずれも人気のシステムだけあって、必要な機能に加えて、クライアント企業の課題に寄り添うような機能を搭載しているのが特徴です。
自社の経費精算や承認ルートなどの仕組みや、日常的に従業員も使う前提での操作性など、システムには機能とともに相性の良し悪しがあり、こちらで紹介したもののほかにも、多種多様な経費精算システムが存在します。
自社の経費精算業務を効率化させるためには、「これは外せない」という、自社にとって必要な機能と予算に合わせて、様々なシステムを比較検討して選ぶようにしましょう。