ロビイング(ロビー活動)とは?ビジネスに必要な理由や、国内外の事例を解説

ビジネス市場のグローバル化が急速に進む昨今において、自社の大きな発展・成功のためには「ロビイング(ロビー活動)」がキーになる、と言われ始めています。

その理由とは、一体何故なのでしょうか?

今回の記事ではビジネスパーソンに向けて、企業がロビー活動を展開する、という考え方について、その手法をはじめ、国内外の成功・失敗事例も交えつつお伝えします。

1.ロビイング(ロビー活動)とは?

(1)ロビイング(ロビー活動)とは

「ロビイング(ロビー活動)」という言葉をご存知でしょうか。

ロビイングとは、主にアメリカやEUで盛んな活動として知られています。

どういった活動かと言うと、企業が利益団体から、自国政府や国際機関に働きかけをすることです。自社のビジネス展開のうえで有利になるよう、政策決定に影響を及ぼしたり、ルール形成を働きかける、というものです。

日本では、日本国憲法において定められた国民一人ひとりの権利として、国会議員への「請願」「陳情」という制度が存在しています。

「請願」「陳情」「ロビイング」いずれも、言葉や概念としては知っていても、実際に取り組もうと考えたり、行動に起こしたことがあるビジネスパーソンは少ないのではないでしょうか。

実際のところ、ごく近年まで日本企業には「ロビイング」を行う、という観点が足りないとも指摘されてきました。しかし、近年では「ロビイング」の取り組みが少しずつ台頭しており、関心が高まりつつあると言われています。

(2)ロビイング(ロビー活動)が企業活動に必要な理由とは?

グローバルビジネス市場では、企業活動に有利になるような「ルール形成」をめぐる競争が盛んに行われています。

ビジネスとは、当然ながら各国の法律、あるいは国際ルール・規格に則って展開されるもの。

しかしそのルール次第で何らかの制約を受ければ、自社ビジネス展開にとって有利にも不利にも作用する可能性があります。

法律やルールとは、「既に自国政府や国際機関によって定められている、所与のもの」であり、企業側がそれに適応するべきものだと考えられがちです。

しかし、適正な手法を踏めば、企業自身から、また、自国政府から外国政府への働きかけによって変更し得るもの、すなわち自ら形成し得るものとして捉えることも可能です。

それがまさに「ロビイング(ロビー活動)」です。

ビジネス市場が複雑化・多様化する昨今、官・民の双方が協働しながら、より適切なルールを作り上げていく、という視点が求められているのです。

 参考:企業戦略としてのルール形成に向けて|経済産業省
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/tsusho_boeki/pdf/001_03_00.pdf

2.ロビイングの手法

(1)国会議員への「請願」「陳情」

我が国では、日本国憲法において、一人ひとりに認められた権利として国会議員への「請願」「陳情」という制度があります。

我が国の法律とは、国会議員から、あるいは内閣から法案が提出され、衆議院・参議院の両院での審議を経て立法が行われます。

現在、提出されている法案については、「衆議院トップページ」あるいは「電子政府の総合窓口 e-Gov(イーガブ)」にて開示されています。

法案提出〜審議のプロセスでは、関係省庁・機関との調整や、審議の過程でさまざまな意見の考慮・反映がなされます。

このプロセスで国会議員やその秘書宛に「請願」を行うことも、「ロビイング」に該当します。

①「請願」の方法

「請願」には、年齢や国籍の制限はありません。

国会の会期中に、衆議院と参議院がそれぞれ別個に受け付け、互いに介入しないと規定されています。

「請願書」を作成して国会へ提出するためには、議員の紹介が必要です。国会への提出に関する具体的な手続は、議員あるいはその秘書が行います。

請願は、国会が開会されると、召集日から受け付けられます。おおむね会期終了日の7日前に締め切るのが通例となっています。ただし、ごく短期間の国会の場合には、請願を受理しないこともあります。

同じ請願者が、同一会期内に同一趣旨の請願書を何度も提出することはできません。これは、紹介議員が別々であってもできません。

なお、請願は、次期国会に継続されないため、国会回次が変われば同じ趣旨の請願を提出することは可能です。

衆議院トップページ 」のWebサイトでは、これまでに寄せられた請願の内容を照会できるほか、採択されて内閣に送られた請願の経過処理を確認することができます。内閣は、送られた請願の処理経過を毎年各議院に報告することになっています。

▼請願書の書き方 参考例
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/tetuzuki/seigan.htm

②「陳情」の方法

「陳情」を行う際には、議員の紹介は不要です。

「陳情」をしようとする方は、要望する内容を簡潔にまとめた文書に住所氏名を明記の上、郵送等で衆議院議長宛てに提出します。氏名は自筆によることが原則ですが、印刷された文字などや複写による場合は押印が必要です。

寄せられた「陳情」の中で議長が必要と認めたものは、適切な委員会に参考送付されます。しかし、「請願」と異なり文書表は作成されません。

参考:請願・陳情書・意見書の手続|衆議院トップページ
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/tetuzuki/seigan.htm

(2)経済団体に加盟する

企業として「経済団体」に加盟し、自社が属する業界に有利になるよう、国や国際機関に対して政策提言活動を展開していく、ということも「ロビイング」の一つです。

例えば、「楽天株式会社」の三木谷氏を代表理事とする「新経済連盟 」も日本の経済団体の一例です。

この「新経済連盟」にはサイバーエージェント、ソースネクスト、クラウドワークス、ホットリンク、オールアバウト、オウケイウェイヴ、freeeなど国内のテック企業の数々が名を連ねています。

直近では2020年11月6日に、自民党「デジタル社会推進本部」にて、「デジタル改革に関する要望」についてプレゼンテーションを実施。デジタルとインターネットがあらゆる産業と消費者に変革をもたらす時代において、産業構造の進化のために必要な打ち手について提言を行う、といった活動を展開しています。

参考:【プレゼン】自民党「デジタル社会推進本部」にて、「デジタル改革に関する要望」について説明しました|新経済連盟
https://jane.or.jp/proposal/theme/12374.html

(3)グローバル競争におけるロビイング手法

例えば、「国際会議誘致」といった事例で考えてみましょう。

キーは、一般のビジネス交渉と同じく、ディシジョンメーカー(ここでは、その会議開催の「意思決定者」)に、海外出張の際に直接アポイントを取り、会いに行くことです。

また、ディシジョンメーカーへの直接的な働きかけとともに次のような活動も展開しましょう。

●前回大会で、自国や、自都市のPRブース設置、英語パンフレット配布
(自国、あるいは自都市で開催することのメリットを宣伝する)

●「投票権保有者」に対して、事前の資料配布
(「誰に」「どのタイミングで」「何を」理解させるかが重要)

●レセプションの開催
(ディシジョンメーカーや投票権者を招待し、自国・自都市の支持者を増やす)

要は、事前に「根回し」を周到にしておき、最終的に「意思決定者」の支持を得るに繋げる活動を展開していくことがポイントです。

参考:~誘致に効果的な「ロビー活動」とは?~ | 日本政府観光局(JNTO)コンベンションの誘致・開催支援
https://mice.jnto.go.jp/organizer-support/about-convention/detail.html?id=5

3.ロビイングの具体的な事例

ここからは、ロビイングの結果、国際市場競争で有利な立場を獲得することに成功した企業事例を見ていきましょう。

(1)ヤクルト 乳酸菌飲料の国際規格策定

「ヤクルト」は、業界団体を通じて乳製品の国際規格の策定を促し、海外における乳酸菌飲料の健康食品としての位置づけ獲得と、認知度向上を実現させました。

まず、戦略として他社との「差別化ポイント」を特定。自社の乳酸菌飲料「ヤクルト」には、乳酸菌「シロタ菌」が豊富に含まれ腸内環境を整える健康飲料として、一般の清涼飲料との違いを定義しました。

次に、特定した「差別化ポイント」を際立たせるルールの形成を働きかけました。「全国発酵乳乳酸菌飲料協会」を通じて、国際政府間組織「コーデックス委員会」に対して、乳酸菌飲料を発酵乳規格の新カテゴリーとするよう働きかけを展開しました。

そして、特性の訴求による認知度獲得です。国際規格化されることで、乳酸菌飲料の健康食品としての位置づけを世界各国で確立。イタリアでは食品区分の変更により税率が低減することにも繋がりました。

その結果、自社製品の売上増加に繋がりました。健康食品カテゴリに該当する乳酸菌飲料として販売を強化し、売上が拡大したのです。

(2)ソニー 非接触ICカードの通信規格での国際標準化

「ソニー」は、非接触ICカードFeliCaの通信規格を国際標準化しました。ライバルであるモトローラからの異議申し立てを退け、JR東日本へのSuiCaの導入を実現させました。

JR東日本がソニーFeliCa方式でのSuiCa導入をしようとする際、モトローラが「WTO政府調達協定違反」だとして異議申し立てをしました。(JR東日本は政府調達協定の対象。技術仕様について、 国際規格に基づいて定めることが規定されています。)

そこでソニー側は「ルール形成による対抗」に打って出ます。ICカードの国際標準が成立前であったことから、 申し立てを却下。さらに、FeliCa方式を非接触ICカー ド規格ではなく汎用通信規格として国際規格化しました。

結果として、不利なルールが自社に適用されることを回避。JR東日本の公開入札において、ソニーのFeliCa方式のSuiCaへの採用が決定しました。

さらに、自社のコスト増の回避にも成功しました。ソニーは規格変更をすることなく、FeliCa方式でSuiCaをJR東日本に納入できたのです。

(3)東南アジアにおけるライドシェア「グラブ」vs「Uber」の場合

ライドシェア(相乗り)サービス「Uber」は、昨今、世界各国の市場にに進出しています。

しかし日本ではご存知の通り、同社の本来のビジネスであるライドシェアサービスは提供できていません。道路交通法上、タクシー運転には許可証が必要であり、有償で行ってはいけないという規制があるためです。

一方、東南アジア各地において、既に「Uber」によるライドシェアサービスが繰り広げられている地域もあります。ところが、現地発のベンチャーに押されて苦境に立たされていると伝えられています。

東南アジアのライドシェアサービスでは、シンガポール発のベンチャー「グラブ」が圧倒的優勢。

その勝因は「ロビイング」にあると言われているのです。「グラブ」は、地域の有力者と組み、その地域に見合った戦略を取っています。特にインドネシアでは現地の大手財閥と提携し、電子マネー事業を展開したことがユーザーの利便性向上につながり、シェア拡大に成功しました。

日本をはじめアジア諸国における「Uber」の敗因は、ロビー活動の失敗にあるとも言われているのです。

(4)フォルクスワーゲンなど欧州自動車メーカー
欧州の自動車基準をASEAN諸国に適用させるルール形成を進める

フォルクスワーゲンなど欧州の大手自動車メーカーも、アジア市場に対してロビイングを展開しています。

現時点でのASEAN市場における欧州車の販売量は限られていますが、将来的な本格展開を見越して、欧州の自動車基準をASEAN諸国に適用させるルール形成を進めているのです。

タイでは、代替燃料車の普及促進を狙った税制を展開していますが、構築性能ではなく

車両構造に基づく課税体系であり、ハイブリッドカーに優位な仕組みでした。

これに対し「ドイツ自動車工業会」は、低燃費のコンベエンジンも公平に評価するフェアな制度として欧州の「CO2排出基準課税」を提案。

その結果、2012年、タイ政府は「CO2排出量」に連動する新物品税制への変更を決定したのです。

アジアは、日本企業にとっても重要な市場です。そのアジア市場に対し、欧米企業がルール形成を仕掛けてきている動向は知っておく必要があります。

参考:企業戦略としてのルール形成に向けて|経済産業省
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/tsusho_boeki/pdf/001_03_00.pdf

ロビー活動は最大の「ムダとり」|日経ビジネス
https://business.nikkei.com/atcl/report/16/012500198/012500001/?P=2

4.自社の継続的な発展のため「ルール形成」「ロビイング」の視点を持とう

自社に有利なルール形成を図る「ロビイング」は、具体的な企業事例で挙げたように自動車、健康食品、タクシー、など規制産業に多く見られます。

その中でも、自社製品を際立たせるルールを形成することで、売上の増加を図ることができます。

あるいは、自社に不利となるルール形成の動きに対抗することで、 シェア減やコスト増を回避できます。

「ロビイング」は、ビジネス市場がグローバル化する昨今において、日本のビジネスパーソンにとって決して無縁の話ではありません。

自社の継続的な発展のために、「ルール形成」「ロビイング」という視点も持っていきましょう。

Digital Workstyle College 編集部
この記事を書いた人