エンタープライズ向け契約書レビューサービス「AI-CON Pro」の強みとは GVA TECH神藏氏

法務部門の業務効率化やビジネスプロセスの高速化をめざして、リーガルテックサービスの需要が高まっている近年。GVA TECH株式会社は「法務格差を解消する」を理念に掲げ、日本におけるAI契約法務サービスのパイオニアとして、2018年4月に主に中小企業を対象とした「AI-CON」の提供を開始した。そして2019年にはエンタープライズ向け「AI-CON Pro」をリリース。法務部門を有する大手企業やセキュリティに厳しい業種の企業などからも支持を得ており、注目を集めている。

そこで今回は、GVA TECH株式会社 神藏 啓氏に、AI-CON Pro開発の経緯や強み、今後の展開まで話を聞いた。

GVA TECH株式会社とは

GVA TECH株式会社は、2017年1月に創業した現在4期目のリーガルテック企業。スタートアップ支援に特化した「GVA法律事務所」代表弁護士の山本俊氏が、テクノロジーを活用してより多くの企業をサポートしたいという思いで立ち上げた。

従業員は40名ほどで、その半数はエンジニアやAIデータサイエンティストなどの技術系、10名ほどが弁護士や企業法務経験者、あとの10名ほどが営業やバックオフィスを担うという構成である。

AI-CONとは

AI-CON Proの説明をする前に、その元となった「AI-CON」を紹介しておこう。2018年4月にリリースされたAI契約書レビューサービスで、累計400社ほどが導入している。

AI-CONはブラウザ上で動作するプロダクトだ。レビューしたい契約書ファイルをアップロードすると内容が解析され、弁護士の知見を学習したAIによって、条文ごとに「不利」「有利」「中間」が判定される。「不利」の場合はその理由や受け入れた場合のリスク、過去のトラブル事例、修正例まで確認することができる。ユーザーはそれを参考に、実際のビジネス状況や相手とのパワーバランスなどを鑑みて、必要に応じて条文を修正していく使い方だ。

AI-CON Pro開発の経緯

AI-CONをリリースしてから月に100を超える問合せが来るようになったが、その7割がしっかりした法務部門があるような大手企業だという。そうした企業では契約書をチェックする際の基準が独自で定められているため、例えば、AI-CONでは『中間』だが自社の基準だと『不利』というように、判定が合わないことがよくあるそうだ。「そのため、AI-CONを導入しても人為的なチェックの必要性がなくならず、業務効率化につながらないという声を多く聞くようになりました」と神藏氏はいう。

その問題を解決するために開発し、2019年にリリースしたのがAI-CON Pro。自社の契約書やノウハウをセットすることで、自社基準の契約書レビューができるようにしたものだ。

AI-CON Proが生まれたことにより、明確な自社基準を持った法務リテラシーの高い企業にはAI-CON Proを、自社基準がなくGVA TECHの基準で効率よくリスクヘッジをしたい企業にはAI-CONを、というように、顧客セグメントによって提案するプロダクトを分け、異なるニーズの充足を実現できるようになった。

AI-CON Pro製品概要と使い方

AI-CON Proは2019年11月のβ版リリースから50~60社に導入されており、そのうち7割が上場企業だ。

AI-CON Proは、多くの契約書の編集に用いられるMicrosoft Word上で動作する。Wordのアドインという機能を用いてAI-CON Proをインストールし、自社の契約書ひな形をアップロードして使う。ちなみに、GVA TECHが用意した24類型の契約書ひな型もプリインストールされているので、自社にノウハウがないレアな契約書が来た時もレビュー可能だ。

では、AI-CON Proの使い方を解説していこう。

これは、相手側の契約書をWordで開いた状態である。この右側にAI-CON Proに取り込み済みの自社契約書(自社プレイブック)を呼び出し、二つの間の差分を見にいくことでレビューを行っていく。

AI-CON Proでは、それぞれの契約書の条文ごとの内容類似度を解析することで、条文どうしをマッチングさせていく。例えば相手側の契約書の「第一条(目的)」の内容は、自社の契約書の「第二条(個別契約等)」の内容に該当する、といったように、タイトルが違っても内容ベースで突き合わせていってくれるのだ。

このように、相手側の契約書で修正を検討したい箇所を選択すると、それに該当する自社の契約書の条が自動的に右側に表示されるという機能もある。

さらに、条文ごとに「解説」というフリーテキストエリアがあり、自社の確認ポイントやルールを気付いた都度入力しておくことで、ナレッジが蓄積でき、共有が容易になる。

神藏氏は、こうした機能を用意した理由について「多くの法務担当者と商談をする中で、業務のほとんどが属人化していることがわかったんです」と話す。「自社の契約書周りのノウハウを一人のエース社員だけが持っていて、他のメンバーは何も知らない、ということが往々にしてあるんですね。そうしたノウハウをAI-CON Proに集約、蓄積することで『会社の資産』にしていきましょうよ、と提案しています」。そうすれば、担当者が異動や退職した場合や、新しいメンバーがジョインした場合も、自社ルールをスピーディに共有できる環境を作ることができる。

そのほかにも、「自社の契約書にはあるが、相手の契約書にはない」「相手の契約書にはあるが、自社の契約書にはない」項目を見つけてアラートをあげる機能、相手方の契約書にある条文を参考資料としてストックできる「条文ストック」、ストックした条文やセットしておいた契約書の条文を検索できる「条文検索」といった機能もある。

SaaSプロダクトでは難しかった個別のカスタマイズを実現し、日ごろ法務担当者が行っている業務を「今までのフローを変えずに、今までよりずっと効率を良く」できるのが、AI-CON Proの大きな強みと言える。

他社製品との違い

AI-CON Proは、他者のリーガルテック製品とどのように違うのだろうか。類似サービスとして、株式会社LegalForceが提供する「LegalForce」が挙げられるが「自社カスタマイズの自由度に関してはAI-CON Proが強いと思う」という。

また、ビジネスの相手から預かった契約書は機密情報なので、クラウドにアップしたりAI学習に流用したりするのは禁止されている企業も多い。こうしたリーガルテックサービスを利用するとしても重要な部分を手作業でマスキングするなど下処理に手間がかかる。

その点、AI-CON Proはローカルで動作するため、そうした問題がない。「なので、セキュリティにシビアな通信会社や金融会社などにも安心して使っていただいています」ということだ。

契約書レビューサービスの選び方

こうした契約書レビューサービスを、法務担当者はどういった基準で選べばいいのだろうか。神藏氏は「目的を明確にすることが大切」だという。

多くの企業が「仕事を効率化したい」という漠然とした目的で問合せしてくるが、よく話を聞くと「法務担当者が1名しかおらず、レビューにヌケモレがないか不安だ」「エース社員のスキルを横展開して平準化していきたい」「型が決まった契約書は営業部で完結できるようにしたい」など実際に達成すべきミッションはさまざまだ。

解決したい問題を掘り下げ、真の目的をユーザー自身が把握し、それが実現できるサービスを選択することが重要である。

AI-CON Proユーザーからの声

「ユーザーの皆さんからは『自社の基準で契約書のレビューができるサービス、待ってました!』との声をたくさんいただいています」と神藏氏。

「大手企業には、ルールとして決まっていることだけでなく、成功・失敗含めて先輩たちが積み上げてきた経験という貴重なノウハウがたくさんあります。そして、契約書をレビューする際にはそれらを踏まえることが必須。そのため、自社に合わせてカスタマイズできる点、自分たちのナレッジを蓄積していきやすい点、またそれを検索しやすい点は、大変重宝されているのだと思います」。

また、法務担当者にとって使いやすいUIも好評だという。法務部門には、仕事柄Wordは使いこなしているが、それ以外のシステムには馴染みがない人が多い。AI-CON ProはWord上で、しかもむやみに機能を盛り込まず必要十分な機能をシンプルに動かせる点が喜ばれているそうだ。

そして、リモートワークやフリーアドレス制の普及で、ノートPC1台で作業する人も増えている中、Wordの1画面で作業が完結できる点も重宝されているらしい。

今後の展開

AI-CON Proは、直近で2つの新しい展開を予定している。1つ目は営業部へのアカウント配布。6月を目途に、編集権限のない「閲覧用」アカウントを設けて営業部向けに展開していく予定だそうだ。NDAなど日常的に扱う型の決まった契約書は営業部内でレビューを行える体制にすることで、よりビジネスのスピード感を上げていくこと、そして法務部はより専門性の高い業務に特化できる環境を作ることが狙いだ。

2つ目は、英文の展開。AI-CON Proを必要とする大手企業にはグローバル展開しているところも多く、英文の契約書を扱う機会は避けられない。現在英文に対応できるシステムを開発中で、夏頃を目途にリリースできる予定だそうだ。

最後に神藏氏は語った。「こうして営業している中、法務部門の方たちに『AI-CON Proで業務が効率化されたら、空いた時間をどうしたいですか』と聞くと、早く帰りたい、なんてことを言う人はまずいません。『自社のひな形をブラッシュアップしたい』『会社の新事業に法務として企画段階から関わりたい』『もっとグローバルガバナンスを利かせていきたい』など、意欲的な発言ばかり。

リーガルテックを活用して効率化できるところはどんどんして、前向きなチャレンジが思いきりできる”強い法務部”をつくるお手伝いをする、それが我々のミッションだと思っています」。

Digital Workstyle College 編集部
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