昨今の新型コロナウィルス感染拡大防止の観点、また、国が推進する「働き方改革」という2つの観点から、企業の定時株主総会にも「バーチャル開催」が導入されつつあります。
今回の記事では、自社で「バーチャル株主総会」を導入したいと考えている企業の担当者向けに、どのようなツールを取り入れたら適正な開催が実現するのか、その「ツール」に焦点を絞ってお伝えします。
複数の国内企業が提供する「バーチャル株主総会」支援サービスそれぞれの特徴について、サービス比較表も交えながらご紹介しますので、ぜひ今後の自社の「バーチャル株主総会」開催に向けて参考にしてみてください。
参考:バーチャル株主総会とは?そのメリットや、導入の留意点を解説
https://digitalworkstylecollege.jp/explanation/virtual-shareholders-meeting/
参考:「バーチャル株主総会」日本での開催事例まとめ
https://digitalworkstylecollege.jp/news/virtual-shareholder-meeting-example/
「バーチャル株主総会」には大きく分けて2タイプの開催方式があります。
1つは、開催時間中にリアルタイムでの「質問」や「議決権行使」をできない「ハイブリッド参加型バーチャル株主総会」。こちらは、株主は事前に書面や電磁的方式での「事前議決権行使」をしておき、当日はいわば「傍聴のみ」の参加という扱いになります。
もう1つは、開催時間中にリアルタイムでの「質問」や「議決権行使」までできる「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」。こちらはその名の通り、リモート参加の株主にも「出席」まで認められる、という開催方式です。
現時点で、日本国内で提供されている「バーチャル株主総会」開催支援サービスにはさまざまなタイプのものがあり、「中継動画配信」によって「参加型」までをサポートするもの、「出席型」までカバーできるものなど、サービスによって違いが見られます。
会社名 | 株式会社ケップル | インベストメントブリッジ | フューチャー株式会社 | 株式会社パイプドビッツ | ビーマップ | 株式会社bitFlyer Blockchain |
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サービス名 | 株主総会クラウド | ライブ配信サービス | バーチャル株主総会運営支援サービス | バーチャル株主総会ソリューション | 議決権行使システム | ブロックチェーン投票サービスbVote |
招集通知の送信 | ◯ | ◯ | ー | ー | ー | ー |
委任状の送信 | ◯ | ー | ー | ー | ー | ー |
委任状の回収 | ◯ | ー | ー | ー | ー | ー |
動画配信 | ー | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ー |
配信中のチャット(質問、コメント機能) | ー | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ー |
議決権行使 | ー | ー | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
開催履歴の管理 | ◯ | ー | ー | ー | ー | ー |
株式会社ケップルは、2020年6月1日から「株主総会クラウド」β版を非上場企業向けSaaS(Software as a Service)として提供を開始しました。β版である期間中には、全ての機能を無料で利用できます。
こちらのサービスの特徴は、定時株主総会の開催準備、開催管理まわりの煩わしい紙類の整理・管理をすべてペーパーレス化し、クラウド上で集約・完結させてくれること。
例えば、「招集通知の送信」「委任状の送信・回収(ここで、株主の議事に対する賛否をオンライン上で問うことができます)」「開催中の総会のリアルタイム進捗管理(回答状況や、各議案への賛否をリアルタイム更新)」「開催後の総会のペーパーレス管理」といったことが可能になります。
・招集通知の印刷や発送にかかるコストや手間をなんとかしたい
・委任状の回収に時間がかかるうえ、どの株主から回収したのか進捗管理が煩雑で毎回困る
・開催履歴の管理が大きな負担になっていて、業務効率化したい
・そもそも、開催履歴の管理そのものに手が回っていない
こういった課題を抱える会社、担当者におすすめのサービスです。
なお、このサービスは「中継(総会のライブ動画配信)機能を導入したい」とか「当日のリモート参加株主の、リアルタイム議決権行使機能を導入したい」といったこととは別の課題を解決するためのものです。
「中継機能」や「当日の質問・議決権行使機能」も導入するためには、後述する別サービスとの併用を検討していく必要もあるでしょう。
参考:招集通知、委任状回収、開催履歴の管理も全てオンラインで完結!非上場企業向け“株主総会“業務支援SaaS「株主総会クラウド」β版を6月1日(月)より提供開始|PR TIMES
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000026987.html
参考:株主総会クラウド
https://kabunushi-soukai.cloud/
株式会社インベストメントブリッジでは、企業が「ハイブリッド参加型バーチャル株主総会」を負担なく開催できるよう、「ライブ配信サービス」を提供し、開催のサポートを行っています。
このサービスを導入するメリットは、何と言っても当日の撮影機材手配から配信まで一切おまかせできる、という点です。
・ひとまず定時株主総会のライブ中継を導入して、「参加(傍聴)型」だけでも開催したいが、撮影機材のことやライブ配信のことはどこから手を付けていいのか一切わからない
・社内に誰も、撮影やライブ配信について知見を持つ人が居なくて困っている
・撮影や中継業務に割ける人手がない
といった課題を抱える企業におすすめのサービスです。
こちらのサービスは「参加(傍聴)型」の開催をサポートするためのものなので、リモート参加株主には当日の質問・議決権行使権はありません。リアル会場に足を運ぶことができない株主に対しては、別途あらかじめ「事前議決権行使」の案内をしておく必要があります。
しかし、この「ライブ配信サービス」に中継をお任せする中で、株主番号等の参加者データや、コメントの記録を後日、自社に共有してもらえます。そうして集めたコメントを後日自社Webサイトなどに公開し、回答を掲載することでリモート参加株主との対話を深めることも可能です。また、株主数に応じて同時視聴人数を調整することもできます。
同社では、新型コロナウイルスの影響により開催中止が相次いでいる「決算説明会」や「投資家向け説明会」のライブ配信サポートサービスも行っており、このコロナ禍にあっても企業が株主とのコミュニケーションを深めることができる数々のソリューションを提供しています。
参考:低コストで株主総会をオンライン開催!株主総会向けライブ配信サービスを新たに受付開始。|PR TIMES
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000044156.html
フューチャー株式会社では、2020年5月より「バーチャル株主総会運営支援サービス」を提供しています。
このサービスでは、リモート参加株主の質問・議決権行使が認められる「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」の開催が可能になります。
まず、動画中継には「Zoom」を使用。そして同社が開発を手掛けた「株主認証システム」を組み合わせることにより、リモート参加株主も「傍聴」だけでなく、「質問」「議決権行使」までリアルタイムでできます。
・「傍聴」だけでなく、「質問」「議決権行使」の仕組みまで導入したい
・「中継」のサポートも受けられて、「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」の実現をしたい
上記のような課題を抱える企業にフィットするサービスだといえそうです。
参考:Zoomビデオウェビナーを活用した「バーチャル株主総会運営支援サービス」の提供を開始|PR TIMES
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000391.000004374.html
株式会社パイプドビッツでは、2020年5月から「バーチャル株主総会ソリューション」を提供開始しました。
このサービスは、導入企業の意向に合わせて「参加型」「出席型」いずれの開催にも柔軟に対応可能であるところがポイントです。
株主総会当日、リモート参加株主はパイプドビッツが提供する議決権行使サイトにアクセス。事前交付されたIDとパスワードを入力して本人確認を行うことで、バーチャル出席を実現します。ログイン中は、株主総会のライブ中継を視聴しながら、議決権を行使したり、質問をしたりすることが可能。システムの提供だけでなく、撮影・中継のサポートもワンストップで受けることができます。
また、企業側(株主総会事務局側)にとっては、議決権行使結果の集計がリアルタイムに可能で、議事中の質問受付も画面で一元管理もできます。
さらには、リモート参加株主宛にデジタルギフトの配布で「お土産」も実現。リモート参加の株主に対しても公平性を保つことができます。
機材の手配、中継の段取り、配信、議決権行使、集計、お土産までとにかく手厚いサポートをワンストップで受けたい、と希望する企業におすすめのサービスです。
参考:来場しなくても株主総会にリアルタイムでバーチャル出席できる 「バーチャル株主総会ソリューション」を提供開始|PIPED BITS
https://www.pi-pe.co.jp/news/22646/
株式会社ビーマップは「議決権行使システム」の開発を手掛け、まずは2020年6月に自社の株主総会を「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」として成功させました。
その後、この「議決権行使システム」を上場企業に無償提供するとともに、映像制作・配信のサポートを受け付けると発表しました。
同社のシステムを導入することで、遠隔地から出席する株主による「質問」「議決権行使」が可能となり、さらには機材・撮影・中継関連のサポートまで含めて「出席型」での開催を支援してくれるというものです。
参考:第22期定時株主総会を「インターネット出席型」で実施しました 自社開発のバーチャル株主総会システムを活用|PR TIMES
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000047.000018483.html
株式会社 bitFlyer Blockchainは、2020年6月に世界初となる「なりすまし防止機能付き」のブロックチェーン投票による「ハイブリッド参加型バーチャル株主総会」を開催しました。
ここで使われた「ブロックチェーン投票システムbVote」は同社が自社開発を手掛けているものですが、2020年秋を目処に、他企業にも提供を開始する見込みとのことです。
経済産業省は、「バーチャル株主総会において、株主のなりすましによる議決権行使を回避しなければならない課題がある」という旨を問題提起しており「その解決にはブロックチェーン等も有効だ」と発表しています。
その課題に応えたサービスが、この「ブロックチェーン投票システムbVote」だといえます。
マイナンバーカード認証を活用したブロックチェーン ID サービス「bPassport」によって「投票者のなりすまし防止」を実現。さらに、「bPassport」上のブロックチェーン投票サービス「bVote」により「票や集計結果の改ざん防止」も実現。
「bPassport」と「bVote」を組み合わせることで遠隔地からのリモート投票における不正を防ぎ、「ハイブリッド出席型バーチャル株主総会」の課題を解決していく、というサービスです。
「なりすまし」のリスクを回避したいと考えている企業におすすめのサービスです。
参考:世界初!「なりすまし防止機能付き」のブロックチェーン投票によるバーチャル株主総会を開催|株式会社 bitFlyer Blockchain
https://blockchain.bitflyer.com/pdf/20200610-bVote-shareholders-meeting.pdf
日本国内では、議論が始まったばかりの「バーチャル株主総会」。その開催をサポートするサービスは、「株主総会事務局内のペーパーレス化」「撮影・配信サポート」「議決権行使システムの提供」など、まずは部分的なところから開発が始まったばかり、といった状況です。
自社の「バーチャル株主総会」開催に向けて「一番解決したい課題とは?」「一番回避したいリスクとは?」「一番業務効率化したい部分はどこか?」といった点を洗い出し、そこをピンポイントでサポートしてくれるパートナー選びを進めていってはいかがでしょうか。