富士通、マイクロソフト、TKCのテレワーク事情は?テレワークがうまくいく秘訣を探る

新型コロナウイルス感染拡大を受け、首相官邸から発表された「オフィスでの仕事は原則自宅で行うこと」「出勤者を7割は減らすこと」のメッセージ。しかし、東京商工会議所が4月8日に発表したデータによると、テレワークを実施している企業は26.0%、実施検討中は19.5%と、合わせても半分にも満たないのが現状だ。一方で、従業員規模が大きい企業ほど、テレワークの実施率が高いこともわかっている。

そこで今回のパートでは、IT大手企業を代表して、富士通株式会社エバンジェリストの中山氏、日本マイクロソフト株式会社 エバンジェリストの西脇氏、そして中小企業を支援する立場として、株式会社TKC 代表取締役社長 飯塚氏を迎え、それぞれのテレワーク事情や現在の取り組みについて伺った。
(本座談会は2020年4月13日に開催されたものです)

参考:テレワークの課題を解決していくことが、新しい常識を作るきっかけに
https://digitalworkstylecollege.jp/report/20200417telework02/

■登壇者
株式会社TKC 代表取締役社長 飯塚 真規 氏
富士通株式会社 理事 首席エバンジェリスト 中山 五輪男 氏
日本マイクロソフト株式会社 エバンジェリスト・業務執行役員 西脇 資哲 氏

■モデレーター
一般社団法人 日本デジタルトランスフォーメーション推進協会アドバイザー  森本 登志男
一般社団法人 日本デジタルトランスフォーメーション推進協会 代表理事 森戸 裕一

森本:今、日本の中小企業は、いきなりテレワークと言われてもどうしたらいいかわからないといった状態かと思います。そうした皆さま向けに、今日はいろいろとお話いただけましたら幸いです。では、まずはお一人ずつ、自己紹介や現在の考えなどをお聞かせください。

テレワーク率99%以上を達成するマイクロソフトの取り組み(西脇氏)

よろしくお願いいたします。私も今まさに自宅からリモートで参加しておりまして、こういうかたちでも座談会ができるんだと改めて実感しています。さて、さっそくですが、こちらの数字をご覧ください。

この数字は、マイクロソフトにおける「会社に来た社員の割合」です。今年3月の時点で16%の人しか出社しておらず、4月5日には4%になりました。この翌々日に非常事態宣言が出て、現在は出社率1%を切っています。自宅勤務がデフォルトで、出社するなら許可必要がいるという「今までとは逆のノーマル」ができあがっているわけです。

こちらは従来の仕事の進め方を表した図です。通勤、口頭でのコミュニケーション、印刷、会議、客先訪問などがこれまでの典型でした。

これがテレワーク化すると、通勤せず、なんなら着替えもせず、テキストチャットでコミュニケーションを取り、必要ならテレビ会議を行うといったかたちに変えていく必要があります。

マイクロソフトは、もともとテレワークを特殊な働き方として定義してはいませんでした。一般的に自宅勤務や時短勤務は、育児や介護をする人など一部の人だけのものという認識がありますが、そうではなく、前提として全員がリモート可能、会社に行く必要がある人だけが行く、という仕組みです。

そして今、テレワーク化にあたって必要になるインターネットを使ったコミュニケーション方法を、私たちも推し進めています。

テレワークにおけるコミュニケーションで大事なのは、会話や資料の出来栄えよりも、それに対する「反応」です。「すばらしい!」とか「いいね!」というような反応を介して感情を共有することで、離れていても一体感を醸成できます

反応といえば、ソーシャルネットがそうですよね。「いいね」や「シェア」が嬉しい文化です。仕事も同じですね。テレワークにおいても、反応の効果を活用してチームワークを強めていくと良いと思います。

あとは、必ずしもインターネットツールだけに頼るのではなく、こんなスケッチブックや〇×のスティックなどのアナログツールも使っていくと、もっとコミュニケーションがカジュアルになっていくと思います。

アフターコロナに向けて取り組むべきこと(中山氏)

私は「アフターコロナに向けて今やるべきこと、これからやるべきこと」のテーマでお話します。

私はこれまで、3社ほど外資系コンピューターメーカー、16年ほどソフトバンクにおり、現在5社目の富士通で、エバンジェリストとして全国各地で200~300回くらい講演をしています。

さて、富士通のテレワーク状況をお話します。私自身は、3月下旬からほとんど会社に行っていません。他の社員もほとんど行っていないようで、在宅勤務化は徹底できていると思います。

昨年の夏に、東京では「テレワーク・ウイーク」が実施されていましたよね。その時に富士通も行いましたし、以前からテレワークができる環境は整えてきましたので、今になって困っていることはありません。ただ、社内ネットワークへのアクセスが増えて負荷がかかっている点は、テレワーク・ウイークの時とは違うなと感じています。

さて、テレワークにおいては、社員同士のコミュニケーション維持がとても大事だと思います。

そこで私からのアドバイスは、普段から使い慣れているSNSなどを使って、グループ通話やグループビデオ会議を、とにかくまずはやってみてほしいということです。

年配の役職者がなかなかビデオ会議に参加してくれない、という話を聞いたりもしますが、ぜひ積極的に始めていただきたいです。「LINEは使っているけれど、グループ通話のやり方がわからない」という人には、アプリオという会社のサイトがオススメです。

このように、LINEでグループ通話をする方法がわかりやすく解説されていますので、見てみてください。

また、ビデオ会議をしていて起こりがちなのが、音声トラブル。特によくあるハウリングを避けるためには、ヘッドセットを用意するのがベストです。

それから、今の世の中にはビデオ会議ツールがたくさんありますので、いくつも試してみることが大事だと思います。ぜひ自分たち合ったものを見つけてみてください。

また、インターネット上にたくさんある、さまざまなWeb会議比較表を参考にするのも良いと思います。

中でもわかりやすいのが、ITcroud社が運営するサービスITreview内の、無料で利用できるWeb会議製品一覧。この赤丸のところがタブになっていて、製品一覧や製品ランキングを見られるようになっています。こういったものを活用して、自分たちの規模に合ったものを見つけてください。

で、先ほども話が出ましたが「ビデオ会議できない上司問題」。若い人はリモートツールを使い慣れているけれど、上司は使ったことがないという状況はよくあると思いますが、いつまでも上司に合わせていては何も先に進まず「皆が平等に不幸」になるだけです。ITリテラシーの低い上司を置き去りにするのではなく、今回を機に強制的に使い方を学んでもらい、部下がしっかりサポートして、快適なテレワーク環境を皆で整えていくことが大事です。

それから、会社としては、社員の自宅ネットワーク環境整備に対して補助金を出すことを検討してもいいのではなでしょうか。以前私が居たソフトバンクでも、そうした補助金が出されていた記憶があります。

そして、意外と厄介なのが「会社PC持ち出し禁止ルール」。情報セキュリティの観点は大切ではありますが、今は国が緊急事態宣言を出しているほどの状況であり、それがいつまで続くかわかりませんからね。例えば期限を決めて持ち出しを許可するなど、柔軟に対応してもいいのではないかと思います。

正社員だけでなく契約社員も同様です。ほとんどの会社で契約社員のPC持ち出しは禁止されているそうですが、これも緊急事態宣言ということで、ルールの緩和が検討されてもいいのではないかと思います。私からは以上です。

森本:ありがとうございました。私も遠方の人たちとのやり取りが多いですが、「LINEできますか?ハングアウトならできますか?」というふうに聞いてみると、リテラシーが高くない人でもだいたい何か一つくらいは使えるんですよね。

中山:そう!「あなたは何ができますか?」と聞くことが大事なんですよ!

森本:その上で、できない人がいれば、できる人がサポートすればいいわけで。

中山:そうしているうちに、皆のリテラシーも上がっていきますよね。

森本:それから、テレワークを行うにあたって、既存のルールが足かせになることがありますが、そのルールが「そもそも何のためにあるのか」を掘り下げることが大切だと思いました。突き詰めると、本当に禁止すべきことは実は少ないとわかり、すぐに解決できるかもしれませんよね。

TKCが取り組む中小企業支援とテレワーク(飯塚氏)

当社は53期を迎え、現在54年目となる会社です。全国に72の事業所があるのですが、拠点によって規模が違いまして、一番大きいのは1200名程度いる栃木本社、東京本社には400名程、その他の事業所は3~40名程度と小さな規模です。ちなみにウェブ会議については、事業所間のコミュニケーションのため、昨今の情勢となる以前から導入はしていました。

全体の職種の割合でいうと、開発エンジニアが4割くらい、あとの6割が営業や管理部門で、会計事務所担当・自治体担当と大きく2つの事業部にわかれます。

こちらは、当社がサポートしているお客様について数字でまとめたものです。全国9300の会計事務所にサービスを提供しており、全国の5社に1社の法人税申告を支援しています。

日本には280万の中小企業があると言われていますが、その中の27万社に会計・給与・販売管理といったサービスを提供しています。

地方公共団体においては、住民基本台帳や地方税などの基幹業務のシステムを提供、また750団体の電子申告を支援しています。

それから、当社がかねて注力してきた税務システムを上場企業へ販売していまして、現在30%の上場企業が当社のシステムを利用しています。

また、98%の法科大学に当社のデータベースを活用していただいています。

さて、新型コロナウイルス感染拡大に伴い当社が行っている対応について。まず、まとめサイト「緊急資金繰り対策コーナー」を作りました。国・政府、都道府県、市町村、金融機関といったカテゴリーごとに、日本全国の支援制度が一覧化されて、資金繰りに悩まれている中小企業を支援していこうというものです。

※新型コロナウイルス緊急資金繰り対策コーナー~政府等の企業向け支援策一覧~|株式会社TKC
https://www.tkc.jp/lp/corona

特に評価いただいているのは、地元の金融機関の情報まで掲載している点。このようにして、当社のお客様である会計事務所と共に、中小企業の資金繰りを支援していきたいという考えです。

あわせて、緊急支援が必要な企業を自動判定する機能の提供を始めます。当社は年間57万社くらいの財務処理を受託していますが、その財務データをビッグデータ的に解析したものをベースに、どの制度が適用できるかを星取表で見せてあげられるサービス。こちらを明後日(2020年5月○日)から提供予定です。

また、テレワークを始める会計事務所や中小企業に、必要なものを利益無しの最安値で提供するという取り組みも行っています。しかし、その手配が間に合わないケースもありますので、場合によっては当社が使用しているCisco WebEX、オンデマンド研修配信の基盤を顧客に公開して、ここで必要な情報を流してください、という対応もします。

地方公共団体に関しては、予算制で動いているため急にウェブ会議システムが必要になってもすぐには調達できませんので、当社でのシステムサポートを前提に、システムや物品を貸与するということも行っています。

実は当社は、これまでテレワークに積極的なほうではありませんでした。昨今の情勢によって、2月に時差出勤を開始し、その後、緊急事態宣言等が発令されたエリアを中心に在宅勤務を行っている状況です。特定警戒都道府県にある当社拠点のテレワーク率は64%なのですが、政府は8割を推奨していますので、引き上げていかなくてはなりませんね。

課題点については、データセンター・コールセンター・プリントセンターの運営、紙ベースの書類の授受、「顧客は訪問するもの」という価値観、ノウハウ不足など。また、今年入社した新卒社員の半数には自宅待機してもらっているのですが、教育や帰属意識の醸成といったところに大きな課題を感じています。視聴されている方の中にも同様の課題を持っている方がいらっしゃると思うので、この場を通して一緒に解決策を見出していきたいです。

森本:今回急きょテレワークを始めることになったとのことですが、それ以前のリモートツール導入についてはどのような状況でしたか?

先ほどお話しましたように、当社では以前から拠点間のやり取りにビデオ会議システムを利用していて、インフラ自体は2006年から整ってはいました。しかし、当時はどちらかというと部門長や役員が使うケースが多くて、それ以外の社員には自主性に任せていたのが正直なところです。ただ、例えば沖縄県の営業が離島のお客様との商談をウェブで行うといった活用は、以前からありました。これからは皆でもっと経験を積み重ねて、リモートコミュニケーションがどんどんスタンダードになっていけばいいなと思っています。

後編に続く)

Digital Workstyle College 編集部
この記事を書いた人