「目指すはノンストップ行政の実現」福岡市におけるデジタル化の事例

福岡市ではコロナ前からデジタル化・オンライン化に取り組んできました。今回は、福岡市のスマート行政を推進している、福岡市総務企画局ICT戦略室ICT推進課長・小玉豪人氏の講演レポートをお届けします。

話し手:小玉豪人氏
福岡市総務企画局ICT戦略室ICT推進課長

福岡市ではコロナ前からスマート行政を推進

福岡市は、人口も税収も伸び続けている都市。しかし、2035年をピークに人口が減少し、2040年には高齢化率が30%を超えるとされています。そのような将来にも対応すべく、福岡市ではAIやRPAなどのデジタル技術を活用した「スマート行政」を推進してきました。

福岡市が目指す「スマート行政」のゴールは、デジタル化できることはデジタル化し、市役所の人的資源を「人のぬくもり」が必要となる福祉などの分野に配置できるようにすること。そして、これまで行政が触れてこなかった画面のデザインや操作性などのユーザーインターフェースを向上させることで、誰もが利用できる「やさしいデジタル化」をすること。対面でのやり取りが減る分、デジタルの画面が市民の方との重要な接点になるため、市民の方にとって分かりやすく、使いやすいものでなければならないと小玉氏は言います。

「ノンストップ行政」の実現に向けた福岡市の取り組みは、新型コロナウイルスの感染拡大前から行われていますが、外出自粛が促される中で、デジタル化・オンライン化の重要性がより高まり、こうした取り組みも加速化してきました。ここでは、福岡市におけるデジタル化の取り組み事例をいくつかご紹介します。

ハンコ要否を見直し、3,800種類もの書類をハンコレスに

きっかけは、「認印にどれだけの本人確認効果があるのか」という市長からの問題提起でした。それでも職員からは、「本当に印鑑なしで大丈夫なのか」「数年後に見ても公文書として間違いないと言えるのか」など懸念の声が多く、様々な障壁があったそうです。

まずはどのような手続きがあるかを調査し、次に各部署からの問い合わせや他の事例をもとに押印義務要否の判断基準を策定します。そして、上層部で構成される「スマート行政推進会議」の中での取組事業の一つとし、押印義務の見直しに取り組むことへの意思統一を図りました。

福岡市では、2019年1月頃からハンコレスの推進に取り組んできましたが、コロナの影響で押印や手続きのオンライン化に注目が集まったこともあり、取り組み達成期限を予定より半年前倒しで進めることとなりました。2020年9月末に書類の見直しが完了し、押印義務が不要と判断された書類は、それまでの700種類から、3800種類に改められました。10月以降、段階的に書類の様式を切り替え、ハンコレス化を行っています。

引っ越し手続きを事前入力、オンラインで来庁予約

行政手続きの件数全体の74%をオンラインで利用可能にしている福岡市。たとえば、引越しに伴う手続きには、オンライン予約サービスを利用できます。窓口で転入届などの提出が必要ですが、住所や氏名など同様の内容を何度も記入しなければなりません。手続き自体は複雑なものではありませんが、特に3~4月は転入・転出手続きを行う人で窓口が混雑し、2時間ほど待たなければならないこともあるほどです。

そこで福岡市では、PCやスマートフォンから必要な情報を事前入力できるようにし、さらに来庁予約を取れるようにしたのです。これにより、区役所に行く必要はあるものの、区役所では本人確認をするのみで済むようになりました。区役所での待ち時間や滞在時間が短縮されるため、コロナ禍においても利用しやすい取り組みとなりました。

LINE上で粗大ごみの受付と支払いまで完結

福岡市では全国で初めて、LINEで粗大ごみの受付を行い、LINE Payで粗大ごみ処理手数料の支払いができる仕組みを取り入れました。コンビニで処理券を購入しなくても、必要事項を任意の紙に記入し、粗大ごみに貼り付けるだけでよいのです。家にいながら手続きが完了するため、コロナ禍でなるべく外出をしたくないという市民にも好評だったそうです。

このほか、福岡市LINE公式アカウントでは、子育て、ゴミ出し、引っ越しなどの生活情報、防災情報の通知などを行っているそうです。「福岡市LINE公式アカウントのお友だち数は、福岡市の人口より多い170万人。今後も新しい取り組みを打ち出していきたいと思っています」と、小玉氏は話します。

RPAの導入により年間約3,600時間の削減に成功

福岡市では、業務の効率性・生産性を高めることと職員の業務負担を軽減することを目的に、RPAを導入しています。令和元年度は、調査回答の集計業務やシステム入力業務などの定型業務17業務に導入しました。

RPAを導入した部署の職員によると、RPAを導入したことで、窓口業務や受電業務などに専念できることで、市民サービスの向上につながったそうです。また、職員の判断を必要とするような業務に専念できる時間が確保できるため、業務の質も向上したといいます。そして、これまで担当職員のみで行っていた業務をRPA化することで業務の見える化が図られ、他の職員でも事務が行いやすくなったとのこと。

RPAの導入により、業務時間は年間約3,600時間削減できることが見込まれています。福岡市では令和2年度も、RPAの導入のさらなる拡充を進めています。

DXに対応する新たな取り組み

福岡市では、DXに係る新たな取り組みとして、2020年11月20日に「DX戦略課」を設置しました。更に、DX戦略課のメンバーとして、市のDXに係るプロジェクトに参画いただく民間人材を「DXデザイナー」として公募しました(公募期間:令和2年11月16日~12月4日)。「オンライン申請のユーザーインターフェースを高齢者の方にも分かりやすくなるよう、民間のDXデザイナーと連携して改善したいと思います。今後も、市のDXの取り組みを強力に推進していき、ワンストップからノンストップへの流れを一気に加速化したいと考えています。」と小玉氏は話してくれました。

Digital Workstyle College 編集部
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